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業態別外食FC、コロナ禍を振り返る

公開日:2024.06.18

最終更新日:2024.06.18

※以下はビジネスチャンス2023年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

社会問題が市場に反映、コロナの影響は過去最大

【INDEX】
・コロナ禍の影響で大打撃を受けた外食産業
・フードデリバリーニーズの拡大で新たな文化が広がる
・業種別外食産業まとめ

 
 これまで外食産業市場はリーマンショックや東日本大震災の影響を受けて大きく縮小することがあった。しかし、2020年から猛威を振るった新型コロナウィルスの影響はそれまでの比ではなかった。2019年の市場規模は29兆円だったのに対し、2020年は18.2兆円まで縮小。日本フードサービス協会の調査開始以来、最大の下げ幅となった。
 外食産業はアップダウンの波が激しい業界であることを踏まえて、「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」を展開するロイヤルホールディングス(東京都世田谷区)は、外食事業・ホテル事業・食品事業のポートフォリオ経営によってリスクを分散させていた。しかし、同社の菊地唯夫会長はコロナ禍を次のように振り返る。「ポートフォリオ経営が機能しなくなるほどの大きな波だった。人流が途絶えたことにより機内食やコントラクト、ホテル事業の全てが壊滅的だった」菊地会長の言葉からも、コロナが未曾有の大災害であったことが伺える。

 コロナ禍で外食産業が大打撃を受けたのは明白だが、その中で業績を伸ばした業態もある。外食産業全体が落ち込んだ中、ファーストフードは伸びていた。ファーストフード業態が好調だったのは、コロナ禍の在宅ニーズにテイクアウト・デリバリーが合致したことが大きいが、デリバリー市場そのものが成長したことも大きい。
 これまでデリバリーと言えば、ピザや寿司などの大人数用のサービスで、個食にほとんど対応していなかった。しかし、単身者の利用も可能とするUber Eatsの登場で、デリバリーの利用者と利用頻度が急増。大人数用のデリバリーサービスを提供していたブランドも、単身者向けの商品を販売する流れが活発化した。
 外出自粛やテレワークの導入により、消費者の行動が劇的に変化したコロナ禍。そのため、飲食店の利用も繁華街立地から郊外立地へ、大人数利用から少人数利用へ、ディナータイムからランチタイムへと変化していった。なお、少人数短時間制の食事業態は比較的軽微な影響で済み、ラーメンやカレー業態は回復も早かった。

【喫茶業態】幅広いニーズに対応する業態、物販やワークスペースの確保を強化

 

 外食市場における喫茶は、セルフサービス式のカフェや喫茶店が含まれる。全日本コーヒー協会によると、喫茶店の数は1981年をピークに減少の一途をたどった。1981年には約15万5000店舗あったが、2016年には約6万7000店舗まで激減。ピーク時は個人経営の喫茶店が中心となっていたが、ファーストフード店やコンビニなどの競合の出現により、市場が奪われる形となった。
 日本フードサービス協会の調査によると、喫茶の市場規模は2015年から2019年まで1.1兆円前後で堅調に推移していた。しかし、2020年はコロナの影響で約8000億円まで縮小した。歓談の場や空き時間の暇つぶしに利用されることも多かったが、コロナ禍の生活様式の変化に伴い、こうした需要が減少し、市場規模にも影響を与えた。
 コロナ禍で喫茶事業者は物販やテイクアウト・デリバリーの強化を図った。コメダホールディングス(愛知県名古屋市)は2021年、アイスコーヒー2本とオリジナルトートバッグなどがセットになったサマーバッグを販売。2022年新春には、ドリップコーヒーやマグカップなどを盛り込んだ福袋を店頭で販売した。
 2020年4月には、健康増進法が全面施行された。同法は望まない受動喫煙を防止することを目的とし、オフィスや飲食店を含め、屋内が原則禁煙となる。喫煙には、事業者の分類に沿った喫煙室の設置が必要とされ、喫煙者が多い傾向にあるオフィス街立地の喫茶店は、特に深刻なダメージを受けた。これを受け、C‐United(東京都港区)は、同法の規制に対応した喫煙目的店舗「THE SMOKIST COFFEE」を立ち上げた。同社は、喫煙者が特に多かった店舗を同ブランドへ業態転換を図ることにより、新たな商機を獲得した。

▲喫煙者率の高い地域のベローチェをTHE SMOKIST COFFEEに業態転換

【居酒屋喫茶業態】昼と夜で客足の水準が異なる

 

 コロナのダメージが最も大きかった居酒屋業態。2019年と2020年を比べると半減になるまで落ち込んだ。各自治体による時短要請により、メイン売上となる20時以降の営業中止を余儀なくされた。2022年はコロナ関連の規制が緩和されたが、夜間の外食と大口宴会需要が回復せず、売上高は46.7%とコロナ前の半分以下に留まっている。
 しかし、コロナ禍で居酒屋が軒並み落ち込んだわけではない。「Di PUNTO」は洗練された空間と斬新な提供方法で若い女性の支持を獲得。若年層は酒類を提供する飲食店への復帰へも早く、同店も早い段階で客足が回復した。運営会社のプロントコーポレーションは、2021年にPRONTOの大幅なリブランディングを行い、夜はネオ大衆居酒屋に寄せた、キッサカバへと生まれ変わった。昼と夜の双方を主力とした同店は、主に人通りの多い繫華街に出店。人流が活発化した今、リブランディングの真価を発揮する。

