【コンパスウォーク】人生の大先輩を敬い護る「敬護」サービスを提供(前編)

公開日:2024.09.03

最終更新日:2024.09.03

※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

自分の事業で自分の親を護るため85社が加盟

 リハプライムは歩行特化型デイサービス「コンパスウォーク」を中心に、幅広い介護事業を展開している。同社が提唱するのは介護ではなく、人生の先輩を敬い護る「敬護」だ。この敬護を理念に掲げ、理念浸透のため人材教育に力を入れており、そこに共感した85社がFCに加盟。各加盟店は、自身の親が住むエリアでそれぞれコンパスウォークを運営しているという。同社の小池修社長に、介護事業への想いを聞いた。

コンパスウォーク リハプライム:埼玉県さいたま市 リハプライム 小池 修 社長(59)

Profile こいけ・おさむ
1965年、埼玉県さいたま市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、不動産会社の営業マンを経て、上場企業(フィットネスクラブ)の役員となる。2010年に両親がほぼ同時に倒れたのを機に、自身で介護施設をつくることを決意。翌年4月にデイサービス1号店をオ ープン。その後、デイサービスのFCを全国展開しつつ、訪問看護ステーションや介護タクシー、福祉用具販売などの事業も次々に展開。さらに2018年1月には美容室を併設したカフェ「茶の間」をオープン。同時に、離職率50%が当たり前の介護業界で、定着率96%を達成し、業界の注目を集めている。

 

 

1.歩行訓練特化型のデイサービス

シニアのわくわく感を重視 最良の人生の回復が目標

--御社が展開する「コンパスウォーク」は、リハビリ特化型のデイサービスで、特に歩行訓練に注力しているそうですね。
小池 コンパスとは「羅針盤」という意味です。この名前には、利用者様の機能回復と最良の人生の回復を目標とした、利用者様の羅針盤を全員で共有し行動しようという想いが込められています。
当社ではシニアのわくわく感をキーワードにしており、そのためには歩行が必須だと考えています。歩行特化型のリハビリを実施しているのは、こうした理由からです。また私たちが最も大事にしていることは、シニアを敬い護る「敬護」の理念です。
――敬護にはどういう意味が込められているのですか。
小池 私たちが提供するサービスは「介護」ではありません。介助して護るではなく、人生の大先輩を敬って護る「敬護」なのです。つまり私たちは、シニアの誇りを商品にしているのです。
 実は、私がこの事業を立ち上げる前に両親が倒れてしまい、数多くの介護施設を回りました。その中で、人生の大先輩である利用者様を「ちゃん」付けで呼び、入浴介助の際に裸で並ばせていることを目の当たりにしたのです。もし自分の親が同じことをされると考えると、とても通わせられませんでした。
 ですから当社の事業は、「自分の親が喜ばないことはしない」という考えがベースになっています。自分の親が喜ぶことをする、親が困っていることを解決する、そういう想いで「敬護」という言葉を掲げています。
――コンパスウォークは全国でFC展開もされています。
小池 現在、コンパスウォークは直営12、FC157の合計169施設を展開しています。それ以外にも訪問看護ステーションや介護タクシー、移動型スーパーや美容室×カフェなども展開し、介護事業を多角化しています。これらの事業所数を合わせると、合計189拠点まで広がりました。シニアが住み慣れた地域でやりたいと思うことをすべて提供しようと考えたら、次々と新しい事業が増えていったのです。

