【ハローストレージ】レンタルトランクルーム最大手、全国10万室
公開日:2024.08.03
最終更新日:2024.08.05
※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
データ戦略で稼働率89%、29年までに出店倍増へ
ハローキティが目印のレンタルトランクルーム、「ハローストレージ」を全国に10万室以上展開するのがエリアリンクだ。出店室数ならびに売上規模は国内最大手。独自のデータ戦略により、稼働率と出店スピードを上げている。5年後の2029年までに、足元から倍増となる20万室出店を計画している。
Profile すずき・よしか
1986年生まれ。2011年のエリアリンク入社から、現在までストレージ事業に携わる。2016年、同社取締役ストレージ本部運用担当本部長兼東京オフィス長兼千葉オフィス長に就任。23年3月28日より代表取締役社長。
「コンテナ型」7万9000室
エリアリンクの2023年12月期売上高は224億6300万円。そのうち78%をトランクルームの事業(ストレージ事業)が占める。営業利益では、同41億5500万円の85%を同事業で稼ぐ。ほぼトランクルーム事業に特化した事業形態だ。
トランクルームにはコンテナ利用式の他にビルイン型や専用建築型もあるが、同社が運用する10万室以上のうち、約7万9000室(2024年4月時点)が、20フィートコンテナを利用したタイプだ。郊外や地方都市を対象として、50〜150坪程度の土地の一帯にコンテナを5〜30本程度設置している。
「レンタルトランクルームを利用するお客様のほとんどが荷物を車に乗せて来るため、駅チカのような好立地である必要がありません。そこで、駅から遠いことなどが理由で、月極駐車場やコインパーキングなどでの活用が難しいとされる土地を積極的に選んで出店しています。また賃貸住宅建設などに不向きとされるような、土地の形状がL字やウナギの寝床のような場所であっても、コンテナの組み合わせ次第でレイアウトが自由に利くため、出店が可能になります」(鈴木貴佳社長)
コンテナ型で出店する場合は、同社が地主から土地を借り上げ、そこにコンテナを設置する。コンテナ型の広さは主に1.5帖〜8帖。利用料金は、例えば東京23区の1.5帖サイズ場合、月額平均約1万3000円、最低2600円〜最高3万4300円。稼働率85%で見て、利回り約18%を基本モデルとしている。
出店地域の構成は一都三県が6割近くを占めるが、全国に拡がっている。昨年10月には沖縄に出店し、47都道府県への進出を果たした。
利用契約者は8万人以上(2024年4月時点)に及んでおり、利用用途は多岐にわたる。
「クリスマスツリーやスキー、マリンスポーツ、キャンプ用品、タイヤなど季節物の収納によく使われています。また、家の引っ越しや建て替え、リフォームの際に一時的に荷物を預けている方も多くいらっしゃいます」(鈴木社長)
同社の調べによると、国内のトランクルーム市場は約800億円で、トランクルームの数は約60万室。事業者数は409社にのぼるが、地域限定の中小事業者がほとんどだ。シェア約17%でトップの同社を含め、上位3社で市場の約3分の1を占有しているという。
「地方・郊外にコンテナ型で展開する当社としては、都心にビル一棟型で展開する競合企業とは、初期投資の面などでビジネスモデルが異なります。また、同じく地方・郊外でのコンテナ型展開の企業と比較すると、当社の基本料金は高めですが、当社では巡回清掃の企業と提携しており、綺麗さも強みです」(鈴木社長)
ストックビジネス主体へ構造改革
エリアリンクは1995年の創業。創業から間もない1999年、空地に収納用コンテナを設置し賃貸する事業を開始した。これが現在のハローストレージの源流だ。しかし、当時はレンタルトランクルームによるストックビジネスが主力事業ではなかった。
2002年に同社所有の土地建物で不動産運用サービス事業を開始したのを皮切りに、ビル等の不動産売買を事業の中心に据えていった。2003年8月に上場を果たすと、その後は売上を年間100億円、200億円と伸ばし、2007年12月期には過去最高売上となる302億6000万円を記録するまでに急ピッチで成長を遂げてきた。
ところが、2008年にリーマンショックで大きな赤字を負うや、一転、業績は急降下。2008年12月期は79億7500万円の最終赤字となった。その後も2012年まで5期連続減収となり、売上は2012年12月期に101億2400万円まで落ち込んだ。
業績どん底から活路を見出したのが、土地有効活用の利回り商品としてのコンテナの販売だった。レンタルトランクルームとして運用しているコンテナを販売するというもので、投資家や節税対策の措置を講じたい企業向けに売り出していった。投資家向けに提案した利回りは約10%。さらに当時、コンテナは3年程度で減価償却ができ、多額の経費を計上できることにメリットがあった。このおかげでコンテナ販売が好調に推移。2019年12月期に過去2番目となる293億3300万円を売り上げるまでに成長した。しかし今振り返ると、当時の一見〝好調な販売〞には無理があった。
