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【フランチャイズ会議2024】成長中の外食ブランドによるトークセッション

公開日:2025.01.23

最終更新日:2025.01.23

※以下はビジネスチャンス2025年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

人手不足に負けないための取り組みについて語り合う

「フランチャイズ会議2024」で注目を集めたトークセッションの一つが「社員が成長する外食FCブランド 人材に困らず高収益を達成する秘訣」だ。日本では人手不足が年々深刻化しており、特に外食産業では人材難に悩む企業は多いと言われている。今回集まった3社には、人材採用や離職防止のための取り組みについて語り合ってもらった。本ページではその時の様子をお伝えする。(モデレータ:カチアリ 有村壮央社長)

社員が成長する外食FCブランド 人材確保を成功させる秘訣とは

一家ダイニングプロジェクトラムちゃん事業責任者 河島 義矩氏 1988年9月18日、千葉県生まれ。大学卒業後、㈱一家ダイニングプロジェクトへ入社。現在在籍14年目。主幹業態である博多劇場で統括マネージャ ーを務めたのちラムちゃんの事業責任者として1号店立ち上げから13店舗出店。また社内では新卒の研修担当なども兼任し今に至る。

モデレーター カチアリ 有村 壮央社長 1980年奈良生まれ。株式会社カチアリ代表取締役。大学を中退し飲食企業で就職した後、 23歳で株式会社アントレストを創業。居酒屋を13年間で13店舗展開するも限界を感じ事業譲渡し、2019年株式会社焼肉ライクを設立代表取締役に就任。5年半で93店舗展開。2023年に退職し、外食日本一の経営コンサルティング会社を目指す株式会社カチアリを創業。

有村 本日のセッションのテーマは「社員が成長する外食FCブランド 人材に困らず高収益を達成する秘訣」ということで、特に人材確保の取り組みについて皆さんとお話できればと思います。まずは、皆さんの事業内容を紹介したいので、簡単な自己紹介を河島さんからお願いします。
河島 私は、飲食店ブランドを多数展開する一家ダイニングプロジェクトで、新業態のジンギスカン店「ラムちゃん」事業の事業責任者を務めております。2011年に新卒で当社に入社して以来、ブライダル事業や上場に関わり、新業態の立ち上げにも携わりました。「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん(以下: ラムちゃん)」では、ジンギスカンを提供しています。ジンギスカンはその他の肉料理と比べてヘルシーなイメージがありますが、食べづらく苦手だと感じる人も一定数います。しかし、当店で提供している「塩〆熟成」肉は、熟成することにより臭みが無くなります。ジンギスカンのマーケットは全国にあると考えているので、それを踏まえて日本一のジンギスカンを目指しています。
 現在ラムちゃんは直営で店舗展開しており、今後FC展開を始めていく予定です。当社は、あらゆる人の幸せに関わる日本一のおもてなし集団というグループミッションを掲げていることもあり、どう人を育てるかということが学んでもらえるようなパッケージの設計に注力して、FC1号店出店を目指しています。
有村 御社は上場されている会社でありながら、役員や幹部メンバーがプロパーという素晴らしい特長があります。人同士の繋がりが感じられる「一家」という名前にふさわしい家族のような会社です。
 続いて、山口さんお願いします。
山口 DREAM ONのハンバーグ定食ブランド「君のハンバーグを食べたい」事業部の山口です。14年前に中途で当社に入社し、居酒屋や魚、焼肉やカフェなどのさまざまな業態に関わり、現在は「君のハンバーグを食べたい(以下: 君ハン)」事業の展開を行っております。2021年にランチ業態として初オープンして以来、現在は5店舗を展開しています。
 君ハンは、顧客の体験価値を非常に重要視しているのが大きな特徴です。特に、玄米から白米への精米を自社で行っているので新鮮な米を使っており、羽釜を使って短い時間で炊き上げることで食感の残る美味しいご飯を提供しています。そのほか、肉を自店で挽くことで鮮度の高いハンバーグを提供しています。提供の際にはソースやチーズを目の前でかけてシズル感を演出します。また、ほとんどの店舗がオープンキッチンで、臨場感と迫力を演出しています。掛け声が聞こえることで、楽しく食事ができる雰囲気を作ることができます。
有村 説明会に伺った際、君ハンのご飯へのこだわりの大きさを実感しました。肉で差をつけることが難しい分、ご飯にもこだわることで肉にもこだわっているはずだという連想が効いているように思います。
 最後に、中岸さん自己紹介をお願いします。
中岸 当社は、2004年に設立し、虎ノ門で炉端焼きのお店からスタートしました。本日は、当社が展開する気軽に普段使いできる天ぷら屋さん「天ぷらすずき(以下: すずき)」事業の話を中心にできればと思います。すずきは現在3店舗展開中です。コンセプトは普段使いできる天ぷら屋さんです。コの字型のカウンターがメインで、職人が揚げたてを提供するスタイルです。天ぷらは胃もたれしないよう、薄衣のあっさりとした味です。一方、カウンターには自家製の鶏そぼろを用意しており、こってりとした味も同時に楽しむことができます。
 また、当社はFC加盟もしており、現在焼肉ライクを9店舗運営しているので、加盟店側としての意見も出せるのではないかと思います。

