【連載 第37回】アメリカに学ぶフランチャイズ事情

米国で確実に成長を遂げるラーメン業態と寿司業態

　米国の和食ブームの中で、ラーメン業態と寿司業態が著しい成長を遂げており目が離せない状況です。今回は、米国市場における両業態の現状、今後の可能性を解説します。

ラーメン業態の現状

　23年の統計によれば、米国のラーメン店は1399店舗。一方、日本のラーメン店は3万2000店舗ほどです。米国市場の大きさを考慮すると、ラーメン業態は将来性が大きく見込めます。
　米国のラーメン店は、醤油・とんこつ・味噌・塩の4つに分類できます。
　今後はヘルシー志向に沿って、ベジー系（Veggie系）ラーメンや、鳥スープの鶏清湯ラーメンの人気が高まる見込みです。
　米国のラーメン市場拡大を見込んで、日本からも多くのラーメンチェーンが進出を果たしています。一風堂のように単独で進出している企業もありますが、資金的な負担も大きいです。そのため、大半のラーメンチェーンはライセンスパートナーを募集し、地域限定のエリアライセンス契約を締結します。
　今後、米国のラーメンブランドで目を離せないのは、陣屋ラーメンです。同店は日本クオリティの豚骨ラーメンを再現し、餃子や唐揚げ、たこ焼きなど、幅広いサイドメニューを提供しています。アルコールメニューも充実しており、アメリカ人に好まれる本格的なラーメンレストラン＆バーを再現し、成功を収めています。現在はFC含めて全米で60店舗展開しており、来年には100店舗を超える勢いです。
　日本の個人ラーメン店の年商は3000万〜5000万円が一般的です。一方、レストラン規模で展開する米国は、現在の為替レートで1店舗あたり年商2億〜4億円に達しているラーメン店も少なくありません。

寿司業態の現状

　米国における寿司の市場規模は23年時点で342億ドルあり、年間4.5％増とされています。市場アナリストは、23年からの5年間で累計38億1000万米ドルと大幅な増加を予測しています。今後の年間平均成長率は3.53％とされており、力強い拡大が見込まれています。
　米国の寿司業態は4つに大別されます。
テイクアウト専門店
　テイクアウトの主なチャネルは、全米レベルで展開されている大手スーパーのほか、COSTCOやTRADER JOE’s WHOLESALEFOODなどがあります。これらのグローサリーチャネルは全米51州をほぼ網羅しており、多くのスーパーで寿司が販売されています。
ケータリング市場
　ケータリングの主なターゲットは、個人宅や企業のパーティー、ホテルやコンベンションセンター、学校イベント、カジノ施設などです。
回転寿司
　回転寿司は、日本の進出企業である「くら寿司」のほぼ独占状態です。現在は29店舗ですが、市場性の高さから近い将来100店舗に到達する可能性を秘めています。
寿司専門レストラン
　寿司が浸透しつつある今、本格寿司の需要も高まっています。寿司需要が高いロス、NY、テキサスなどは、寿司専門店や高級寿司のお任せを提供するハイエンドの店舗も増えています。
まとめ
　私がロスの寿司店に訪れたとき、家族で来店しているアメリカ人を見かけました。小・中学生のお子さんが好んでにぎりを食べている姿を見て、マクドナルド上陸ではじめてハンバーガーを食べる子どもの姿と重なりました。お寿司を好んで食べるアメリカの子ども達こそが、将来の寿司市場を活性化させる原動力と言えましょう。

米国で人気のある日本食

Profile　藤田一郎
　上智大学国際学部および南カリフォルニア大学国際学部出身。1980年にI. Fujita International, Inc.を設立。1986年から米国フランチャイズ案件の日本導入事業に着手。2000年以降から日本フランチャイズ案件の米国導入事業及び加盟店開発を行う。米国のアントプレナー誌からExcellent Entrepreneur Awardも受賞。最も米国フランチャイズ事情に精通している人物として認められ、近年は、フランチャイズのグローバル化に貢献し、多方面で講演を実施。日本フランチャイズ及び小売企業の北米進出サポートやコンサルテイングを行っている。