“回復”を前提とするため、歩行訓練に特化

2.介護事業参入の経緯

両親が同時に要介護者に 自身の親が喜ぶことを基準に

――小池社長はもともと大手フィットネスクラブの運営会社で役員として活躍されていました。なぜ異業種である介護事業に参入されたのですか。
小池 先ほども話に出ましたが、私が前職に在籍していた2010年に、両親がほぼ同じタイミングで倒れたのです。両親ともに要介護者となり、介護施設を探し回ることになりました。当時、介護施設の利用はケアマネージャーさんの紹介を通すことも知らず、自らの足で介護と名の付く施設を見つけては飛び込みで見学に行きました。
 そして2週間で38施設を見学した結果、自分の両親を安心して任せられる施設を見つけられなかったのです。それなら自分で両親の介護をするしかないと、2011年4月にリハビリ型デイサービスを開業しました。
――まったく経験がないところからの開業は大変だったのではないでしょうか。
小池 最初の3カ月はまさに試練のような期間でした。たった4人のスタッフしかいないのに、スタッフの人数が利用者の人数を上回るような状況が続いたのです。さらに数少ない利用者様が来ても、その方から「潰れるぞ」と言われ、精神的にも非常に追い詰められていきました。
――何をきっかけにその状況から抜け出すことができたのですか。
小池 開業当時、100円均一で購入できるような茶色のプラスチックコップを使っていました。安価で割れにくく、汚れも目立ちにくいからと選んだものでした。しかし、そのコップで提供したお水やお茶を利用者様は誰も飲んでくれません。ある日、お茶を飲むことを促すと、「何が入っているかもわからないようなコップで飲めるか」と怒鳴られてしまったのです。
 認知症の方だったため、その時は病気がそのような言動をさせてしまうのだと思いました。しかし本当の理由が分かったのは後日です。ある日、施設に来て遊んでいた娘からお水が飲みたいと言われ、その茶色のコップに水を注ごうとしました。しかし、手が止まってしまい、飲ませることができなかったのです。
――なぜそのコップを使えなかったのですか。
小池 もちろんしっかり洗っているコップなのですが、茶色のため何が入っているかわからず、娘にこのコップで飲ませたくないと思ったからです。その時、自分の娘が口にするのに躊躇うようなコップで、人様の親に水を飲ませようとしていたことに気づきました。親に喜んでもらうために始めた事業のはずなのに…。情けなさのあまりに涙が出ました。
 それからコップに加え、提供していた娯楽用品の入れ替えもしました。それまでトランプやゲームなど子ども用のものを置いていたのですが、iPad など大人が楽しめる洗練されたグッズに替えたのです。自分の親が使っていたら素敵だと思うものに入れ替え、これを境に利用者が増加し、事業がうまく回り始めました。創業時の精神を具現化すればうまくいくと確信できました。
 しかし、利用者が増えて順調だと思っていた2年目に、また新たな問題が起きたのです。スタッフが「有休が使えないなんて、こんなブラック企業だと思わなかった」と言い出したのです。

2011年4月に開業

3.人材が定着する仕組みと教育

2施設展開で人員にゆとり 理念を浸透させる研修を用意

――利用者の次は雇用体制の課題が発生したのですね。
小池 ほかにもこんなことがありました。当時、私ともう1人の2名しか送迎車両を運転できなかったので2人体制でギリギリ回していたのですが、ある時そのスタッフから「子どもが熱を出したので休みたい」と連絡が来たのです。私は昭和世代のまさに企業戦士だったため、「有休?何それ?」状態(笑)。「あなたが休んだら誰が迎えに行くの?」と今思えば鬼のようなセリフを言ってしまいました。結局そのスタッフは子どもを連れて出勤し、その日限りで辞めてしまいました。そんな状態だから人が定着しないのも今思えば当然です。
――それはなかなかマズいセリフですね(笑)
小池 スタッフ1人が有休を取れるようにするには、人員を1人増やす必要があります。しかしデイサービス事業は、人員要件など法的な縛りが強い割に利益があまり出ません。そのため、1人増やすだけで赤字になってしまい、1施設の経営ではどうしてもギリギリの人員になってしまうのです。スタッフをないがしろにしているつもりはなかったのですが、どうにか施設を工面することばかり考えて、結果的にスタッフに負担を強いていました。
 そしてこの状況を打破するためには、2施設目を出すしかないと考えました。2施設あれば利益が倍になるため、少し余裕が出て2施設で9人を雇えるようになるからです。1人多く雇うことで休みが取れるようになり、スタッフが定着しやすい環境をつくることができたのです。
――御社は人材教育にも力を入れており、定期的に研修も実施されていますよね。
小池 私たちの事業で大切なことは理念の浸透です。正直、デイサービスの仕組みはどこも同じ。その中で当社の一番の違いは、「敬護」の理念が浸透していることに尽きます。理念の浸透のため、当社の直営施設スタッフは正社員雇用しかしていません。FC店の方々にも、正社員を雇ってもらうようにしています。
 また敬護の心を持ってもらうために、「コンパスアカデミー」という2時間のオンライン研修を月に1回実施。これは当社の社員は全員参加で、FC店の方は任意参加です。ほかにも毎日必ずLINEのオープンチャットツールを使い、3分間の動画を配信しています。
 これらの研修で伝える内容は、タイムマネジメントや思考・感情のマネジメント、コーチングなど多岐に渡ります。スタッフが働きながら笑顔になれる物事の考え方、捉え方を学んでもらっているのです。
 さらに将来的にコンパスウォークで独立を目指す人に向けた起業塾も毎月開催しています。現在は社員や子会社の方が中心に参加しており、経営の心構えを学べる研修になっています。

直営施設は全員正社員として雇用

【コンパスウォーク】人生の大先輩を敬い護る「敬護」サービスを提供(後編)

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