チームの構築が離職防止の要 スタッフ同士の繋がりを重要視

アントレスト 中岸 孝介社長 1980年京都府出身。 2004年大学卒業と同時に上京し株式会社アントレストを設立、取締役に。2018年1月代表取締役に就任。魚串専門店や焼肉、天ぷら業態などの飲食店を都内中心に20店舗展開。

DREAM ON 君のハンバーグを食べたい 事業責任者 山口 光将氏 1982年生まれ。江戸川区葛西出身。高校卒業後飲食店に就職し、10年の経験を経て、2010年㈱DREAMONに入社。居酒屋、割烹、焼肉、カフェなどさまざまな業態に所属、2021年ハンバ ーグ事業部長に就任、2024年㈱君のハンバーグを食べたい社長就任。

有村 飲食業界では、人材不足に悩む企業は多いと思います。そこで、人材採用と離職防止が大きな課題となりますが、各社で取り組んでいることを教えてください。
河島 当社は新卒採用に力を入れています。理念を重要視しているため、理念や社風を感じてもらえるような会社説明会を行うことで採用に繋げています。具体的には、説明会の会場では代表の武長が必ず入口に立ち、学生に挨拶をします。幹部メンバーも同様に通路に立って案内をし、全員でおもてなしをして企業文化を伝えています。その成果として、年間50人ほどが新卒入社している実績があります。
有村 御社でチーム力を高めるために取り組んでいることはありますか。
河島 飲食事業部の従業員全員が参加する社内フォーラムを3月末に開催しています。1000人以上が会場に集まり、1年間の成績を競います。そこでナンバーワンを決めたり、学生アルバイトの卒業式を行ったりします。また、1年間頑張って働いたスタッフを表彰するイベントもあり、この舞台に立つことを目標にスタッフたちは日々店舗のKPIの達成を目指しています。日々の営業を振り返ることでスタッフ同士の絆が深まり、店舗で働くことが自分たちの居場所になるような雰囲気や文化作りができています。良いチーム作りや離職防止に繋がっていると思っています。
有村 続いて、DREAM ONさんですが、私が本社に伺った時に非常に歓迎されている雰囲気があったように感じました。やはり御社でも雰囲気づくりを重要視しているのでしょうか。
山口 当社にはカフェやバルなど複数の業態がありますが、それぞれの店舗の雰囲気を感じてもらうことを大事にしています。また、君ハン事業を約1年間展開してきて感じるのは、アルバイト採用の重要性です。君ハンは1店舗あたりの社員が1〜2人という少人数の業態なので、面接でアルバイトの採用率を上げることが肝になってきます。「ここで働きたい」と思ってもらうために、面接に来てもらった時の店舗の空気作りを大事にしています。清潔感は当然のこと、キャスト全員がしっかり挨拶をすることが大事です。この店で働きたいと思ってもらえる空気感で面接をすることが大事だと考えているので、人材採用のためにチーム作りは重要視しています。
有村 チーム作りを強化するために行っている具体的な取り組みはありますか。
山口 チームワーク強化としては、当社では笑顔・笑声・笑動に加えて、ニックネームで呼び合うことをしています。飲食店で、笑顔は非常に大事になるのですが、それに加えて声のトーンを上げて楽しそうにすることや、お客様と接する時は楽しそうな動きで働くことという話をしています。いつも笑顔で元気でいることで感謝され、感謝を伝えることでまた笑顔になる。そのような人が集まる店は居心地がよく、自然とお客様が集まります。
有村 御社では、社員に配っているバイブルがあると聞いています。考え方の幹となることが書かれているようですが、どのように活用しているのでしょうか。
山口 当社では「元気バイブル」と呼ばれているものを、従業員全員に1冊ずつ配っています。営業後、10〜15分のミーティングをするのですが、バイブルに載っているケーススタディやロープレを行い、話し合いの時間を設けています。理念や幹部の考え方を、従業員が自分自身の言葉で話すことができるようになる強みに繋がっています。営業後のミーティングで毎日共有することで、スタッフ自身の魅力でお客様を呼ぶことができる業態を目指しています。
有村 アントレストさんは人材採用のためにどのような取り組みを行っていますか。
中岸 当社では、評価制度をきちんと整えました。役職に対しての給料をしっかり明記しています。そのほか、労働時間を短くし、福利厚生を充実させました。中途人材の募集を掲載する際にも同様にしています。
有村 現場チーム強化のための取り組みはありますか。
中岸 当社の理念である「PASS THE HOT BATON」を体現するという意味で、バトンのようにサンクスカードを渡し合うことをしています。自分の番が回ってきたらまた次に渡していくイメージです。その他、スタッフのモチベーションを高く保つために積極的に新しい知識をインプットしてもらうことが重要だと思います。そのため、社外のことを学ぶために動画やレポートで新しい知識を得てもらっています。
有村 御社では新入社員が入社すると、社長が運転する車に乗って全店訪問すると聞きました。その間、会社やお店の歴史やどんな人が働いているかということを話すようですね。新入社員の不安を取り除くための顔合わせのようなイメージでしょうか。私はどちらかというと、効率を追い求めるタイプで、いかに生産性を高くしていくかということを考えて人とぶつかるので、それだけでは駄目だということを感じています。
中岸 私も昔は、辞めようとしている人に対して、去る者追わずという考え方でいたのですが、今の時代、そのようなわけにはいきません。そこで、辞めたい人に対しては私が1度直接面談をすることにしています。そこで話を聞くと、人間関係での悩みや、十分な評価がされていないと感じていることで離職を考えているケースが非常に多いです。対話をして改善することで、辞めることなく活躍し続けてくれるパターンもあるので、重要視しています。
有村 3社ともそれぞれ違いはありつつ、人同士の接点を非常に大事にしていることを実感しました。人と人との繋がりでお客様が来店する上で、やはり従業員がいかに心の繋がりを持っているかが大事ということですね。

