【シャトレーゼ】コロナ禍で184%伸長した絶好調の菓子チェーン(前編)
公開日:2024.04.27
最終更新日:2024.04.27
※以下はビジネスチャンス2024年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
海外8カ国に進出し、国内外店舗数1000店舗を突破
国内外1000店舗を突破し、24年3月期は単体売上で1300億円(見込み)を記録するシャトレーゼ。素材調達から製造、流通、販売を一貫して手掛ける同社は菓子チェーンであり、菓子メーカーでもある。ユニークで高品質なスイーツを低価格で提供していることから、味や価格にシビアな30〜40代女性の支持も獲得。1店舗あたりの売上は5年前の約1億円から2億円に倍増した。同社の古屋勇治社長に、これから積極拡大を図る海外事業と国内の成長戦略について聞いた。
Profile ふるや・ゆうじ
1964年10月18日生まれ、山梨県甲州市出身。1985年4月株式会社シャトーゼ入社。生産、営業、調達部門を経て役員に就任。2018年4月代表取締役社長に就任。現在に至る。
郊外ロードサイドでフリースタンディング型店舗をメインに展開するシャトレーゼは、コロナ下でも営業継続できたことで近隣住民の支持を集めた。菓子市場がコロナでダメージを受ける一方で、同社の2022年の売上高は2019年比184%に達している。コロナ需要を受け絶好調の同社だが、他方で工場や物流などの供給体制はひっ迫状態にあった。そこで同社は、盤石な供給体制を築くべく、工場の新設やM&Aに乗り出している。
菓子マーケットは縮小するもシャトレーゼは伸長
--シャトレーゼでは洋菓子や和菓子に加え、アイスクリームやベーカリーを含むデザート全般を扱っています。コロナ禍では菓子市場も例に漏れずダメージを受けましたが、御社の2022年の売上高は2019年比184%と好調です。
古屋 我々の属する菓子市場は約2兆2800億円の規模と言われていましたが、コロナ初年度の2020年には2兆1500億円となり、6%近く落としました。これは緊急事態宣言の発出で、空港や駅、デパートが閉まる中、菓子ニーズの主流である「お土産」が激減したことが1つの原因だと考えています。
ポストコロナとなった現在も依然マーケットは戻っておらず、6%近く落とした状態で3〜4年推移しています。これは、人口減少や少子高齢化など日本のシュリンク状態に比例しており、今後も同じような状況が続くと考えられます。
しかし当社では、21年は前年比28%、22年も前年比27%の伸長を続けています。当店は郊外ロードサイドをメインに単独店で出店しているため、緊急事態宣言下で商業施設や駅内スイーツ店が臨時休業する中でも、自分たちの判断で営業を続けることができました。その結果、コロナ需要が生まれ、認知度も高まりました。
--国内店舗数の推移を見ると、22年は640店、23年は740店、24年は830店になる見込みです。ただ今後は、出店スピードを緩めるそうですね。
古屋 直近4年で売上が倍になった一方で、工場や物流はひっ迫状態にありました。そこで出店にブレーキをかけ、この1年は供給体制と配送体制を整える期間としています。
まず、商品供給体制を強化するために工場を増設します。これまで生産は全国各地にある工場で手掛けてきましたが、新たに山形県・鹿児島県・岡山県の3工場を取得し、今年の夏から秋にかけて稼働させる予定です。この3工場は、お客様につくりたてのお菓子をなるべく早く提供できるよう、旗艦工場がある山梨から配送距離が長いエリアを選びました。
また、昨年夏は大変な猛暑によりアイスクリームの在庫が不足し、お客様にご迷惑をお掛けしました。そのため、今年は冬もアイスクリーム工場をフル稼働させ、在庫取りをしています。これには多大な倉庫料がかかりますが、お客様に迷惑を掛けるくらいなら倉庫料をとります。そして来年夏には、九州にアイスクリーム工場を新設する予定です。
先ほどの3工場の稼働もあって、今年5月以降は徐々に供給体制が整ってきますから、今後は少しずつ増店する予定です。またさらに盤石な供給体制を築くため、東北に新規工場を作ることも検討しています。
――現時点で12工場、今年中に山形県・鹿児島県・岡山県の3工場、来年には九州のアイスクリーム工場が稼働予定。さらに、新規で東北工場も検討されている状況ですね。各工場はケーキやアイスクリームなど、1つの分野に特化した専門工場なのでしょうか。
古屋 基本的に各工場でそれぞれ生菓子を生産し、各地域の店舗へ供給しています。我々は、過去より生ものを得意としてきました。生ものはすぐ傷んでしまいますから、山梨から全国へ届けるのではなく、各地域で作って店舗に届けています。この体制は物流の24年問題を見据えた上でのリスク分散にもなります。ただし、アイスクリームとパンは特殊です。冷凍商品であるアイスクリームは山梨県の工場で一括製造し、各店舗に直送しています。パンは半製品工場で生地だけ作って各工場に送り、各工場で焼成した後、店舗に届く流れになっています。
酒造や和菓子店をM&A 高齢化見据え〝和〞も強化
――工場を増設する一方で、シャトレーゼグループは21年には「ナボナ」で知られる亀屋万年堂、22年に冷凍和洋菓子の製造販売を手掛ける菜花堂、今年は酒造の薄井商店を買収するなど、積極的に M&Aを行っています。
古屋 挙げるとすると、日本酒を扱う薄井商店のグループ入りによって、ギフト商品の幅が広がりました。これまでは、洋菓子とワインがセットになったワインギフトを販売してきましたが、今後は和菓子と日本酒を組み合わせた和ギフトも展開できます。また、お菓子にも日本酒や酒粕は使われているので、既存商品にも活かせると思っています。
――御社は洋菓子のイメージが強いですが、最近は和菓子の構成比率が高まっているように感じます。
古屋 スタートは「甘太郎」という今川焼き風の和菓子屋だったのですが、シュークリームやアイスクリームの急激な普及に伴って、和菓子の存在が薄れつつありました。また、〝シャトレーゼ〞という横文字の名前も和菓子店と結び付かなかったのでしょう。
和菓子の製造は非常に難しく、とにかく素材が命です。あんこの3分の1は水ですから、良いあんこを作るためには、良い小豆と良い水が不可欠です。当社は白州に工場を構えていますが、白州の水は雑味がなく硬度も低いため、素材の味がよく出ます。白州の水に出会ったことでより美味しい和菓子が作れるようになりましたが、これは高齢化が進む日本での和菓子需要を捉える上で、非常に強い武器となります。
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