【連載 第38回】アメリカに学ぶフランチャイズ事情

2024年の米国フランチャイズ業界の動向

　米国最大のフランチャイズショー「IFE（International Franchise Expo）」が今年も5月末に NY市で開催される。日本からも一般来場者やFCツアーメンバー、出展社など今まで以上の参加が見込まれている。そこで今回は、米国FC業会の現況や注目の業態を紹介する。
　米国はコロナの影響でここ数年、予測不可能な経済状況だった。昨年、FC市場はインフレや労働力不足、金利上昇などの経済的課題に直面した。2025年までにインフレ率２％を目標にする中、今年は金利の低下により借入コストが削減され、FC契約がより手頃な価格になると予想されている。インフレの継続や米国大統領選挙、AIの技術進歩など複数の要因が相まって、今年は米国経済とFCの転換期となることが予想されている。

NY開催の「IFE」

今年のFC市場予測

●FC加盟店数は1万5000店舗以上増加し、総計82万1000店舗になる見通し
●FCビジネスでの雇用が約22万1000人増加する見込み（米国全体の失業率は昨年を上回る予測）
●FCの総生産高は8939億ドル（前年比4.1％増）になる想定
●FCのGDPは成長を続け、年率4.3％のペースで増加する見込み
●地域別では、南東部と南西部のFC市場が他地域の成長を上回る予想
　今年は米国大統領選挙により、株式市場は短期的に変動することが予想されている。選挙の結果とその後の政策は、今年後半のFC市場にも大きな影響を与えるだろう。相対的に高い金利は企業活動の足かせとなり、今年も依然として労働問題が重大な懸念事項とされている。IFAが昨年実施したFC加盟者調査によると、FC加盟店のうち47％が労働問題を最大の課題として挙げている。

業界別の成長性

　今年中に急成長が見込まれる業界として注目されているのは、サービス業とファストフード業態だ。健康・ウェルネス分野や子ども向けサービス業、美容やペットサービスでは今年3％の成長が期待されている。健康・ウェルネス分野はコロナで脚光を浴びた。高級スパや非外科的スキンケアなどの美容サービスはパンデミックで制限されていたが、現在は回復兆候だ。ファストフード業態は2024年に2.2％増加すると予測されている。店舗取得費用の上昇により、設置面積が小さいドライブスルーが増加しつつある。

地域性に見る市場の動向

　今年のFC市場は、事業コストや労働力の確保、経済的可能性、インフラなど複数の要因から影響を受けるだろう。成長性が高い地域としては、人口と産業の成長が最も著しい南東部と南西部。今年はすべての地域で成長が見込まれているものの、中西部のFC店舗の伸び率は0.9％に留まると予測されている。
●FC店舗の成長率が高い上位5州はテキサス、フロリダ、ジョージア、ノースカロライナ、サウスカロライナ
●今年はFCビジネスが経済成長を促進し、国、地域、州レベルで雇用とビジネスの機会を提供する。特に、南東部は米国のFC全体の約30％が集中し、従業員数は260万人、FC収益は2682億ドルに上る。FC加盟店数が2番目に大きい中西部は、事業者数が17万9500社、従業員数が200万人、生産高は1億9360万ドルと推定されている。

まとめ

　私もIFEに携わる中で、成長性が高いFCビジネスを見極めたい。今回、IFEに出展する日本企業が、米国のFC加盟店や個人投資家をどこまで魅了できるか楽しみだ。

Profile　藤田一郎
　上智大学国際学部および南カリフォルニア大学国際学部出身。1980年にI. Fujita International, Inc.を設立。1986年から米国フランチャイズ案件の日本導入事業に着手。2000年以降から日本フランチャイズ案件の米国導入事業及び加盟店開発を行う。米国のアントプレナー誌からExcellent Entrepreneur Awardも受賞。最も米国フランチャイズ事情に精通している人物として認められ、近年は、フランチャイズのグローバル化に貢献し、多方面で講演を実施。日本フランチャイズ及び小売企業の北米進出サポートやコンサルテイングを行っている。