【TSUTAYA ・蔦屋書店ほか】「TSUTAYA」既存800店を順次業態転換(後編)

公開日:2024.06.25

最終更新日:2024.07.31

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

成長領域との組み合わせにより強固な事業ポートフォリオを組成

 書店やレンタルのイメージが強い TSUTAYAだが、多様性の現代においては、本や映画、音楽を中心に、さまざまな形のカルチャーの発信を目指している。同社が運営するジムブランドの「TSUTAYA Conditioning」や、カフェ利用やワークスペース利用など自由な空間を提供する「SHARE LOUNGE」では、本に囲まれた店舗空間を作っている。本と親和性の高い新業態の開発で、併設だけでなく単独店の展開も増やす方針だ。

「整う」コンセプトのジム業態 ワーカー人気高いシェアラウンジ

TSUTAYA Trading Card

――「TSUTAYA Conditioning」も、コミュニティ創出の1つですね。
鎌浦 イメージとしてはジムのような感じではありますが、正確にはジム業界に参入したつもりはありません。多くのスポーツジムが乱立しているレッドオーシャン市場だと認識していますし、身体を鍛える目的でジムを利用する日本人は、約3%しかいないというデータもあります。
――それが「整える」というコンセプトに繋がるのですね。
鎌浦 「鍛える」のではなく「整える」をコンセプトに、現在は全国に8店展開(24年5月末現在)しています。1号店である桜新町店の出店自体は5年以上前になります。従来の店舗の中に入っているパターンがほとんどですが、単独店もあります。ヒューマンコミュニケーションを大事にするパッケージにしたいので、ヨガとピラティスの2パターンでインストラクターを派遣しています。インストラクターの派遣事業を内製化し、全国で2658名(24年4月末時点)の方に登録をしていただいているので、専門知識が無くてもスタジオの運営が可能です。
――事業として投資価値の高いモデルになってきている。
鎌浦 採算性の目標としているブレークイーブンを越えて、ピラティスの売上実績が1店あたり月商約200万円です。投資回収を十分見込めるモデルになってきているので、改めて事業として広げていこうと思っています。最初は直営で立ち上げ、徐々にFC展開をしていき、2025年3月までに単独で100店舗出店の計画です。
――「SHARE LOUNGE」も好調です。
鎌浦 SHARE LOUNGEでは、ワークスペースとしてもカフェとしても、自由に過ごすことができる空間を提供しています。海外店と提携店を含めると合計40店舗です。利用者の内訳は、ワーカーが50%、複数人でのカフェ利用が30%で、残り20%がお1人様で読書を中心に楽しまれる方です。最も売上の高い店舗は丸の内で、北千住や川崎駅前などでも成功事例ができています。
――今後、SHARE LOUNGEの展開もFCを中心に行っていく。
鎌浦 今後はほぼFCで展開する予定です。まず、首都圏で順次業態転換していき、100店舗を目指します。現在は直営が店舗です。提携を含まない、TSUTAYAの看板で出店している SHARE LOUNGEは30店舗(24年4月末時点)となります。
――業態を切り替えると書店併設型が多くなると思いますが、それ以外は。
鎌浦 当社で新たに開拓することもあります。たとえば、押上の「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」に SHARE LOUNGEが入っています。そのほか、外苑前駅前のKDDIウェブコミュニケーションズさんのオフィスだった場所にも採用していただきました。このように新業態を押し出すことで、既存店だけでなく新たな企業さんにも新規で加盟していただけるのではないかと期待しています。
――SHARE LOUNGE事業のビジネスモデルは。
鎌浦 SHARE LOUNGEは非常に利益の出やすい事業です。月商は2000万円を超えています。また、一般的なカフェですとFL比率で60%ほどかかってしまいますが、SHARE LOUNGEはセルフカフェ方式を取っているので、FL比率が40%に抑えられるモデルです。営業利益率は10%以上を想定しています。
――中長期的な視点で、FC出店数の目標はありますか。
鎌浦 CCCも含め、これからの人口減少を鑑みて数は追わないと決めています。一つずつ丁寧に、新しい時代のユーザーにあったアイテムや業態を開発します。ですから具体的な数値目標などは決まっていません。
――事業が複雑に絡み合っている印象ですが、あくまでも TSUTAYAの基準は書店なのでしょうか。
鎌浦 当社の事業として書店が核であることは間違いありませんが、出店するパッケージに書店がないと TSUTAYAではないということではありません。デジタルの影響を強く受けてしまっている当社ですが、成長事業を上手く組み合わせることや業務提携によって、加盟企業を支援していきます。事業ポートフォリオの転換という点で、その方針は SHARE LOUNGEで見えています。書店のナンバーワンチェーンとして、本を核に据えつつ、カルチャーやライフスタイルを発信し、新業態でコミュニティを創出します。

児童書コーナーには遊び場も併設

 

 

フラッグシップ店舗リニューアルオープン SHIBUYA TSUTAYA

 去る4月25日(木)、かねてより改装中だった「SHIBUYA TSUTAYA」(東京都渋谷区)がリニューアルオープンした。
 グループのフラッグシップ店舗となる同施設は、「好きなもので、世界をつくれ。」をテ ーマとしており、地下2階、地上8階建ての各フロアにコンセプトを設け、新しい文化の名所(聖地) を創り出していきたいという。
 地下2階から1階は、「世界中のIPで好きをつくるフロア」として、アニメ ーションや音楽などのエンターテイメントからハイブランドまでを取り扱い、世界中のさまざまなIPとコラボレーシ ョンし、期間限定のポップアップストアやイベント等を展開。2階から4階は、「インスパイアされるカフェ&ラウンジ」で、SHARE LOUNGEなどが入居し、個人が主体的に活動できる空間を提供する。5階から8階は、「ここでしか出会えない体験でつながるフロア」として、日本を代表するIPコンテンツのコトや体験を通じて、ファン同士が繋がっていけるラウンジや書店、カフェを展開。8階はイベント配信機能を備えたスタジオを有する。

4月25日にオープンした「SHIBUYATSUTAYA」

カンボジアに進出、34年までに6店舗出店 アジア太平洋地域でビジネス強化

 CCCでは、「TSUTAYA BOOKSTO RE」を新たにカンボジアに展開する。同社と双日(東京都千代田区)の合弁会社である TSUTAYA BOOKS Malaysia Sdn. Bhd.(本社:マレーシア・クアラルンプール)が、カンボジアでデベロッパー事業やホテル事業などを展 開する Urban Living Solutions Co., Ltd.とフランチャイズ包括契約を締結。2034年までに6店舗出店する計画だ。2025年には首都プノンペンに1号店を出店する。
 カンボジアは、リーマンショック以降もGDP成長率は年約7%の安定した経済成長を続けている。2020年は新型コロナウイルスの影響を受けてマイナス成長になったものの、 2021年以降回復しつつあり、 今後も高い経済成長が予測されている。
 CCCは、海外事業として台湾で「TSUTAYA BOOKSTORE」を計11店舗、中国本土で「蔦屋書店」と「TSUTAYA BOOKSTORE」を計12店舗、マレーシアでは「蔦屋書店」と「TSUTAYA BOOKSTORE」を1店舗ずつ出店している。今後は、アジア太平洋地域におけるビジネス強化を図っていく計画だ。

【TSUTAYA ・蔦屋書店ほか】「TSUTAYA」既存800店を順次業態転換(前編)

 

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