【フレアスメディカルケアホーム】「ホスピス」主体に施設介護事業で急成長(後編)

公開日:2024.10.08

最終更新日:2024.10.08

※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

 

年間80万回利用されているマッサージ事業とのシナジー

 一方、祖業のマッサージ事業においても、今後の成長を図るとともに、施設介護事業とのシナジーを図っていく計画だ。
 同社のマッサージ事業は、ケアマネジャーからの紹介を受け、医師の同意の下で在宅マッサージを施術するサービスだ。利用者は医療保険法対象者で要支援者や要介護者となる。マッサージ師が全国の拠点から利用者自宅などを訪問し、リンパ、腱、内臓にアプローチするマッサージを施術する。2024年3月時点で、直営だけで全国に85拠点を展開中だ。
 同社のマッサージ直営事業の累計利用者数は2024年3月時点で9万9344人となっており、10万人を目前に控えている。また、年間の施術件数は約80万回に上っており、3年後には年間施術件数100万回の達成を目指している。
 さらにFC展開による拠点拡大も図ってきた。
 同社は、訪問マッサージ治療院「レイス治療院」のFC事業を運営するオルテンシアハーモニー(東京都渋谷区)を、M&Aにより2020年6月に子会社化した。その後もFC中心の出店拡大で、FC拠点数を2024年3月時点で328拠点まで増加させている。3年後の2027年3月期には412拠点に増加する見通しだ。
 今後は在宅マッサージとホスピス・看多機の両事業で、互いにシナジーを創出していく。
「ホスピスのビジネスモデルに当社のエッセンスを入れることで、我々にしかできない事業を作ろうと考えています。そのために、一番重要なのがマッサージです。年間約80万回の施術件数がある当社のマッサージ事業は、業界一だと自負していますし、実際に利用者満足度も高いです。利用者の方にとって、最後の最後まで自分らしく過ごせる居場所を作り出そうと考えています」(澤登社長)
 同社のマッサージの競争優位性は痛みの緩和にある。「痛み」の第一人者である東京大学医学部附属病院の住谷昌彦氏の協力のもと、マッサージによる疼痛の緩和ケアの研究を行っている。マッサージを組み合わせ、痛みの無いホスピスを作る方針だ。

マッサージ事業とのシナジーで「痛みの無いホスピス」を目指す

 

従業員が辞めない仕組みで離職率の低減に注力

 マッサージ事業も、ホスピスや看多機といった施設介護事業も、その運営上最も重要なファクターとなるのは人材の確保だ。
 同社では従業員が辞めない仕組みづくりで、離職率にこだわっている。離職率5%を目指し、最低でも10%を超えないことを目安としている。介護業界の平均的な離職率が約15%と言われており、10%を下回れば定着率が良いと言える。なお、マッサージ事業では8%をキープしているという。
 ホスピスにおいては、看護師が鍵を握る。看護師の低い離職率を達成している背景には、教育の徹底があるという。同社では日本全国で有数の高い技術を持つ看護師が指導に回り、オープニングスタッフの教育を行っている。スタッフとのカンファレンスやマッサージ施術など、指導のノウハウも自社でマニュアル化し進めているという。
 また、看護師等の資格を持ちながら看護師等として就業していない「潜在看護職」は、有資格者のうち3分の1ほど存在すると推計されている。そこで、看護資格を持つ休眠看護師をどのようにして採用していくかが今後鍵となるという。
「ホスピスは、365日24時間体制で、夜間も人手が必要なため、施設には入居者と同程度の人数の職員が働いています。何人もの看護師さんが必要ですが、業務のほとんどが看護師さんによって回っています。つまり、ホスピス事業で人材採用をするにあたり、最も重要になるのは、働く人が看護師さんだということです」(澤登社長)

事業利益率は月20%、投資利回り5〜8%

 今後さらに、ホスピス事業を多拠点化していくにあたって、もう一つ重要な要素が、土地を提供してくれる地主オーナーの開拓だ。幸いにして、近年はマンションやアパート以外の非住宅への投資を始める人が多い。その中でホスピスなど社会貢献できる事業が注目を集めている。そのため、施設介護に対して前向きに捉えるオーナーは増えつつあるという。
「ダイレクトに社会貢献に繋がるのが、施設系へ投資するメリットの1つです。実は今回、静岡で建設していただいているオーナーは代のご夫婦。『自分たちの土地でこうやって喜んでもらえる人たちがいるんだったら是非投資したい』と言ってくださいました」(澤登社長)
 約30台分の駐車場スペースなども考慮に入れると、ホスピス1棟を開設するためには400〜600坪の土地が必要となる。48床タイプでホスピスを開業した場合の収支モデルは、月商が約3600万円、利益率22%。これは、入居者1人あたりの売上と施設のベッド数の掛け合わせだ。ほかの介護施設と異なるのは、医療保険の割合が高いことで、収入の6割を占める。そのためには前述の通り、看護師の確保が重要となるが、事業の収益性、安定性はほかの介護施設より大幅に高くなる。
 オーナーからは土地を1平米7万〜7万5000円で借りる想定だ。建設費は大きさによるが、1施設あたり5億〜7億円ほど必要になる。利回りは約5〜8%で推移し、オーナーには30年間固定で家賃を支払う。
 今後は需要増が予想されるため、同社は現在のホスピス拠点5カ所を2027年3月期に20カ所まで増やす計画だ。
「当社のホスピス事業は、適正価格で良い場所にある物件を確保することや、人材を採用してどう教育、定着させていくかという事業のパターンがすでに固まりつつあります。ですので、今後はホスピス事業の取り組みが中心になるでしょう。ただ、ホスピスに注力すると言っても、祖業であるマッサージが中心であることは変わりません。マッサージ事業をおろそかにすることなくFCも直営も展開を進めていくつもりです」(澤登社長)

 

 

【フレアスメディカルケアホーム】「ホスピス」主体に施設介護事業で急成長(前編)

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