【識者に聞く】第5次ドーナツブーム到来、複雑な流行背景
公開日:2025.01.06
最終更新日:2025.01.06
※以下はビジネスチャンス2025年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
新たに根付くにはミスドとの差別化が必須
昨今、ドーナツ専門店の増加やコンビニなどでのドーナツ販売など、ドーナツブームが到来している。この背景について、「ドーナツ探求家」としてメディアに多数出演する、イラストレーターの溝呂木一美氏に考察してもらった。年間500種類以上のドーナツを食べ歩く溝呂木氏が考える今後のドーナツ市場とは。
Profile みぞろぎ ひとみ
ドーナツ探求家・イラストレーター・グラフィックデザイナー。
“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。”というキャッチコピーを掲げ、国内外で年間500種類以上のドーナツを食べ、自身のブログや各種SNS、テレビやラジオ、雑誌、WEBメディア等でも情報を発信。主なテレビ番組出演歴は『マツコの知らない世界』『ラヴィット!』(TBS系)、『バゲット』(日本テレビ系)など。著書に『私のてきとうなお菓子作り』(ワニブックス)、『ドーナツのしあわせ 年間500種類食べる“ドーナツ探求家” の偏愛ノート』(イースト・プレス)、『ドーナツの旅』(グラフィック社)あり。
第3次ではなく第5次「生」が大きなテーマ
--現在、世間では第3次ドーナツブームとされ、ドーナツ専門店の出典が加速している状況です。
溝呂木 これについて私は、各種メディアで正しくは第5次ブームだと提言しています。WEB上の記事をベースに第3次ブームと広まっていますが、それは2000年代以降のブームに焦点を当てているからです。もっと古くから日本のドーナツの歴史を見ると、第5次ブームというのが適切だと考えています。
--これまでのドーナツブームの変遷を教えてください。
溝呂木 まず第1次ブームは、ミスタードーナッツ(以下 : ミスド)が日本に初上陸した1971年です。それまで日本では、ベーキングパウダーを使って家庭で作るドーナツが一般的でした。そこにミスドの登場で、イースト生地を使用したアメリカ式ドーナツが知れ渡ったのです。
第2次ブームが興ったのは、かなり時を経て2003年となります。ミスドが「ボン・テ・リング」の販売を開始して、大ヒットしたことが始まりです。第3次は、2006年の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の初上陸。第4次は2013年で、クロワッサンドーナツが世界的に大流行したことがきっかけでした。そして第5次が2022年なのですが、これが今までのブームと違い少し複雑な構造になっています。
--どのように複雑なのでしょうか。
溝呂木 まず第5次ブームが起こる前段として、マリトッツォのブームがあります。マリトッツォとは、パンにはみ出るほど大量のクリームを挟んだイタリアの伝統的なお菓子です。2021年に大流行し、その後、ボンボローニ、ベニエ、マラサダなど揚げた生地に生クリームを入れたお菓子がブームになりました。要はクリーム入りドーナツのブームがずっと続いているのです。
そして、2022年に「I’m donut?」がオープンし、生ドーナツが爆発的な人気に。そこから生ドーナツと称した商品が次々と登場し、第5次ブームが生まれたのです。
生ドーナツの定義が曖昧 日本人が持つミスド基準
--生ドーナツとはどのようドーナツのことを指すのでしょうか。
溝呂木 それがまた複雑で、生ドーナツの明確な定義がないのです。ブームの火付け役となった I’m donut?では、従来のイースト生地ドーナツよりフニャフニャとした生っぽい食感について、生ドーナツと謳っています。
しかし、このブームに乗じて生地の中にクリームを入れたドーナツを、生ドーナツと称して販売するお店も多数あります。その結果、大勢の人が中にクリームが詰まっているものを生ドーナツとして認識しているようです。また、中には生クリームを生地に練り込んだから生ドーナツと謳っている商品もあります。
今のブームは生ドーナツが牽引していることは間違いないのですが、「生」の解釈がバラバラで、製法が定まっていません。
--日本で根付き、人気となるドーナツ専門店の特徴を教えてください。
溝呂木 私たちはあまりにも長くミスドの影響を受けているため、ドーナツと聞いてまずミスドを思い浮かべる人がほとんどではないでしょうか。そのため、新しいドーナツ店がオープンすると、まずはミスドと比較して評価をされます。「こんなに高いんだったらミスドでいい」「この味だったらミスドの方がいい」など、SNSにはミスドと比較したコメントが多数並んでいます。ですから、絶対外せないのはミスドと比べてどんな魅力があるかということ。現在人気のドーナツ店は1個400〜600円が当たり前。それでも売れるのはミスドに比べて美味しい、買う価値があると思わせるからです。
--第5次ドーナツブームはいつまで続くと考えられますか。
溝呂木 参入する人が多いとどうしてもクオリティの低いものが広まってしまいます。この生ドーナツブームでも、単にドーナツにクリームを入れただけのものを何度も食べてきました。そのため今後、生クリームを強調した別のスイーツのブームが起きたら、生ドーナツブームは終焉を迎えると思います。どこまで続くのか私も注視したいですね。
お店が長続きするためには定番化が必須ですが、定番化するにはブームを乗り越える魅力が必要です。おやつだけではなく、朝ご飯や昼ご飯に食べられるようなドーナツであれば定番化するのではないでしょうか。もっと日本人の生活に入り込むドーナツが作られたら、長く愛されるのではないかと考えています。
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