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【ハウスドゥ】宅建業法のないタイに進出、業界のスタンダードを築く

公開日:2024.07.17

最終更新日:2024.07.17

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

買取再販の粗利率は国内2倍の30%、先行利益を享受

ハウスドゥ And Doホールディングス:東京都千代田区 安藤 正弘 社長(59)

 And Doホールディングスが運営する「ハウスドゥ」は、国内に705店舗を展開する不動産売買仲介専門チェーン店だ。2019年にタイに進出し、2023年にFC展開をスタート。現在はバンコクで直営1店舗、FC4店舗の計5店舗を展開している。前期の直営店実績は売上約2億3000万円に対し、粗利率30%だったという。同社の安藤社長はこの実績をもとに、今後は現地企業の加盟を推進していくという。

安藤 正弘 社長(59)
1965年京都府生まれ。1991年に不動産売買仲介会社を創業。「ハウスドゥ」ブランドで、全国に705店舗超のフランチャイズチェーンを展開中。2019年タイにH-DO(THAILAND)Limitedを設立。2022年商号をハウスドゥからAnd Doホールディングスに変更。

個人間でのトラブルが多発中古マーケットに勝機

――御社は2019年にタイに進出しています。なぜ初の海外進出にタイを選んだのでしょうか。
安藤 我々は「業界を良くする」という理念を掲げています。この理念のもと、日本だけに留まらず、アジア全体で業界を良くしようと以前からアジア展開を見据えていました。私の感覚値ですが、日本の不動産業界はアメリカと比べて20年ほど遅れています。そして、アジアは日本よりさらに40〜50年遅れている印象です。
 驚くことに、タイには日本でいう不動産取引における法律「宅建業法」がありません。まだ法的に整備されておらず、中古マーケットのプレーヤーも少なかったため、チャンスがあると感じました。
――日本では、不動産取引の公正や購入者等の利益保護を目的として宅建業法が整備されています。それが存在しないタイではどのように取引がされているのですか。
安藤 個人で取引をしているケースが多いです。専門的な知識のない消費者が取引をするため、時間と手間が掛かります。連絡が突然取れなくなる、書類を偽造して騙されたなどのトラブルが日常茶飯事だそうです。そのため不動産会社として個人取引の間に入り、契約書の作成や交渉などの仲介サービスを提供しようと考えたのです。
――タイの不動産市場は今後どのように動くと予測されていますか。
安藤 現在、中古物件の取引や既存物件のリフォームなどが増加しているため、今後も中古マーケットが伸びていくと考えています。我々が参入した5年前、新築物件を購入する場合は物件価格の100%で住宅ローンが組めたのですが、中古物件では80%ほどに限定されている状況でした。
 しかし、今は中古でも物件価格の100%を融資する金融機関が増えてきました。経済の活性化のため、政府が金融機関に働きかけをしたことが大きく影響しています。新築が売れにくくなって、中古が動くようになったのです。
――進出の際に何かハードルになったことはありますか。
安藤 外資規制の壁はありました。タイ進出の際はパートナーと組む必要があるため、相手方の意見も尊重しなければなりません。しかし、先ほども話した通り、日本とタイの不動産業界には約40年のギャップがあります。「今後こうなるからこうやりましょう」と言っても、現地の方は意味がわからない。そこを理解してもらうことの難しさを感じました。宅建業法がない国だからこそ、パートナーが言うことを鵜呑みにせず、弁護士や第三者機関に確認しながら時間を掛けて進めました。

バンコクで直営1店、FC4店を展開している

直営の売上約2億3000万円 タイ全域の物件データベース保有

――2019年に進出されていますが、FC展開を始めたのは2023年。少し間が空いています。
安藤 コロナ期間だったため、4年間は直営店の運営を着実に行ってきました。直営店の実績は、前期の売上が5500万バーツで、日本円にすると約2億3000万円。そして、粗利率は30%ほど。
 昨年3月にFC1店舗目がオープンし、2〜4店舗目は同年の10、11月に続けてオープンしました。現在は直営1店舗、FC店4店舗の計5店舗をバンコクで展開しています。加盟法人は4社で全て日系企業です。
――現在の加盟している法人は、どのような理由で加盟に至ったのですか。
安藤 我々と同じように、タイの中古物件市場が成長すると期待をされている印象です。また、タイでリフォーム業や法律関係などの事業を展開している法人は、本業とのシナジーに期待し、収益アップを狙って加盟されています。
そして、当社ではSNSでの集客ノウハウに加え、タイ全域の物件のデータベースを保有しています。不動産取引で一番大事なことは相場です。相場情報を正しく提供することが、質の高いサービスになるのです。そのデータベースを活用できることも、加盟店にとって大きなメリットだと思います。
 現在は日系企業ばかりですが、バンコクで5店舗に増加したことから、タイのローカル企業からFCについての問い合わせが増えてきました。これからはローカル企業の加盟が増える見込みです。我々がサービスレベルのスタンダードを作り、ハウスドゥのブランド力を高めていきたいですね。
――タイではスタッフをどのように雇用しているのですか。
安藤 現地採用、現地雇用が基本です。タイの95%以上が親日家ということで、採用は非常にしやすいです。
 タイでは、仕事だけではなく自分の人生や家族を重視する価値観が一般的です。そのため、有効なマネジメント方法は飲みの場でのコミュニケーション。また、仕事仲間と深い関わりを持てる社員旅行などのイベント事はとても喜んでくれますし、モチベーションアップに繋がっています。
 日本では当たり前の時間を守る、真面目に働くといった姿勢でタイのお客様は喜んでくれます。当たり前のことを当たり前にすれば、受け入れてもらえます。今後、アジア展開を広げていくために、重要な体感を得ることができました。
――日本とタイのコスト構造に違いはありますか。
安藤 タイの人件費は、新卒の給料の平均が約2万バーツ。これは日本円にすると約8万5000円で、日本の2分の1ほどの水準です。
 そして、日本では買取再販の粗利率は15%ですが、タイの直営店では倍の30%という実績があります。まだまだライバルが少ないため、先行利益を享受している状況です。日本より人件費が安く、粗利率も高いため利益が出やすい構造で、タイで展開する優位性を強く感じています。
 さらに、海外展開をしたことで、「将来的に海外で働きたい」という新卒の人材が多く入社するようになりました。やる気や熱意のある人材が集まるのは、海外展開をした大きな副産物だと思います。
――今後の海外展開での目標は。
安藤 アジアで5万店舗展開という数字を掲げています。日本で1000店舗、タイで500店舗まで拡大する目標です。タイでナンバーワンチェーン店となること、IPO上場も視野に入れています。私たちは、100%子会社でやろうとは考えていません。現地の企業に資本を入れながら上場させて、地域貢献をしたいと思います。
 タイを皮切りにASEAN地域に広げることを目指し、次はインドネシア進出を検討しています。

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