【AZism】事業拡大に挑むフランチャイジー(Case 3)
公開日:2023.08.09
最終更新日:2023.08.14
※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
本章では、運営店舗数が店舗前後のフランチャイジーのトップインタビューを掲載する。これらの企業は既存ブランドの運営が安定し、今後は新規加盟などを検討して店舗数を増やす段階だ。メガフランチャイジー直前の企業に、店舗数拡大への道のりやブランド選定の基準を聞いた。
1965年生まれ。東京都八王子市出身。 1986年にエーゼット(現: AZism)を設立し、入社。1992年に代表取締役に就任。現在に至る。
加盟ブランド: カーブス、串カツ田中、ダンダダン酒場
新規事業の立ち上げは自社業態とFC加盟の双方を検討 ブランドの看板やノウハウに価値を感じ、加盟を選択
AZismは1986年に、自社業態のビデオレンタルショップで創業した。その後、ゲーム専門店やカードショップ、焼肉店やラーメン店などを立ち上げ、現在は自社業態ブランド、FC3ブランドで多角的な経営を推進している。
TSUTAYAの台頭 ゲーム専門店に活路
―御社はビデオレンタルショップで開業したと伺いました。
和田 父が創業し、私と弟が店を手伝うことになりました。しかし、父は営業中にずっとプロ野球を見ているだけで店も赤字でした。それを見かねた私が店を継ぐことにしたのです。まずは赤字の解消が問題でしたが、これは電気屋で売り子をしていた経験が活きました。前職では自分が惚れた商品だけを売り場に並べて、1個に集中して売ることで活躍していたので、1店でもつのジャンルに特化することにしました。店を継いでから1人で接客と帳簿付けをしていたため、客のレンタル傾向は把握しています。映像を観るユーザーの傾向として、映画は1本レンタルが多いのに対し、アダルトビデオは複数レンタル率が高く、客単価が高い。加えて、仕入れ値も映画の半値ほどです。これらの理由からアダルトビデオに特化し、その結果、店は繁盛し赤字も解消されました。
―しかし、ビデオレンタルショップは1993年に閉店されています。
和田 その頃、TSUTAYAさんが出てきたのです。品揃えが豊富な TSUTAYAさんは、投資額が2〜5億円。とても個人では太刀打ちできません。そこで私は別業態のゲームに活路を見出しました。当時は駄菓子屋にゲームが張り付けてあり、電気屋にはドラクエの行列ができているなど、ゲームが非常に盛り上がっていました。加えて、投資額予想は1000万円程度と個人ができる範囲内でした。そこで、創業3年目に立川初となるゲーム専門店を立ち上げたのです。後に衰退しますが当時は大当たりしました。
まずは本部の指導を実践 ブランド内で一等賞を目指す
―その後、輸入雑貨店や漫画喫茶、焼肉店と自社業態を拡大。2005年にカーブスジャパンと契約し、フランチャイジーとなりました。
和田 カーブスは当社の8業態目となります。さまざまな業態を展開する中で、次は個人資産を多く保有している団塊の世代に向けた健康ビジネスを立ち上げようと考えていました。そこで、当時日本に上陸予定だったカーブスの視察に行きました。その際、ビジネスモデルではなくカーブスのノウハウや看板自体に価値があることに気づき、加盟することにしました。これまで失敗なしで来たものですから、大胆にもカーブス10店舗の出店権を買いました。しかし、蓋を開けてみるとメンバーがなかなか集まらず、出店した4店舗で1億2000万円の赤字。会社倒産の危機に瀕し、未出店の6店舗の出店権を本部に売却しました。
―なぜ、カーブスは最初、上手くいかなかったのでしょうか。
和田 アメリカのノウハウで立ち上げたところ、集客が上手くいかなかったのだと思います。アメリカでは、肥満は自己管理ができない人だと捉えられるため、フィットネスの必要性が高いのです。対して、日本にはそのような風習がありません。そのため、日本本部は2年ほど掛けて日本独自のメンバーの集め方を確立しました。当社のカーブス事業も2年目から軌道に乗り始めましたが、それは私がFCのコツを掴んだことも関係しています。当時の私は成功続きだったこともあり、本部の言うことを聞きませんでした。メンバーさえ集めればよいという認識で、我流の運営をしていました。一方、本部は数百規模の店舗でテストを繰り返し、集客のノウハウを積み上げています。この失敗を契機に、経験値が高い本部の言うとおりに運営しました。すると、メンバーも集まるようになり、経営が軌道に乗りました。
このような経験から、成功するコツの一つは本部の言うことを聞くこと。自分の意志を反映させるのはFCブランド内で一等賞を取ってからだと実感しました。カーブスの場合、在籍数や一定期間に増やしたメンバー数などの切り抜き方があります。そこで一等賞を目指します。ちなみに、ダンダダン酒場のインナーキャンペーンは8回中7回連続、当社が売上1位を獲得しました。勝ちに向かって楽しむのが当社のマインドです。キャンペーン時は別店舗の社員を応援に回すなど、グループ全体で盛り上げています。
―御社は2013年に「串カツ田中」、2015年に「ダンダダン酒場」に加盟しました。いずれもFC募集開始初期に加盟されています。
和田 自社業態とFCともに、当社のビジネスには3つの共通点があります。一つ目は、時流に合っているか。二つ目は、専門性の高さ。そして、三つ目はお客の顔が見えるビジネスであること。
串カツ田中は、串カツに特化したチープな雰囲気が特徴の居酒屋です。当時、東京にはシャレた串カツ屋しかなかったものですから、これは来るなと思い加盟しました。ダンダダン酒場は、私が餃子居酒屋をやりたいと思って勉強していた際に出会ったブランドです。視察に行った際、店舗の造りやメニュー構成があまりにも突き抜けていて、自分で立ち上げるよりも加盟した方がよいと考えました。私は、1人から100万円をもらうビジネスよりも、100人から1万円もらえるビジネス、つまり、多くの人に喜んでもらいたいので、大衆性のある串カツ田中とダンダダン酒場はぴったりでした。
反対に、加盟しない基準もあります。ブーム性が強く、長く続かなさそうな業態や属人化し過ぎた業態です。当社は数々の業態を立ち上げてきましたが、焼肉店は閉店しました。その理由は肉の捌きが店長しかできず、店長不在の際にオペレーションが立ち行かなくなったためです。この経験から、職人を必要とするビジネスは高リスクなことに気づきました。そのためアルバイトでもオペレーションできる業態を選んでいます。
―アフターコロナとなった今、各業態の調子は如何ですか。
和田 飲食業態は今でも影響を受けています。平日9時以降に人が滞留していない状況で、二軒目に行く人が少なくなりました。コロナ下で、ダンダダン酒場は即座にロ イヤリティをゼロにしてくれました。〝粋で鯔背(いなせ)な〞を意味する「NATTY SWANKY」という社名の通り、粋な計らいだと思います。
カーブスは、成功軌道に乗ってからはずっと伸び続けていました。しかし、高齢女性がメインということもあり、コロナ下でメンバーが一気に退会しました。飲食と違い、補助金も出ず大変でしたが、現在はコロナ前の105%と売上は回復しています。
そして今、最も好調なのがトレーディングカードショップです。年前に始めた業態ですが、今期は過去最高の数字を叩き出しており、前期比150%の伸び率を誇っています。
当社は今後も、自社業態とFCで経営する方針です。時流を見て、多くの人に喜んでもらえる選択肢の中で、自分たちでやるべきビジネスなら自社業態で、FCの方が適していれば加盟しようと考えています。
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