顧客満足度を高めるためのKPI 人材教育に注力したFC展開

有村 先ほど、河島さんのお話でKPIの話題が少し出ましたが、具体的に見ているKPIを教えてください。
山口 基本的にはF/Lコストを中心に見ていますが、人件費に関しては比率ではなく時間数で見ています。そのほかはGoogleの口コミなどです。数字ではありませんが、ロスチェック表や清掃業務なども見ています。
有村 君ハンの渋谷店の Googleの口コミは1カ月で260件、点数は4.9点と驚異的です。非常に驚かされました。
河島 当社の場合は、店長のKPIというものを明確に設定しています。売上やコスト面などはマネージャーがメインで管理しているのですが、一番はやはり店舗でスタッフが元気よく接客することにあります。当社はお客様が帰る際に、今日いかがでしたかと聞いて確かめるという作業をしています。そこで好評だった場合には、次回以降お得になる200円の会員様のサービスへの入会を勧めています。この会員数や、Googleの口コミ数など、誰でも努力で向上可能な部分での数字をKPIの動きとしてマネジメントしております。
有村 最後に、今後の目標などを教えてください。
山口 君ハンでは熱々のごはん、熱々の鉄板、熱々のハンバーグを大事にしていますが、それには働く人間の情熱が熱々であることが不可欠だと思っています。お客様に対してどのようなテンションで情熱を表現するかは、業態ごとに異なると思いますが、店長やマネージャー、アルバイトリーダーなど、それぞれの立場で熱々の気持ちで運営できる業態を目指しています。
中岸 FCに加盟している側として、加盟店ではありつつも直営の気持ちで運営するということが一番重要だと思っています。FCでも直営でも、決めたことを愚直に成功させる気持ちというのは、現場の方にもしっかりと伝えていきたいと思っています。また、お客様が気軽にいつでも天ぷらが食べられるよう、店舗拡大していきたいと思っています。
河島 日本一のジンギスカン業態というものを掲げている以上、ジンギスカンを食べたことが無い人に届けたいという気持ちが強くあります。そのためにも、全国にラムちゃんを展開したいです。また、インバウンド需要も増加していることから、海外視察を通じて日本の食文化をもっと海外に広め、より多くの笑顔を作っていきたいです。

飲食店には従業員同士の心の繋がりが不可欠 コミュニケーション力で顧客の集まる店に

 

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