【ウェンディーズ・ファーストキッチン】ウェンディーズとファーストキッチンのコラボ店拡大
公開日:2023.04.28
最終更新日:2023.05.25
※以下はビジネスチャンス2022 年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
53店舗から全国300店舗体制を目指す
1969年にアメリカで誕生したウェンディーズは、1980年にダイエー資本で日本に進出したものの、 2009年に撤退。2011年にドミノピザで知られるヒガ・インダストリーズと投資ファンドとの出資によって、ウェンディーズ・ジャパンとして再進出を果たした。2016年には、サントリーホールディングスが運営していたファーストキッチンもグループに加わり、現在の体制となった。同社の紫関 修社長は、ファーストキッチンの社長も兼任し、両社の成長戦略を描いている。
Profile しせき・おさむ
1961年生まれ。青山学院大学法学部卒。 1985年東急ホテルチェーン入社。97年日本マクドナルド入社。2013年フレッシュネス社長。16年8月から現職。千葉県出身。
ウェンディーズの再進出に際し、力を入れているのが、ファーストキッチンとのコラボレーション店舗だ。現在、単独店舗ではなく、「ウェンディーズ・ファーストキッチン」のダブルネーム店舗として53店舗。うちFC店舗は6店舗展開している。基本的に新店は全てコラボ店になるという。
2016年にFキッチンと合流既存店売上が1.5倍に
――現在、「ウェンディーズ・ファーストキッチン」の屋号で、コラボレーション店舗を展開しています。
紫関 2011年の再進出以降も、アメリカのフォーマット通りではうまくいかず、また撤退かという時に、サントリーさんの「ファーストキッチン」とのコラボレーション店舗の話がありました。そこで上野と六本木の2店舗を「ウェンディーズ・ファーストキッチン」というコラボ店にしてみたところ、売上が1.5倍になったのです。これを契機に、ファーストキッチンをグループ化した2016年以降もこの路線を続けています。
――アメリカの本部からはすんなりOKが出たのですか。
紫関 普通ならウェンディーズ単体でやっていきたいと考えるでしょう。しかし現実は、マクドナルド以外、なかなかアメリカのハンバーガーブランドは日本で成功していない。こうした状況で、ファーストキッチンが持っているアセットを使って、店舗を増やそうという経営判断だったのだと思います。一方我々も、ウェンディーズというブランドイメージをしっかり守りながら、店舗やメニューの開発をしています。
――売上はウェンディーズとファーストキッチンでどう分けていますか。
紫関 コラボ店舗の売上に関しては、ロイヤリティをウェンディーズに払っています。アメリカの本部からすれば、日本でウェンディーズを浸透させるためには、こうした施策が重要だと考えた。契約内容をかなりシンプル化していて、うちがロイヤリティ全て払います。その代わり、ダブルブランドで2つのロゴマークをつけてやっていいよ、ということですね。
――ただコラボ店舗はまだ認知度が高くない。
紫関 やはりファーストキッチンは45年の歴史がある。その看板を変えてウェンディーズと一緒になりました、とやってもまだ6年です。認知度を高めていくのは喫緊の課題です。
――コラボ店舗を始めて、単体の店と比べて客単価はどれくらい上がりましたか。
紫関 看板を変えた時に店舗売上130%を目標にしていましたが、多くの店舗で客単価が上がり、目標を達成しました。以前はファーストキッチンのバーガーは300~400円が中心で、ウェンディーズのバーガーは500~600円。そこでまず商品単価が上がりました。ファーストキッチンはどちらかというと女性のお客様が多かったのですが、ウェンディーズの冠をつけたところ、今度は男性のお客様が中心になりました。彼らはボリューミーなハンバーガーを召し上がりますので、おのずと客単価が上がりました。
――「ファーストキッチン」は単独で58店舗あります。これらの店舗は今後コラボ店になりますか。
紫関 コラボ店舗の方が効率的なものは変えますが、ファーストキッチン単体はまだ残す予定です。今後ファーストキッチンがどういうところに出店するのかも含めてやっていくので、全てが何年以内にコラボ店に変わるわけではない。一方で、ウェンディーズ単独での出店は考えていません。新店は基本的には「ウェンディーズ・ファーストキッチン」というコラボブランドです。
