【連載 第40回】アメリカに学ぶフランチャイズ事情

ドーナツの歴史と人に愛され続ける理由

　最近、日本では第三次ドーナツブームが巻き起こりつつあると聞きます。従来の「ミスタードーナッツ」に加え、生ドーナツの「I’m donuts?」や「We Love Donuts」の誕生で再びドーナツが話題となりました。さらに近々、アメリカの新規ブランドが久しぶりに日本上陸するようです。そこで、ドーナツが何故ここまで愛され売上を誇っているのか、歴史的な背景を踏まえて説明したいと思います。

ドーナツが愛される理由

・味とトッピングの多様性：クラシックなグレーズドからワイルドな食事系などバラエティが豊富
・食感の多様性：軽くてふわふわした食感や重く濃厚なものまでさまざまな食感がある
・コーヒーと相性抜群：ドーナツの甘さがコーヒーの苦味とマッチ。朝食やスナックなど幅広いシーンで人気
・持ち運びが便利：外出先でも食べられる究極のコンビニエンスフード
・コンフォートフード：懐かしさと心地よさがあり、楽しい思い出や伝統を想起させる
・手頃な価格：誰もが購入できる小さな贅沢
・魅力的なビジュアル：カラフルでクリ エイティブなドーナツはSNSでも話題
・ばらまきに最適：シェアしやすいドーナツは人々を結びつける社交的な側面がある
・革新的なスイーツ：味とスタイルが常に進化。決して飽きることはない

ドーナツの起源

初期
　アメリカのドーナツの歴史は、オランダ人入植者の持ち込みにより19世紀からスタートした。初期のドーナツはシンプルで手作りがほとんどだった。
ドーナツショップの台頭
　20世紀初頭にドーナツショップが誕生。ドーナツは手作り品から商業の定番商品へと変化した。ショップでは、できたての温かいドーナツとコーヒーを提供。その快適さからコミュニティの中心地となった。
革新と拡大
　20世紀半ばになるとドーナツを大量生産できる機械が導入され、幅広い地域で一定のクオリティの商品を提供できるようになり、ドーナツ人気が爆発した。全米規模のドーナツチェーンも登場し、アメリカ文化におけるドーナツの地位が確固たるものになった。
ポップカルチャーとの融合
　ドーナツは単なる食品としての役割を超え、アメリカのポップカルチャーとして定着した。映画やテレビ番組にしばしば登場し、「安らぎ」「軽食」「警察官のお気に入りスナック」の象徴となった。ポップカルチャーとの融合により、ドーナツはアメリカ人の精神に根付いていった。
グルメ革命
　近年のドーナツはグルメの域に達している。職人がエキゾチック系などユニークな味の組み合わせを研究しはじめ、質素なドーナツを煌びやかな料理へと昇華させた。この革命によりアメリカ人のドーナツに対する愛情が再燃した。
現代のドーナツの位置付け
　アメリカ人にとってドーナツとは、単なる甘いお菓子ではない。トッピングをはじめ自分好みのスタイルが確立されているほか、ワインやミルク、コーヒーなどドリンクの組み合わせにもこだわっている。また、健康に気を使う人は、焼きドーナツやアーモンド粉などの代替材料で作られたヘルシードーナツも選択肢の一つになっている。

インスタ映えするビジュアルも人気

まとめ

　ドーナツは長い歴史の中でアメリカ人の心に根付き、革新を重ねることで現在の地位まで上り詰めた業態です。その愛され方は目に見える以上のものがあります。そのため、今後は日本におけるドーナツビジネスの動向にも注目していきたいと思います。

Profile　藤田一郎
　上智大学国際学部および南カリフォルニア大学国際学部出身。1980年にI. Fujita International, Inc.を設立。1986年から米国フランチャイズ案件の日本導入事業に着手。2000年以降から日本フランチャイズ案件の米国導入事業及び加盟店開発を行う。米国のアントプレナー誌からExcellent Entrepreneur Awardも受賞。最も米国フランチャイズ事情に精通している人物として認められ、近年は、フランチャイズのグローバル化に貢献し、多方面で講演を実施。日本フランチャイズ及び小売企業の北米進出サポートやコンサルテイングを行っている。