【ビーケージャパンホールディングス】コロナ下の積極出店で227店舗に拡大(前編)

公開日:2024.08.29

最終更新日:2024.08.30

※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

FC比率さらに高め、28年の600店舗体制を目指す

 「バーガーキング」は1954年に、アメリカのマイアミで誕生したハンバーガーチェーンだ。現在は100カ国以上で約1万9500店舗を展開しており、世界的なブランドとして知られている。日本に上陸したのは1993年だが、複数回に渡る運営会社交代の末、一時撤退。 2007年に再上陸したものの業績は芳しくなかった。そんな日本のバーガーキングをマーケティングの観点から打開し、巻き返しを図っているのが現在の運営会社、ビーケージャパンホールディングスの野村一裕社長だ。コロナ禍の3年間で約100店舗増を果たした同社のマーケティング戦略について聞いた。

ビーケージャパンホールディングス (東京都千代田区) 野村 一裕 社長(45)

Profile のむら・かずひろ
上智大学 比較文化学部 卒業 。MBA、一橋大学大学院 国際企業戦略専攻 。2002年にキリンビール株式会社入社。料飲店・量販店の営業担当や商品マーケティング担当を歴任。 2019年に株式会社ビーケージャパンホールディングスに入社。同年新体制となったバーガーキング®のマーケティングディレクターとしてマーケティング戦略、新商品開発、ブランドコミ ュニケーションを指揮。 2022年にCOO就任。マーケティング部門に加え、店舗開発やフランチャイズビジネス部門を統括。2023年1月より現職に至る。

 

 コロナで飲食チェーンの出店拡大が停滞する中、同社は20年に25店舗、21年に34店舗、22年に37店舗と積極的な拡大を図ってきた。テイクアウトやデリバリーと相性の良いファストフード業態はコロナの巣ごもり需要に支えられ、比較的大きな打撃は受けなかった。同社もコロナ下のデリバリー需要により、客単価と認知度向上の恩恵を受けたという。

コロナ下で積極出店 好条件の物件を確保

――御社はコロナ下で急激に店舗数を伸ばした印象です。2019年末は83店舗だったのに対し、2023年末には207店舗、2024年6月末には227店舗まで拡大しています。
野村 コロナで大半の業種が打撃を 受けた当時、外食業界でも出店を控える意向が多く見られました。しかしそうなると、食べたいと思ってくださっている消費者にその機会を提供できなくなってしまいます。そうはしたくないと思い、我々はコロナ下でも積極的に出店することに決めました。
 2020年から2022年のコロナ下3年間で96店舗増えましたが、良い物件が通常の6分の1〜7分の1の賃料で借りられるなど条件がとてもよかったです。今もその賃料で借りられているので、ある意味ラッキーでした。
――当時は来店が難しい状況でしたが、売り上げはしっかり取れたのでしょうか。
野村 取れています。現に、当社は2019年末にチェーン全体で85.7億円の企業でしたが、2023年末には249億円まで上がっています。さらに、2019年以降は毎年約30%の成長を続けており、店舗
1日あたりの売上はこの3年で2倍近くに増えました。現在、1店舗あたりの平均月商は1200〜1300万円で、年換算すると1億5000万円になります。
――コロナが追い風になった部分もありますか。
野村 我々のようなファストフード業態はすでに包装ができていますから、テイクアウトやデリバリー需要にすぐ対応できました。特にデリバリーが好調で、コロナ前は全売上に占めるデリバリー率が5%未満だったのに対し、コロナ下では20%超にまで拡大しました。通常生活に戻った現在もその比率でデリバリー売上を維持しています。
――アフターコロナとなりイートイン需要が回復している今も、売上は好調のようですね。
野村 コロナのデリバリー需要は売上だけでなく、当店の認知度向上にも繫がりました。一例をあげると、ハンバーガー業界で最も認知度の高いマクドナルドさんは、消費者に自分の家から店舗まで徒歩何分レベルまで把握されています。一方、当店はそのレベルでは認知されていません。しかし、コロナの外出自粛で来店できなくなった代わりにデリバリーが使われるようになりました。そこで消費者はデリバリーアプリを開き、バーガーキングの表示を見て、はじめて自分の生活圏内に当店があることを知るのです。そのおかげでアフターコロナの今でも売上は伸びています。