「一番売っていた2016年から2018年の3年間には3万室を出店しました。当時はとにかく売上・利益を作るために、とにかくたくさん出店していた。つまり、売るために出店していたのです。だから正直に申し上げて、埋まらない可能性があっても出さないといけない状況でした」(鈴木社長)
2015年頃までは稼働率は85%を維持していた。だが、2016年以降急激に出店を重ねた結果、2017年には73%まで低下してしまっていた。潮目が変わる出来事が起きたのは、まさにその直後だった。「行政からコンテナの税務処遇を否認される例が相次ぎました。コンテナについて、『器具・備品』ではなく『建物』としての耐用年数を償却年数として適用すべきだという内容でした」(鈴木社長)
この結果、短年数で減価償却できるメリットが失せてしまった。同社ではかつてのコンテナ販売先から買い取りを望まれ、これに1件ずつ対処せざるを得ない事態に陥ってしまった。最終的に2019年12月期は特別損失59億円まで膨らみ、最終赤字となった。また短期での減価償却ができなくなったことで、新規のコンテナ販売が困難になった。
コンテナの販売による売上は2018年12月期の118億6700万円をピークに、以降は大幅に縮小した。2023年12月期には7億5500万円まで下がっている。
その一方で、レンタルトランクルームによるストックビジネスを中心とする構造改革に踏み切った。さらに、稼働率を意識した出店戦略へと舵を切り替えていった。
三菱総研とデータ分析のプロジェクトを組み、人口、世帯数、所得層等のデータベースから出店戦略を導き出して、出店室数や価格などの精度向上を図るようにした。集客面においては、インターネット上でSEOを強化するほか、リスティング広告などを用い、自社サイトに呼び込んで利用者を獲得。こうしたマーケット戦略が功を奏し、構造改革への着手以来約3年をかけて稼働率を飛躍させた。現在の稼働率は既存・新規合わせて89%という状況だ。
「出店してから黒字化の目安となる稼働率60%程度に達するのが、以前は14〜15か月程度でしたが、昨年には5か月程度にまで短縮されてきています。ストックビジネスにシフトしたことで、業績が安定するようになりました。また、最近ではコンテナ型の出店資金における銀行からの借入がしやすい状況にもなりました」(鈴木社長)
この間に自社保有のレンタルトランクルームサービスによるストック売上は成長を続け、2023年12月期には166億6800万円まで拡大。販売とレンタルによるストック売上構成は様変わりしている。
今後7年間で10万室程度出店
トランクルーム運用によるストックビジネスに経費資源を集中させていく一方で、その他の事業については比率を下げている。同社の事業セグメントには現在、ハローストレージの事業のほか、「土地権利整備(底地)事業」がある。しかし、売買事業であるため、売上構成割合を低減させている。また、ビルの空室を活用した時間貸し会議室の事業なども展開していたが、コロナ禍が影響して事業を終了させ、構造改革期の期中に選択と集中を図った格好だ。
また一連の構造改革に伴い、社内の人事体制も整備を図った。事業転換により、一時期120人以上いた社員数は、70人台にまで下がるなど、構造改革期の離職率は各年40%前後あった。しかし、教育制度の改革や仕組み化を図り、足元では従業員数を80人程度まで戻している。
今後の成長の柱は、やはりハローストレージだ。まず出店室数目標には、2029年までに足元の10万室から倍増となる20万室を掲げている。鈴木氏は海外の事例を引き合いに、日本におけるトランクルーム利用拡大の可能性について、こう言及する。「当社調査によれば、アメリカでは総世帯の10%、イギリスでは5%がトランクルームを利用している一方、日本ではまた1%程度に過ぎません。今国内にはトランクルームが60万室あるとわかっている中で、ここから最低2.5倍は増やせると見ています。在宅時間が増えたことで、荷物を整理して外に出したいという需要も増えていますので、まだ利用したことのない潜在需要を掘り起こせると思っています」(鈴木社長)
また、新しい出店の手法として注力しているのが、「パートナー制度」だという。例えばレンタルトランクルームを5〜10物件程度展開している小規模事業者で、事業承継や運営面で困りごとがあればエリアリンクが運営代行するというものだ。
「看板はハローストレージに変えさせていただきますが、売上の90%を事業者にお返しします」(同氏)
同社では現在、2025年を最終年度とする中期経営計画が進行中。2024年には1万400室、2025年には1万4000室の新規出店を各年で目指す。また25年には売上高281億円、営業利益55億円を計画している。
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