6年前より客単価アップ ローカライズした商品を開発
――コラボ店とファーストキッチン単店の商品は同じですか。
紫関 基本的には同じですが、コラボ店の独自性は持たせています。ウェンディーズのパティという肉の形は四角。でも我々が開発したメイン商品のクラシックシリーズは丸型です。あと、和の味付けをしています。クラッシックバーガーという商品で海老を入れたものはものすごく売れました。そういう点で特色を持たせています。
――これは日本だけの商品構成。
紫関 イメージとしては、アメリカの洋と、日本の和の両方が味わえる。ハンバーガーに関しては、多少手を加えたものもありますが、基本アメリカに近いものを作っています。コラボ店ではバーガーは2種類開発して、調達も2つしなくてはいけないので、2度手間がかかって大変なのですが、それを上手くマネージメントしています。ただやはり商品単価も高いので売上が高いのはウェンディーズの商品です。
コラボレーション店舗を始めて以来、業績が徐々に上向いたという同社。外国人観光客の取り込みにも成功し、2019年には再進出以降で、最高益を達成した。しかし、コロナの直撃により同社もまた大きな打撃を受け、戦略の転換を余儀なくされた。この2年間で進めてきたセットメニューとデリバリーが新たな売上の柱になりつつある。
男性客やインバウンド取り込むもコロナ過でサービス見直し
――コラボ店舗を始めてからの業績は。
紫関 最初の2年半は、ボリューミーなハンバーガーをちょっと高いけど居心地のいい場所でお召し上がりいただく、というコンセプトで展開しました。それは男性のお客様、かつマクドナルドでは物足りないというお客様を取り込んで、外国人観光客の方を含めて2019年はV回復の頂点でした。ただコロナの影響でもう1回立て直すこととなった。
――おのずと違う層にもアプローチしなくてはいけなくなりました。どのような施策に取り組んだのでしょうか。
紫関 デリバリーを積極的に行うことで、今では売上の20%近くまで占めるようになりました。
――メニューの見直しも行っています。
紫関 子供向けにジュニアバーガーという商品も本格的に始めました。昨年の12月からは、「GOOD PRICE SET」というのを展開しています。セット価格で500円、550円、600円のプライスラインです。これはまさにマクドナルドを中心としたファストフードのランチ時間帯の平均単価に近い商品で、ここに真っ向から打って出たのがこの商品です。これも非常に上手くいっていまして、売上の底上げに貢献しています。もう一つお店に来ていただく理由を作るた
めに、以前からやっていた漫画やアニメ、アイドルとのコラボレーションをこの2年は非常に強く打ち出しました。
――コラボをするとそのファンが店に来るようになる。
紫関 リピートに繋がっています。去年もアイドルとのコラボで大爆発して、1日の売り上げが200万円という店もありました。こういった施策を地道にやったことで、店舗によってはコロナ前の%以上まで売上が回復しました。
店舗のDX化を推進 顔認証システムの導入も
――コロナ禍をきっかけに飲食店ではDX化が進んでいます。御社の取り組みは。
紫関 私が2016年に入社した時にまず行ったのが、POSの入れ替えです。お客様視点で何かできないか考え、お客様が注文をご自身で打って会計をする決済システムを導入しました。
――当時は人材不足が大きな問題となっていた。
紫関 人材を置き換えて製造部門を抑えるのは難しい。抑えるとすればレジ。これをお客様自身に打ってもらうことによってうまくいくのではと思いました。お客様も今まで打ったことがないので難色を示すのではないかと懸念がありましたが、今後も進むだろうと開発し導入をしました。
――それが結果的にコロナ禍で、人対人の接触の点でもうまくいった。
紫関 最近ですと顔認証にもトライしています。将来的にはOne to One マーケティングができるんじゃないかなと思っています。たとえば顔認証があれば、アレルギーがあってマヨネーズがダメな場合、「あなたは前回マヨネーズ抜きですけど、この商品でよろしいですか」ということが自動でできる。
