【グラッド】鳥貴族カムレードチェーン21店舗を運営(前編)
公開日:2023.05.25
最終更新日:2023.05.25
※以下はビジネスチャンス2023年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
創業前の大倉忠司社長との出会いが契機
鳥貴族のカムレードチェーン(TCC)店を、関西15店舗・関東6店舗の合計21店舗を運営しているグラッド(大阪府大阪市)。同社を率いる松本健志社長は、大学卒業後サラリーマンを経て2002年に個人で創業、現在は全国のTCCの中でも有数の事業者となった。「人の喜びを我が喜びとしよう」という社訓は、鳥貴族創業者、大倉忠司社長との出会いと、大病を克服した経験によるものだという。
PROFILE まつもと・けんじ
1961年7月25日生まれ。大阪府出身。近畿大学法学部卒業後、石油関連会社に就職。いくつかの企業を経て2002年に個人で創業し鳥貴族カムレード店に。2004年にグラッドを設立。
会社員生活経て41歳で独立 近年はBARや貸別荘事業も
--鳥貴族のTCCは現在16社程ありますが、御社はその1社として関西を中心に展開しています。
松本 2002年に個人で創業しまして、鳥貴族単一ブランドで現在、21店舗を運営しています。東大阪市で鳥貴族瓢箪山店を開業したのを皮切りに、関西エリアで多店舗化を進めてきました。
--2012年には綾瀬店を開業し東京へ進出しました。鳥貴族チェーンとしては、比較的早く東京に進出しています。
松本 大倉社長も当時、関東への出店を積極的に進めていました。鳥貴族グループで1000店舗を目標にしていましたから。そのため関西のTCCが関東に進出するのを後押ししていました。関西圏は、直線距離で2キロ離れればOKと、ほぼフリー出店が可能でしたが、関東圏はエリアで棲み分けています。当社は綾瀬の一号店を拠点に埼玉まで広げています。
--フランチャイズチェーン事業としては鳥貴族単一ブランドでの展開ですが、近年はBARや貸別荘事業と領域を広げています。
松本 BARは人が集まる店を作りたいと考え開業しました。実際、学生が多く訪れるため、彼らの悩みや夢に触れ、時にはアドバイスをし、時には企業と学生を繋げるための架け橋になる場を提供しています。淡路島で運営している貸別荘事業は、「Loco Village(ロコヴィレッジ)」ブランドで運営しています。最大6名で中庭・テラスでBBQを楽しみながら、気軽に非日常を味わえる別荘です。もともと「コロナ禍でも人を笑顔にしたい。飲食業界にとって逆境の中でもチャレンジし続けたい。そんな姿をスタッフにも見てほしい」という想いから始めました。事業拡大はもちろんですが、社員の福利厚生にも活用し、従業員満足度の向上にもつながっていると思います。
--コロナ禍もようやく落ち着きを取り戻しつつあります。
松本 売上高はコロナ前で約16億円ありましたが、コロナによって半分以下まで落ち込みました。その間、確かに厳しい状況でしたが、店舗は閉店せず、時短協力金などでひたすら耐え忍んでいました。今期は12億円ぐらいまで盛り返せそうです。
大病を克服し人生観変わる 社会で役立つ人材育成に尽力
--御社は鳥貴族の本部ビル内にあります。それだけで大倉社長との関係性が深いことがうかがえます。
松本 このビルが13年ほど前にできたときに、大倉社長直々にお話をいただきました。今は当社を含め、TCC3社が入居しています。
--松本社長と大倉社長との出会いは30年以上前と言います。
松本 大倉社長がまだ独立前に働いていた焼き鳥店にいた頃からの知り合いです。彼が切り盛りしていた店に、お客として行っていたのが始まりでした。当時は大倉社長が25歳、私は石油関連会社に就職したばかりの23歳でした。
--松本社長はもともと常連客だったのですね。
松本 店長と客という関係でしたが、非常にウマが合いました。すぐに意気投合したのです。
--独立する時、すぐに声をかけてもらったそうですが。
松本 出会ってから1年もたたないうちに、大倉社長は鳥貴族として独立しました。その時に、自宅まで来ていただき、「一緒に日本一の焼き鳥チェーンを作ろう」と声をかけてもらったのです。「いずれ上場を果たし、飲食業界の地位を上げる」と熱い思いを語ってもらいました。