▲洗練された空間デザインのディプトン

【すし居酒屋業態】テイクアウトの需要高まり売上に貢献

 

 寿司の業態はさまざまで、握り寿司や回転すし、最近では寿司居酒屋も続々と登場してきている。外食の中でもとりわけ人気の高い寿司は、外出自粛でも、他業態に比べて売上は好調に推移した。日本フードサービス協会の調査によると、寿司の売上はコロナ前と比較して、2020年は93.7%、2021年は99.1%、2022年は99.6%とほぼ横ばい。多くの寿司屋はコロナ以前からテイクアウトを実施していたことから、巣ごもり需要と相まって、テイクアウト売上が好調だった。
 回転すしをはじめ、コロナ以前より市場拡大してきた寿司業態だが、FC展開するブランドは数少ない。それは、衛生管理の厳しさとサプライチェーン構築の難しさに起因する。生魚を使用するため、保存方法や食材の併用禁止などを定める必要があることから、飲食初心者には参入ハードルが高い。また、サプライチェーンは一定の品質をクリアした魚類を大量かつ安く、全国に供給する必要がある。スタートアップ企業が構築するのは難しい。
 その中、スシローグループのFOOD&LIFE INNOVATIONS(東京都千代田区)が展開する「鮨酒肴杉玉」は、2019年にFC展開に踏み切った。居酒屋業態をとる同店は、寿司のほかおつまみも充実させる。リーズナブルな価格を実現するため、スシローで購入した寿司ネタで、端材となる部分をつまみにアレンジするなど、グループの強みを生かしている。コロナ下では、酒類提供制限による売上減少はあったものの、寿司業態が機能し、客足の大幅減少は抑えられた。ウクライナ侵攻に伴うロシア水産品の禁輸やガソリン価格高騰による物流費の上昇などにより、寿司業態も価格改定を余儀なくされている。これまでロードサイド中心に展開していた回転すしは、ターミナル駅に小規模店舗で出店。これにより、新たな客層を掴み始めている。今後の盛り上がりに期待できそうだ。

【居酒屋業態】独自のモデルや強みを持つブランドが成長

 

 コロナの影響で居酒屋業態が苦戦を強いられた。その一方で、焼肉の売上高は(2019年対比)、2020年89・1%、2021年77・5%、2022年97・6%と比較的好調だった。その理由は寿司と同様、消費者の潜在的な人気を持つ食事という点で選ばれてきたからだ。その
なか、過去3年間で約80店舗の増店に成功した居酒屋業態のブランドがある。それがときわ亭だ。
 ときわ亭は仙台ホルモンをメイン商品とし、全卓にレモンサワーサーバーを完備。おかわり自由のサーバーとタッチパネル注文により、接客を減らした非接触型の運営スタイルを採る。居酒屋×焼肉業態であったこともあって、コロナ禍の行動様式にマッチした。
 居酒屋をはじめ、コロナで大きく影響を受けた業態は、従業員の雇用継続が厳しい状況に陥った。雇用調整助成金など政府による雇用政策もあったが、パート・アルバイトが転職するケースも多く、Go To トラベルなどで客足が急増した際も人手不足で対応できず、多くの機会損失が発生した。しかし、人手を最小限に抑えたときわ亭の運営スタイルであれば対処可能だ。収益性も高い同店のビジネスモデルは、アフターコロナでの躍進が期待できる。

▲全卓にレモンサワーバーを完備

【ラーメン業態】立地や業態によって業績に差

 

 世代を問わず人気が高いラーメン店は、繁華街や商業施設、住宅街やロードサイドなど、さまざまな立地に出店している。都心部は、比較的小規模でカウンター席のみの店舗が大半で1人客が多い。夜食需要も高く、深夜または明け方まで営業している店舗も珍しくない。一方で、郊外やロードサイドに構える店舗は、テーブル席やボックス席を備えた中・大型店舗でファミリー利用も増える。このように、ラーメン店は立地によって客層が異なる。
 日本フードサービス協会によれば、ラーメン店は「ファーストフード(FF)麺類」と「ファミリーレストラン(FR)中華」に分類されるという。前者は短時間滞在の少人数利用、低単価の業態、後者は複数人・食事利用の業態を指す。FF麺類の売上は、コロナ前に比べて約78%に落ち込んだが、FR中華は90%前後に留まっている(右表参照)。
 主に都心部や繁華街に展開するFF型ラーメン店は、外出自粛の影響を強く受けたことに加え、深夜の売上が時短営業により消失したことで売上が減少した。
 一方、FRに属するラーメン店は客席間に余裕があり、郊外は感染状況が比較的穏やかだったことから、客足が微減で済んだと考えられる。
 2022年にはFF麺類は86・6%に回復し、FR中華に至っては102・9%とコロナ前の売上を上回っている。今後も売上は回復に向かうと見込まれるが、原材料高騰の問題も見過ごせない。スープに多くの食材を使うラーメンだが、消費者には「1000円以下の手頃な食事」という認識が根付いている。ラーメン事業者は、値上げの妥当性を消費者に発信するな
ど、ラーメンは安いという認識を払拭する取り組みが必要とされるだろう。

▲コロナ下でも健闘したラーメン業態

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