【連載 第4回】25兆円市場を支える立役者 法人フランチャイジーの可能性
公開日:2023.09.26
最終更新日:2023.09.26
※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。
第4回 法人フランチャイジーの拡大プロセス(その2)
個人の独立開業手法としてイメージが強いフランチャイズだが、こと日本においては、加盟者の属性の半数以上が法人で占められている。その数は推計1~1万3000社とされており、彼らの多くは特に地方に根を張る老舗企業ばかりだ。今回からスタートする同連載では、そんな日本のフランチャイズ業界を支える立役者たちの存在に迫っていく。
日本での法人加盟を拡大させたベンチャー・リンク
急増は90年代後半から
70年代から本格化した法人加盟ですが、それが拡大したのは90年代以降です。この頃から、中小企業の事業拡大や多角化にFCを利用しようという空気が広がります。現存する法人フランチャイジーがFCに加盟した時期を調べると、90年代中盤から2000年代中盤にかけての10年間がピークでした。
この時期は、ベンチャー・リンクという中小企業向けのコンサルタント会社が、法人加盟を前提としたFC事業を展開した時期と重なります。実際、同社の勧めで初めてFC事業に参入した中小企業も多く存在しています。その意味では、日本の法人フランチャイジーの歴史に大きな影響を与えた企業といえます。ただ、よく知られるように、同社はFC業界に大きな波紋も広げました。
そこで今回は、法人フランチャイジーの拡大に大きな影響を与えたこの企業を取り上げてみたいと思います。
法人加盟急増の背景
同社は、90年代にサンマルクや牛角、ガリバーやITTO個別指導学院といった法人加盟向けのFC本部を育てた企業です。有望なビジネスモデルを持つ中小企業に出資をし、独自のノウハウを投入して本部に育て上げる一方で、全国の中小企業にFC加盟による事業拡大の可能性を説き、加盟を促していきました。
同社の加盟開発の手法は、これまでに無かった新しいものでした。それが、「エリア・エントリー契約」です。これは、全国の市場を多数のエリアに分割し、エリアごとに出店可能店舗数を設定して、その数に応じた出店権利を中小企業に販売するものでした。販売に際しては、特定商圏を独占するために2〜10店分をまとめて購入することを勧めました。加盟法人には大きな投資となりますが、同社は全国の多数の金融機関と連携していたため、融資とセットで販売することができました。こうして同社は業績を急成長させ、2001年には一部上場を遂げます。
投機的な加盟の増大
米国では、加盟者側の提案で複数店舗の出店契約を先行的に行ったり、特定加盟者に商圏を独占させたりすることは珍しくありません。しかし日本では、本部は1店舗ずつ契約し、開店するまで支援して、契約金の計上も開店後にするのが基本です。ですから、FC経験のない法人に出店権を先行的にまとめ売りする手法は、投機的な加盟を拡大させる結果となりました。
実際、ベンチャー・リンクは出店権を大量に販売しすぎたため出店が追い付かなくなりました。2002年5月時点では3000店あまりが未出店状態になったのみならず、無理な出店による赤字店も増えていったとされます。
その結果、新規加盟者が急速に減少すると共に、出店権利料の返還請求が多くの加盟者から出され、資金繰りに行き詰まった同社は2012年3月に倒産に追い込まれました。
中小企業をFCで活性化しようとする方向は間違っていませんでしたが、そのやり方には多くの課題があり、結果的に加盟した多くの中小企業の経営を毀損しました。とはいえ、同社が法人加盟を拡大させ、多様な運営ノウハウを普及させたことも、歴史の事実でした。
Profile かわばた・もとお
1956年生まれ。大阪市立大学大学院修了、博士(経済学)。関西学院大学商学部教授。流通業の研究が専門であり、2021年に出版した『日本の法人フランチャイジー』(新評論)では、日本商業学会賞優秀賞および中小企業研究奨励賞を受賞。
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