【I. Fujita International】日本FCブランドのアメリカ進出は初期段階
公開日:2024.01.06
最終更新日:2024.01.06
※以下はビジネスチャンス2024年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
円安が後押しし、中小企業の進出も加速
I. Fujita International は、FCに特化したコンサルティング企業だ。36年に渡り日米FC事業の架け橋となり、日本のFCブランドをアメリカへ、アメリカのFCブランドを日本へ進出させるサポートをしてきた。長年、日本経済新聞社主催の「フランチャイズ・ショー」に新規米国FCブランドを誘致し、アメリカンパビリオンに出展してきたことに加え、直近ではアメリカ最大級のFC展示会「IFE」に日本ブランドを7つ誘致し、ジャパンパビリオンの初出展を果たした。日米のFC市場に詳しい藤田一郎社長に、海外進出のメリットや具体的な進出方法について聞いた。
学ぶべきは米国FC本部 加盟店に総合的な判断材料を
―FC企業のアメリカ進出が盛り上がってきたのはいつ頃でしょうか。
藤田 盛り上がってきたのはここ10年の話で、本当にまだ初期の段階です。日本からアメリカに進出を果たしている飲食ブランドに限定すれば、アメリカで定着しているのは直営の「くら寿司」や「丸亀製麵」、「一風堂」や「大戸屋」、FCの「吉野家」や「牛角」、「ゴーゴーカレー」や「北海道山頭家ラーメン」に限られています。逆に言えばそれだけチャンスがあるということです。
―アメリカ進出するメリットは。
藤田 まずは市場性の高さです。アメリカは日本の25倍の国土と2倍の人口を持ち、移民の数も多いため、日本で飽和状態にある業種も成功する可能性を秘めています。さらに今は円安が後押しし、アメリカ進出を希望する企業が急増しています。最近では、サンパーク(大阪府吹田市)が「マジカレー」を南カリフォルニアとトロントでFC同時出店を果たしたように、大手飲食チェーン以外にもFCで進出しようとする動きが加速しています。
―アメリカで成功しているFCブランドの特徴はありますか。
藤田 海外進出する際にモデルとすべきなのは、アメリカのFC本部です。アメリカのFCが世界で数千店舗も展開できているのは、自国でFCの仕組みをしっかりと構築しているからです。今、アメリカでFC加盟店として成功しているのはアジア系移民です。彼らは加盟店としてFCの仕組みを学び、後にオリジナルブランドを立ち上げて店舗数を伸ばしています。こうしたアジア系メガフランチャイジーがまさに、日本の新規ブランドを模索しているのです。
一方、日本の進出企業はアメリカの加盟店をどのように指導してサポートするかも分からないまま、最初からFC本部を立ち上げようとしています。彼らはよく「我々のラーメンは美味しい」「日本のお寿司は本物だ」とアピールしますが、商品の良さだけでFCはうまく行きません。ブランドはもちろん、アメリカで収益性のあるビジネスモデル、加盟店のサポート内容、SNSが集客の要となる中でどんなアプリを持っているのか。このように、加盟店が総合的に判断できる材料を提供する必要があります。
―商品によってはアメリカナイズする必要がありそうですね。
藤田 アメリカ市場が何を求めているのか正確に理解し、アメリカ人が好むようなメニュー設定やブランディングが必要です。たとえば、アメリカで成功しているラーメンチェーンは味付けを現地好みにアレンジしているほか、サイドメニューにアメリカ人が好むたこ焼きや肉まんを置いています。また、日本でラーメン屋といえば滞在時間が15分ほどのスピード業態ですが、アメリカではレストランとして認識されています。そのため前菜やデザートの用意があり、バーカウンターもあります。デートに使える雰囲気を持ったチェーンとして伸びているのです。客単価は3500円程度になるので、売上も上がります。日本のラーメン店の年商が1億円だとすると、アメリカで成功しているラーメン店は3ミリオンドル(4億5000万円)にも上ります。
進出方法は大きく3つ ライセンスがポピュラー
―アメリカ進出の主な方法を教えてください。
藤田 自社で本格的なFC展開をするには、現地法人とFC本部で別会社を立ち上げる必要があります。たとえば、株式会社Aで直営を展開していた場合、FC展開する際には株式会社BというFC本部の会社を立ち上げなければなりません。そして、子会社である株式会社BがFDD(フランチャイズ情報開示書)を準備します。
そのうえで、進出方法は3つあります。王道なのは、自らの資金でアメリカの現地法人を立ち上げ、直営店をオープンします。店舗ほどで成功モデルを検証し、実績を踏まえてFC展開をスタートする方法です。しかし、これを実践できるのは自社で資金力を持つ、限られた飲食グループだけです。
2つ目は「全額は出せないが一部は出せる」といった企業向けの方法です。アメリカでパートナーを探し、合弁会社を作ります。互いに出し合った資金をベースに共同で直営店を開き、直営がうまくいった後にFC本部を立ち上げます。合弁でも良いですし、パートナーに委ねるケースもあります。ただし、この方法でも多額の資金が必要となることに変わりありません。
3つ目は、ライセンスという手段です。今一番多い方法で、会社の持つ商標やビジネスモデル、レシピやマニュアルなどをパッケージにし、現地パートナーに販売します。アメリカは広大ですので、州や市などエリア単位でライセンスを与えるのが一般的です。店舗を立ち上げる資金はすべて現地パートナーが負担するので、日本企業に資金のリスクはありません。ただし、継続的なサポートは不可欠です。そうなると、店舗のために日米を行き来するのは割に合いませんから、エリアライセンスあたり最低で3店舗、欲を言えば10店舗は展開したいところです。ご参考までに、1店舗あたりの加盟金の相場は3.5〜5万ドル(520万〜750万円)となりますが、エリアライセンスの場合は複数店舗の契約になるため、店舗目から割引が適用されるケースが多いです。
―今後、アメリカで成功する可能性を秘めた業種はありますか。
藤田 日本からアメリカに進出してFC化するとなると、飲食がメインになるでしょう。ラーメンや焼肉、うどんやそば、天ぷらや天丼、カレーはアメリカ人に受け入れられやすい業種です。また、世界共通で必要とされている子ども向けのプログラミング教室も可能性があります。そのほか、日本独自の文化を持っていくのも良いでしょう。アメリカでは武道が盛んなため空手のFCは非常にウケるでしょうし、アニメ制作を教える教室を展開すれば高確率で成功すると予想しています。
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