コロナ禍を経て、攻めの出店に転じている同社は、新たに新形態の店舗を投入する。ハンバーガー市場はマクドナルド一強が続いているが、同社はボリューミーでアメリカらしいハンバーガーと、和テイストの組み合わせにより独自のポジションを目指していく。紫関社長によれば、中期的には300店舗を出店できるポテンシャルを秘めているという。
市場内のブルーオーシャン狙う 朝昼晩の売上平準化進める
――今後の出店エリアや出店形態は。
紫関 先日オープンした店舗は、マクドナルドの居抜き物件です。居抜きのメリットは、投資額を抑えることができます。出店としてはこれがベストですが、なかなか空き店舗はない。どんな形で安く出店できるのかを考えています。
――その1つが最近話題になっている移設可能な店舗ですね。
紫関 直営店でトレーラー型の店舗を神奈川県に1店舗出店する予定です。移動可能なトレーラーであれば、ちゃんとメンテナンスをすれば箱として10年以上持ち、箱自体に資産価値が出ます。店を作ると、閉める時に現状復帰で内装・外装にもう1回投資しなければいけない。でもトレーラーハウスは、閉店する時に移設ができるメリットがある。
――ファストフードのハンバーガーの市場で、中期的にどういう立ち位置を目指していますか。
紫関 ポテンシャルとして考えたら、300店は十分できると思います。もちろんマクドナルドという牙城を崩すのは難しいと思っています。では当社はどのポジショニングかというと、ボリューミーでアメリカらしいハンバーガー。これは東京、大阪などの大都市だと食べるチャンスがあるけれど、それ以外のところでは気軽に食べられません。グルメバーガーと言われるカテゴリーのものは1500円、2000円しますが、それに近いクオリティーで1000円以内で食べられる。このマーケットは、まだ十分開拓できると思います。
――和洋折衷のメニューも独自ポジションを築いています。
紫関 当社はハンバーガーだけで勝負しているのではなく、パスタもあるので女性も来られます。今は和のデザートにフォーカスしています。6月には榮太樓さんと組んで白玉クリームあんみつの商品を作りました。そういった少し上の世代の人たちに対しても、昔あった甘味処のようなマーケットを作り出せる力があるんじゃないかなと考えています。
――甘味処なんかできると、朝昼晩でアイドルタイムがなくなりますね。
紫関 我々はアイドルタイムではなく、ティータイムと呼んでいます。その時間帯を我々はこういったデザートで埋めていく。
――1日どの時間に行っても、それぞれの時間帯の売りの商品がある。
紫関 何かしらその時間帯に応じてあります。300円くらいのハンバーガーなどは、お昼を逃した2時台に小腹が減った時に食べられる。さらに我々が強いデザートもさらに強化し、ユニークな商品を用意していく。あとは本格的に季節毎のパスタを用意していく。全時間帯に主力商品があるところに当社の特色があります。
和洋折衷メニューで独自ポジション築く 新規事業計画する企業の加盟希望が増加
開業資金は約4000万円から メガフランチャイジーの参加期待
――今後FC出店する場合の初期投資の条件、店舗の広さを教えてください。
紫関 ビルインタイプ40坪モデルで、加盟金、研修費、設備・機器など全て含めて5380万円。フードコートタイプ13坪モデルで、3920万円です。
――その場合の売上収支モデルは?
紫関 ビルインタイプで、月間売上1000万円の場合で、10%の利益になります。フードコートタイプで、月間売上700万円の場合、11%です。
――FCにはどういう企業の参加を考えていますか。
紫関 メガフランチャイジーで幾つかのブランドを展開されている企業さんへのアプローチを基本としています。鉄道系、バス会社さんなどにもアプローチしていきたい。事業の多角化をしていらっしゃるところでは、例えばコンビニやカー用品店をやられている方が外食もやりたいという方も増えています。
――ハンバーガー業界だとマクドナルドの一人勝ちで、そこに対抗軸が欲しいメガジーもいると思います。
紫関 都心でちょっといいハンバーガーを食べようと思ったら、もちろんウェンディーズもあるし、もっと行くと個人商店で2000円くらいの特色あるハンバーガーが食べられます。でも地方に行くと選択肢は限られてくる。そこにアメリカのボリューミーなハンバーガーを展開していく。東阪エリア以外にも、地方でドライブスルー店舗を展開していきたいと考えています。
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