【フトン巻きのジロー】開業コストを下げたオンライン接客店を開発
公開日:2024.05.02
最終更新日:2024.05.03
※以下はビジネスチャンス2024年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
アプリで優良顧客を育成する仕組みを展開
フトン巻きのジローは、2017年からコインランドリー「フトン巻きのジロー」を展開。「布団洗い」という新たなニーズを開拓し、現在138店舗まで全国に広げた。同社は昨年7月に東京プロマーケットに上場。新たな方向に舵を切り、今後はコインランドリーの節税効果の高さを活かし、地主に対してのアプローチを進めていくという。
ステータス制度を構築 アプリで利用の離脱を防ぐ
--御社はコインランドリー業界の中で「布団洗い」に着目し、大きな差別化を図って店舗数を拡大、昨年上場を果たしています。
森下 現在の世の中にコインランドリーは、2万店舗ほどあるといわれています。しかしコインランドリーの世帯利用率は10%ほどしかありません。これではお客さんの奪い合いになってしまいます。そこで誰もが持っている布団をターゲットにしたのです。
当社では以前、布団に関して約8000人の方に意識調査を実施しました。すると「布団が洗えるコインランドリーがあったら利用したいですか?」という問いに、9割以上の人が「利用したい」と答えたのです。これだけ潜在層のいるサービスはなかなかありません。
一回試しに洗って満足度が高ければ、家族がいる方は、4、5枚と布団を洗ってくれる。そのきっかけ作りに、アプリでプロモーションコードの発行をしています。
――アプリのプロモーションコードとは具体的にどういったものですか。
森下 私たちは「ジローアプリ」という独自のアプリの開発をしています。アプリ内で対象者に向けて、各種キャンペーンを実施。発行されたプロモーションコードを入力してもらえば、そのキャンペーン内容に応じたサービスを利用することができます。例えば、1週間以内にもう一度利用されたら200円分のポイントを付与などです。
また、JALやANAのステータス制度を参考に、年間の利用金額に応じて4段階のステータスを用意。ステータスごとにポイントの還元率が高まる仕組みがあり、ステータスを保つことを一種の目標に利用してくれる方もいます。そして、例えば3万円分のポイントを購入すると、3万6000ポイントが貯まるという仕組みもあります。これはマリオットのポイント購入の制度を参考にしたものです。
――アプリの仕組みで優良顧客化するのですね。
森下 またアプリを運用することで、利用期間が空いている会員を追いかけることができます。いつから来店されていないのか把握ができ、一定期間利用のない会員に対して、プロモーションコードを発行することで、離脱を防ぐことができるのです。
さらにアプリ内に「ジローラーニング」という布団洗いについて学習できるプログラムも作っています。布団を洗ってダニを除去することで、アレルギー予防対策や睡眠の質の改善に繋がるといった知識をクイズ形式で出題。答えられた場合はポイントを付与し、店のことを理解していただきながら、お得に利用できる仕組みづくりをしています。ロイヤルカスタマーを増やす仕掛けをたくさん用意しているのです。アプリ会員を増やし、どんな施策が一番効果があるのか、今後色々な検証をする必要があります。そのためこの1年はFCの増店より、本部運営の店舗の増店に注力してきました。
オンライン接客店のFCは加速土地活用考える地主に照準
――これらの取り組みは、FC店では検証ができないのでしょうか。
森下 既存のFC店の中には、そもそもアプリを導入していない店舗もあるため、本部がすべてのお客様を把握することができないのです。ただ直営店だけを積極的に増やそうとしても、当店の初期投資は5000万円ほど掛かるモデル。そのため借入額にも限りがあります。そこで直営・FCに代わる第3の形態として、運営受託というモデルを作りました。
このモデルは、大まかな設備をオーナーに投資してもらい、運営を我々本部が行い、オーナーから業務委託料として売上の70%をいただくというものです。当社の既存店でいうと、平均月商が約144万円なので、大体100万円ほどの業務委託料をいただくイメージです。FCオーナーは物件の賃貸借契約をしないため、我々が業務委託料の中から賃料や水道光熱費などを物件オーナーに支払う形となっています。
現在は運営受託の店舗が28店舗あり、直営と合わせて40店舗となっています。その店舗のアプリ会員は約6万人という状況です。
――運営形態を多様化させることで、出店を促進する。
森下 実は店舗のタイプも分類化させており、現在は通常のセルフランドリーと、クリーニング併設店があります。クリーニング併設店については、店舗全体の4割ほどの71店になります。
またさらにセルフランドリー形態でもパッケージを分類しています。通常のモデルでは機械台数が7〜15台ですが、開業コストを下げた6台構成のオンライン接客店を作りました。こちらのオンライン接客店に関してはFCとしても展開していく予定です。
――オンライン接客店を作った理由は。
森下 先ほど、既存店の平均月商が144万円ほどとお話しましたが、実はその売上の店舗でも機械の稼働率としては10%ほどという結果が出ています。この稼働率を見た時に、もっと機械台数を削れるのではないかと考えました。コンパクトにして稼働率を上げ、初期費用も3000万円程度に抑えられる。
――今後はオンライン接客店を増やしていくのですね。
森下 オンライン接客であればFCオーナーにとっても手離れが良くなります。ただ先ほども言った通りFCの出店を加速させるというよりは、今後は土地活用として地主さんへの出店を推奨していきたいと考えています。
相続税の小規模宅地の特例で、例えば空き地を不動産にすると、相続税評価額が50%軽減されます。それに対しコインランドリーの場合、400平米まで80%も評価を下げることができるのです。
また、オーナーが地主さんであれば固定費がほぼありません。こういった観点から土地を持っている地主さんにとって、コインランドリーを運営するメリットは非常に大きいのです。
――地主がコインランドリーを運営するメリットは大きいのですね。土地の広さはどのくらい必要でしょうか。
森下 上限が400平米まで、下限は100平米ほど。商圏人口は、FCの場合は4万人くらいの規模感で考えています。しかし、地主さんが自分の敷地に建てると考えると、商圏人口が1000〜2000人の規模感でも十分に成り立ちます。
布団を洗う単価が1枚2000円と考えた時に、100人のお客さんが来てくれたら売上万円です。布団洗いをメインで考えると商圏は狭くても問題がないと考えています。
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