【プライムウィル】半期ごとの目標設定・評価と社長塾で社員養成
公開日:2023.08.18
最終更新日:2023.08.18
※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
1962年生まれ。大阪府出身。新卒でダスキンに入社し、ミスタードーナツの商品開発部門に配属。「ミスター飲茶」「ポン・デ・リング」などの数々のヒット商品を開発してきた。在職中の2003年にプライムウィル設立。ダスキン退任を機に、同社の代表取締役に就任。
加盟ブランド
ミスタードーナツ/珈琲所コメダ珈琲店/かつや/いきなり!ステーキ/ペッパーランチ/ラーメン魁力屋/串屋物語
愛知県から広島県にかけて27店舗を運営するプライムウィルは、「情熱」をキーワードに教育制度の強化を図っている。社員全員が参加する会議や研修、一定社歴を持つ社員を対象にした社長塾など、多様な体制が特徴だ。
信頼できる本部とパートナーシップを築く
―加藤社長は起業前、ダスキンの本部社員として主にミスタードーナツの商品開発をされてきました。FC本部とフランチャイジーの両方の経験をされている珍しいケースですが、改めて本部と加盟店それぞれの役割についてはどのように考えていますか。
加藤 本部はブランドをいかにアップデートさせるか。ブランド力の形成や商品の開発、適正購買が主たる使命です。それに対して、フランチャイジーはブランドの魅力をいかに顧客に伝えるかが役割です。運営力が第一で、いかに設計通りの商品を適切なスピード感で提供して満足してもらえるかも、大きなテーマになります。またブランディングする本部のために、いかにフィードバックしていくかも求められます。時折、本部から提供されるものに対してクレーマーのような物言いをし、それがフランチャイジーの存在意義だと勘違いしている人を見かけます。問題点や課題を分かりやすく本部に現場を伝えるのも、フランチャイジーの役割です。
―本部とフランチャイジーは対等ということでしょうか。
加藤 現実とマインドは別です。現実は契約書を交わしているので、本部が有利といえるかもしれません。対等なのか、どちらが有利かを論争しても意味はないでしょう。それよりも目的を1つにして、社会から評価されるのが両者の目指すところです。ですから、パートナーシップが必要となります。
しかし、複数のブランドをやっていると、そこからかけ離れた本部もあります。「やらせてあげてる」「決めた通りにやればいい」「想定通りにいかなかったら加盟店の運営が悪い」。そのような本部が出てきたとしたら、店を増やす気が失せます。加盟店の提案を汲み取りながら、一緒にやっていこうという本部と共に運営していきたいものです。
―御社の雇用形態について教えてください。
加藤 社員は、正社員と限定社員(地域に特化した社員)、正社員Bの3種類があります。当社はフード形態を運営しているので、社員は土日勤務があります。業態により営業時間は7〜23時で、準備や後片付けを含めると、入店は朝6時、閉店は深夜0時。これを2交代、3交代で行います。
しかし社会が多様化していく中で、当社の就労形式には合わないですが、人材として有能な人を戦力にしなければなりません。そこで、週44日で月間130時間以上の労働ができる人を正社員扱いにする制度を設けました。これが正社員Bで、6月1日よりスタートしました。
現在は正社員が40名(32名が総合職、8名が限定社員)で、正社員Bは6名、パート・アルバイトは600名となっています。
―直近ではポストコロナの兆候として、人材採用が困難になってきています。御社ではいかがでしょうか。
加藤 当社では、基本的に1店舗に社員は1〜3名(正社員Bも含む)のイメージです。人数にばらつきがあるのは、ブランドごとの営業時間の問題です。コメダ珈琲店やミスタードーナツといったブランドは営業時間が長く、6時から午前0時までです。これだと社員2名ではコンプライアンスを維持できず、最低3名は必要となります。
実は昨年までは、正社員は間接コストがかかるので、アルバイトでまかないたいと考えていました。しかしここにきてアルバイト・パートが確保できず、長期間働いてくれる人も少なくなり、募集費用もかさんできています。
そこで改めて社員を増やして間接コストをかけるか、アルバイトを増やすための募集費にコストをかけるかを社内で調査したところ、社員を増やした方が得だとわかりました。そして今は社員比率を上げる取り組みをしているのですが、それが先ほど申し上げた正社員Bです。在籍しているパート・アルバイトさんを正社員Bとして採用していきます。これまで時間給が少し高いアルバイトといった待遇で、中途半端に責任を負ってもらってきました。これからは、そのような人たちの立場を明確にします。副店長や店長の役割を担い、納得のいく報酬が得られるように変えていきます。
自分の将来を見据える社長塾を開講
―御社では以前より人材の教育にも注力していると伺いました。
加藤 これまでは、採用後に住んでいる地域やヒアリングした際のキャリア、人間性に基づいて、入社後速やかに配属してきました。しかし短期で離職する人もいるため、今は入社前の経験に関わらず、最低1か月は配属前の店舗研修を行います。その後は面談し、この事業の研修を続けるか、ほかの事業の研修を受けるかを聞きます。そのときの反応は半々。最大3か月間研修を受けられるのですが、場合によっては3か月で3業態の研修を受けてから配属となる人もいます。
―こうした取り組みとは別に、昨年1月からは社長塾というものを開催されています。
加藤 講義や教育ではなく、コーチングの場として、自身の人生の中での仕事への向き合い方を考えてもらっています。当社に残ることを前提とした上で、5年後10年後、どんな役割を担い、どんな収入になっていたいのか。目標を立て、その目標に向かって何をすべきかプランを考え、みんなの前でプレゼンします。
私自身、人材とは何かを考えた時、情熱があるかどうかにたどり着きました。情熱があれば、嫌なことがあっても実現するためにやり方を考えます。努力の仕方が見えてくるのです。しかしいくら知見や経験があっても、また外部から講師を招いてノウハウを伝えたり知識を与えたりしても、情熱のない人はそれを武器にできません。
―だいぶ手厚い教育体制を取られていますが、評価の仕方もやはり細分化されているのですか。
加藤 当社では、社員が半期ごとに自分の目標を立てます。この目標とは、仕事上での数値だけではなく、現場の改善やプライベートも含めた目標です。その上で社内の評価委員会でその内容を共有し、まずはその目標がその人にふさわしいかどうかを協議します。その後、本人と評価者で目標設定します。半期ごとに評価して、運営目標と店舗目標のそれぞれ上位2名を全社員会議の席上で表彰しています。
―人材育成には終わりはありません。今後はどのような点が課題になっていきそうですか。
加藤 いかに我が社で働くことに満足度をもってもらうか。これが究極の目標です。一定の満足があれば、人は生き生きと働くと思います。時代に応じて社員の満足度や要求は変わるので、その動向を捉えて、いち早く取り入れることも大切です。
もう1つは、当社は創業年数がまだ浅いので幹部が育っていません。ですから、いかに幹部のレベルを上げられるかが当面の目標です。今年6月末で27店舗の出店になりますが、この点が盤石になれば2028年の40店舗達成も見えてきます。あとは5年以内に社長ができる人材を発掘したいですね。
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