--ただその時は参加しなかった。
松本 大倉社長の言葉に非常に感動したのですが、母子家庭で育った私は、母親を説得できませんでした。結局その時はお断りを入れました。
--TCCに参加したのは18年後でした。
松本 その間、様々な職業を経験してきましたが、大倉社長とは年に1回は会っていましたし、お互い結婚式に行く仲で、その関係は継続していました。もちろん、その間も鳥貴族のことが気になっていました。
--参加を決意した決め手は。
松本 既に年齢も40歳を超えていましたし、結婚して子供もいましたが、このままやらないのは後悔すると思いました。特段飲食店も焼鳥屋もやりたいという訳ではありませんでしたが、大倉社長とは一緒にやりたかった。さすがに妻以外の周囲は反対しましたが、意を決して挨拶に行きました。大倉社長からは「ようやく来たか」との言葉をもらいました。
--松本社長がTCCとして参加した当時はどれくらい店がありましたか。
松本 まだ27号店でした。TCCとしての企業は4社目か5社目でした。ただ開業当時は自己資金が殆どありませんでしたので、最初は大倉社長に貸していただきました。
--2002年4月に一号店を開業させました。
松本 長くサラリーマン生活をしてきましたが、おいしい料理を提供して、お客さんに喜んでもらう仕事が自分にピッタリあっていた。いろいろ仕事を経験してきましたが、朝から晩まで働いても、楽しくて楽しくて仕方なく、こんないい仕事はないと感じました。
2002年に27店目としてオープン
--ただすぐに大きな試練が訪れます。
松本 ところがその年の年末にガンが発覚し、残り2か月の余命宣告を受けてしまったのです。人生これからと思っていた矢先のことでしたので頭が真っ白になりました。お店はアルバイトに頑張ってもらって、1年間に3回手術を受けました。おかげで奇跡的に一命を取り留めることができたのです。
--松本社長にとって大きな転換期になりました。人生観が大きく変わった。
松本 そんな経験から「もう一度命をもらったから残りの人生は人のために捧げたい」と強く思うようになった。
--2004年8月に2店目、その年末には法人化し、グラッドを設立します。
松本 「人の喜びを我が喜びとしよう」との思いで社名にGlad(喜び)と名付けたのです。そして、アルバイトも社員もどこに行っても「グラッド出身なら間違いない」と通用するよう、人の育成に力を入れたいと強く思いました。│社名のごとく、御社は理念経営を標榜しています。松本社訓のとおり理念型経営をまい進してきました。鳥貴族としてのマニュアルはありますが、当社の考えをスタッフに浸透させることに力を注いでいます。コロナ前は全て、アルバイトの面接も自分で行い、「うちの会社はどうで、こんなことを目指す」という話をしていました。
--アルバイトも面食らったでしょう。
松本 「お金を稼ぐだけだったら辞めなさい」と平気で言いますから(笑)。確かにその場では、彼らも「えっ」と驚きますが、かえって心構えができるようです。「その気になる」「いい接客をする」「伸びる」と、いい循環ができていると思います。実際、アルバイトから社員になってくれる人も多いので、社員の求人はほとんど出したことがありません。これは自慢ですね。本部からも信頼をいただいていると思います。
--人材育成には自信を持っている。
松本 600店以上ある鳥貴族店舗には毎月全店覆面調査が入るのですが、コロナ前の2019年にはサービス品質で第1位、2位、5位を獲得しました。それだけ優秀なスタッフを育てたという自負があります。これが自信になって、今後はそのノウハウを生かして、他の飲食店の立て直しも行いたいと考えています。
--社内評価も独自の指標を用いています。
松本 人の「成長」や「人間力」を重視した17段階の評価システムを採用しています。小さな成長でもランクアップを実感できるよう進めています。
「人の喜びを我が喜びに」理念型経営推進
【グラッド】鳥貴族カムレードチェーン21店舗を運営(後編)はこちら
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