【一般社団法人リノベーション協議会】新築至上主義からの脱却を目指す
公開日:2023.11.28
最終更新日:2023.11.28
※以下はビジネスチャンス2023年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
中古を住宅取得の選択肢の一つへ
2009年に設立したリノベーション協議会は、不動産やハウスメーカー、リフォーム業者などリノベーションに関わる事業者が横断的に集まった団体だ。同団体は、リノベーションによる既存住宅流通の活性化を目指しており、広報活動を行うほか、適合リノベーションの品質基準を定め、技術水準や品質の向上を図っている。同団体の内山博文会長に、中古リノベ市場やビジネスの特徴について聞いた。
PROFILE
1968年生まれ愛知県出身。リビタ所属時の2009年、現リノベーション協議会副会長を経て2013年より会長。2016年 u.companyを設立し独立。同年、Japan. asset managementの代表取締役に就任。2019年エヌ・シー・エヌ社外取締役。 2021年よりつくばまちなかデザインの代表取締役に就任。
中古住宅のメリットは自分らしい暮らしの実現
--建築資材や人件費の高騰から、近年はリノベーションの注目度が非常に高まっています。リノベ市場はどのように形成されてきたのでしょうか。
内山 リノベ市場は、リノベーション協議会が設立された2009年を契機に発展しました。欧米では中古住宅の流通が8〜9割あるのに対し、日本は1〜2割しかない新築至上主義の状況でした。しかし、2000年頃になって、「2040年には空き家率が30%を超える」といった空き家問題が報道されるようになりました。それ以降、業界の一部プレイヤーが新築を作る必要がないことに気づき始めたのです。次第に、多くのストックを持っているにも関わらず新築を作り続けることに問題意識や課題意識が生まれました。こうした経緯を踏まえて、リノベーションやリフォームにシフトした形で住宅供給できるようにするため、協議会が設立されました。
--当時、中古住宅はどのような層に供給されていたのですか。
内山 新築を買えない層です。当時、買取再販のマーケットはかなり偏っており、築30〜40年の旧耐震のファミリー物件に表面的なリフォームを施し、新築よりも安い価格で販売していました。「家賃を払うより中古を買った方が安いよね」という訴求方法です。この現状を打破するべく、協議会はリノベーションの魅力を発信してきました。
中古住宅のメリットを一言で言うと、自分らしい暮らしができることです。都内で住宅を購入する場合、ほとんどが建売か新築マンションの二択となります。注文住宅はそれなりに資本力がないと建てられません。一方、中古住宅はインテリアやデザインをカスタマイズしても3000〜4000万円で自分が住みたい暮らしを実現できます。さらに、購入時点から10〜20年後の下落率は新築より低い傾向にあります。そのため、無理なく住宅を取得し、資産として維持できるのです。
--新築と中古の供給バランスはどのようになっているのですか。
内山 現在、首都圏で1年間に取引されるマンションは50%が中古になっています。新築の供給が減ったことも一つの要因ですが、住宅取得において中古が選択肢の一つとして捉えられたことを意味しています。中古の流通量が増える中で、固定金利を含めて価格も上昇してきており、ようやく正常な状況になってきました。新築の供給次第では7〜8割が中古になることもあり得ます。あとは、戸建の市場をどこまで開拓できるかにかかっています。
--マーケットの現状は。
内山 2012年以降、相場はずっと右肩上がりでした。2021年4〜6月は、買取再販の在庫が激減しました。在庫が一掃されるくらい売れる中で、プレイヤーも消費者が家を買うという思考になったのだと思います。しかし、その時の感覚のままでいたら、今は上手くいきません。現在は、徐々に在庫が増えてきており、物件の平均価格帯も上昇してきています。市場はまさに調整期に入っていて、今後は売れるものと売れないものが二極化していくでしょう。売れないものは、価格が上がりすぎたことで簡単には売れなくなり、最終的には価格が下落することも考えられます。
リノベビジネスの肝はユーザー目線を保つこと
--リノベーションビジネスの特徴は何だと思いますか。
内山 リノベーションは、不動産と建築のノウハウを併せ持ったビジネスだと考えています。お客様の理想の住宅取得を叶えるには、スキルやノウハウ、人の連携が不可欠となるため、異なる会社同士で実行するのは難しいと思います。調整期に入った現在、数だけ売れれば良いという時代ではなくなりつつあり、ユーザー目線でのモノ作りや商品企画、マーケティングが必須となります。その点、不動産業よりも建築業の方が参入しやすいでしょう。建築業は、お客様の暮らしを考えたモノ作りの視点を持っています。対して、不動産業は仲介において売主目線や自分本位な部分があり、ユーザー目線になりきれないところがあります。リノベーションビジネスで重要なのは、会話のエージェントになることです。お客様の満足度を高める仕組みをどうインストールするか、コロナ前後から急速にプレイヤーの考えが変わりましたね。
--協議会が目指す市場の形を教えてください。
内山 協会のビジョンは既存住宅の流通活性化です。住宅取得において中古住宅が当たり前の選択肢になることを、一つのゴールとしています。協議会は、中古住宅が如何に合理的かを理解していただく活動を手掛けてきました。その結果、エンドユーザーのリノベーションの認知度が設立時は2割だったところ、今では9割まで浸透しました。つまり、中古に対する嫌悪感や懸念が薄れ、新築と変わらないレベル、あるいは新築以上の魅力があると理解されるようになりました。
一方で、業界内では未だに新築を作り続けている気風があります。売りやすいから新築を建てる、という理由です。こうした業界内のマインドを変えていかないと、これ以上、市場は変わらないと感じています。協議会としては、皆さんが正しい情報や知識を持ち、「中古で良いものは正しく評価される、新築でも悪いものは評価されない」というように、新築と中古が適正に扱われる状況が定着することを目指します。
次なる成長を目指す
すべての経営者を応援する
フランチャイズ業界の専門情報誌
フランチャイズ業界唯一の専門情報誌として、毎号さまざまな切り口をもとに新興本部から大手本部までをフォーカス。またFCを自社の新たな経営戦略として位置付け、中長期的な経営を目指す経営層に向け、メガフランチャイジーの情報も提供しています。
次号発売のお知らせ
2024年12月23日発売
記事アクセスランキング
次なる成長を担うすべての起業家を応援する
起業&新規事業の専門情報誌
“起業のヒント” が毎号充実! “ビジネスチャンス” の宝庫です。
すぐにでも役立つ独業・開業・転業・副業サポートの雑誌です。
資金をかけずに始められる新しいビジネスの紹介、FC、経営・会社運営のノウハウなど、多くの経営者からの“起業のヒント”が毎号充実。