【ホスピタリティ&グローイング・ジャパン】本部ごとに教育内容が異なるため一貫した自社教育制度が必須
公開日:2023.08.18
最終更新日:2023.08.18
※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
1956年名古屋市生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学在学時から日本マクドナルドでアルバイトをはじめ、1979年に入社。「ハンバーガー大学」学長を務め、全スタッフ15万人の教育制度を構築。 2003年株式会社ファーストリテイリングに招かれ「ユニクロ大学」部長に就任。 2012年、株式会社ホスピタリティ&グロ ーイング・ジャパン設立。
日本マクドナルドやファーストリテイリングにて、人材教育の責任者として携わった有本均会長がそのノウハウを提供するコンサルティング会社。チェーン展開を行う企業のコンサルティング実績も多い。
DX促進だけでは不完全少数精鋭を謳える組織に
—コンサルタントのお立場から、改めてFC本部とフランチャイジーの役割分担についてはどう考えていますか。
有本 本部は業態開発。ビジネスモデルを決めて、運営のマニュアルやルール、基準をまとめ、直営でモデル店舗を作っていくことです。成功のためにあらゆる基準を構築しておくことが求められます。
一方フランチャイジーは、本部が作った基準を100%徹底することからスタートします。そしてモデル店舗以上の運営をして拡大していくのが、目指すところです。本部も千差万別ですから、本部が作った基準や教育の仕組みを見ながら、不足している部分は自分たちで補っていくことが必要です。
—やはり、本部が作成するマニュアルでは足りないものですか。
有本 本部に100%頼るのは厳しいでしょう。加盟するのであれば、足りない部分は自分たちでやるべき。100%の仕組みをもらえると期待しても無理です。中でも不足しているのが教育の仕組みと評価制度。これらはオリジナルで作ったほうがよいでしょう。
—教育の仕組みが足りないと気付いたフランチャイジーが御社に研修を依頼しています。実際、どんな相談が多いですか。
有本 オペレーションについては、本部それぞれでマニュアルがあります。ですから、それ以外の部分での相談がほとんどです。具体的には、リーダーシップや店長教育で必要なマネジメントスキルやリーダーシップ、コミュニケーションや部下育成など。多くのフランチャイジーが、人に関わる面での悩みを抱えていることが分かります。
—こうした点を自社で制度化していくわけですね。
有本 フランチャイジーを営む企業は複数業態を運営しているところがほとんどで、それぞれの本部によって教育内容が違います。そのため、一貫した教育制度とマネジメントスキルを作る必要があります。各本部は実務的なプログラムはありますが、人の部分は「加盟店でやってください」というケースがほとんどです。
また業種限らず、アルバイトを何人も雇って運営する場合、育成やコミュニケーションはとても重要になります。こうした人間的な部分の教育をしている本部はごくわずかです。やっていたとしても、研修費用が必要となり、参加するかは加盟店に委ねているのが現状です。
—とはいえ、ノウハウのないフランチャイジーでは、人材育成は我流で属人的になってしまいますね。
有本 そうです。属人化が一番よくありません。人材育成には仕組化が重要であり、人を辞めさせないで育てるために整備すべきは教育・評価・労働環境の3点です。労働環境について言えば、最適な労働環境は待遇改善(労働時間・休日・給与)の点です。労働時間に関しては、一人当たりの時間を減らしているのに人が足りないという状況です。
—最近ではサービス業を中心に、ロボットを導入する店舗が増えてきました。
有本 省レイバーツールを入れて労働時間を減らしていくのは避けられない流れです。しかし大きな問題もあります。ロボットを入れて人を減らし、QSCが上がれば問題ありませんが、実際にはQSCが低下する店舗が少なくありません。理論的には労働時間は減らせますが、少人数のため、1人でカバーする範囲が広がります。ロボットができる範囲は限られていますから、スタッフが同じ能力のままだとQSCは落ちます。これに対応するには、スタッフを少数精鋭にすることが求められます。
店長を目指さない人の教育が今後のカギ
—今は人が採用できず、優秀でない人でも採らざるを得ないという声を聞きます。そこから教育し、辞めないようにしていくことが重要ですね。
有本 採用の基準は確実に下がっています。20年前なら採用しない人材でも、今は採用しているのが実情です。今後も採用基準が上がることはないでしょう。そのため、戦力化して辞めさせないために、教育のニーズが高まっていきます。経営者は人を減らしたら単純に教育の時間も減ると考えがちですが、それは大きな間違いです。むしろ先ほど申し上げたように、少数精鋭にするために教育時間も増やさなければなりません。
—どのように教育していけば良いのでしょうか。
有本 大切なのは気配りできる人、人間力がある人を評価すること。サービス業は数値だけで評価するところも多いですが、それでは将来的に厳しくなります。なぜなら、根本は人間力が重要視されますから。たくさんの人がいて、その中にはパートやアルバイトもいます。サービス業を営む上で、パートやアルバイトは欠かせません。そのことを若いうちから教え、評価していくことが大切です。
中でも副店長は、店長以上に気配りが必要です。入社後、そして店長になる前から必要となる知識やスキルは、仕組化して教育していくべきです。
—昇給についてはどうですか。
有本 今の会社を立ち上げてから気づいたのですが、店長になりたくない人が結構います。それまで私自身がマクドナルドやユニクロの在籍時に作った仕組みは、「頑張れば店長になれる」「エリアマネージャーになれる」「営業部長になれる」という、誰もが店長を目標に仕事をしていることが前提のものでした。
しかし今の世の中、店長にならなくても一生懸命仕事している人はいます。今後はそのような人たちがモチベーションを上げていくような仕組みを作り、教育しなければなりません。専門性があり、リーダーシップがなくても会社に貢献している人をどう評価するか。店長にならなくても給料が上がっていく仕組みは絶対に必要になっていくと思います。
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