日本上陸ブーム到来か ローカルブランドの可能性

――コロナで外食が軒並み落ち込む中、ファストフード業態はテイクアウトやデリバリー需要を受けて好調でした。今後のファストフード業態について、野村社長はどうお考えですか。
野村 ブランドが代わっていくと思います。アジアのブランドやアメリカのローカルブランドなど、世界には我々がまだ知らない魅力的なブランドが多数あります。水面下では多くの投資家が動いており、たとえば大谷翔平選手が推しているバーガーチェーンなどが報道されれば、すぐ日本に上陸してくる可能性もあります。現に、アメリカで約1500店舗を展開するバーガーチェーンが年前にシンガポールに上陸し、昨年には韓国にも進出しています。そう考えると日本到達も間近です。そして今年は、韓国で1400店舗を展開するバーガーチェーンも日本に入ってきました。そのほか、一度日本を撤退したメキシカンファストフードチェーンの再展開などを見ると、ファストフードの需要が広がっていると考えられます。
 しかし、長続きするかは別です。過去に日本上陸した後、撤退したファストフードチェーンも数多くあります。長続きするためにはブランド力はもちろん、マーケティングや日本へのローカライゼーションなどが総合的にできている必要があると思います。

デリバリー需要が追い風となった

個別クーポンを発行 高単価商品へ誘導

――バーガーチェーンの枠で見ると御社は高単価を実現していますが、デリバリー以外に客単価が上がった要因はありますか。
野村 当店が高単価を実現している理由としてデリバリー単価の高さもありますが、それも売上全体の20%程度です。残りの80%はイートン・テイクアウトで、具体的にはEDLP(EverydayLowPrice)を実施しています。EDLPは毎日、低価格で商品を販売する価格戦略のことで、当社の商品で言うと「オールデイキング」がそれに当たります。日本のバーガーチェーンは朝昼夜などの時間帯や、都心・郊外などの場所、平日休日の違いによって価格が変動します。いつどこでバーガーセットを買うかによって価格が変わるなんて複雑ですよね。そこで、我々は全国一律、どの時間帯も同じ価格のバーガーセットとして「オールデイキング」を打ち出しました。チョイスするバーガーによって550円、600円、650円の3つの価格設定があり、単品にセットを付けるよりもお得です。これだけで25%を売り上げています。
――バーガーキングは他のバーガーチェーンよりも値段が高いと思われがちですが、高額商品だけでなくオールデイキングのようなエントリー商品も展開されているのですね。
野村 加えて、オールデイキングを利用する人は週数回レベルのリピーターになります。家やオフィスの近くに当店があって、節約しようと思って来店されるパターンです。「昨日は牛丼だったけど、今日はバーガーキング、明日はサイゼリヤにしよう」と、ルーティンに組み込んでくれる人をキャッチできたのが1番ですね。
――しかしそうなると、あまり単価が上がらないのでは。
野村 我々が考えているのは、右肩上がりのカスタマージャーニーです。当店のバーガーメニューは約30種類あります。中でも看板商品の「ワッパー」は、直火焼きの100%ビーフパティが特長の世界中で愛されている大型バーガーで、ユーザーには〝ご褒美バーガー〞として認識されています。我々は多くのお客様にワッパーを体験していただきたいです。手軽にお試しいただくため、アプリ会員に毎週クーポンを一斉配信、またお客様に合わせた個別クーポンも配信しています。
――個別クーポンの発行はどのように行っているのですか。
野村 アプリ会員に個別でアプローチできるシステムを活用しています。システムは、来店見込みの高いユーザーを洗い出して最適なクーポンを発行します。たとえば、前回は限定ワッパーを食べたのに今回はまだ食べていない人。この人に対し、あなただけの特別クーポンを発行するのです。見込みのある人にクーポンを発行しているので、高確率で来店してもらえます。こうしたワンオンワンマーケティングによって、我々のカスタマージャーニーに繋げていきたいと考えています。

 

【ビーケージャパンホールディングス】コロナ下の積極出店で227店舗に拡大(後編)

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