【連載 第39回】アメリカに学ぶフランチャイズ事情

欧州市場における和食のビジネスチャンス

　和食人気は北米のみならず、欧米にも広がっています。久しぶりに欧米を訪れた私は、改めて和食がイギリス・フランスを中心にヨーロッパ全土に広がっている状況を目にしました。今後、10年を考えると、寿司やラーメン、うどんや天ぷら、おにぎりや弁当といったカテゴリーで欧州市場は無視できません。イギリス1か国を見ても、キオスクタイプを含む寿司店の数は2615店舗に上ります。

イギリス

　イギリスでは寿司に加えて、ラーメン需要がますます高まっている。某製麺会社の担当者によると、欧米への麺の出荷量は過去7年間で40%以上に増加。特に、イギリスは需要が高く、すでに75軒以上のラーメンレストランに麺を供給しているという。
　ラーメン・寿司の売上高は、2030年まで年平均8％で成長すると見込まれている。和食は2000年代初頭から世界中で受け入れられるようになった。その背景には、消費者の健康意識の高まりがある。和食の品質が消費者に評価され、和食専門店や和食系レストランチェーンの数が増加した。最近では、丸亀製麺がイギリスで2店舗開業し、うどんや天ぷらで人気を集めている。また、この和食ブームに乗ってグローバルレベルで拡大している和食チェーンがある。香港育ちのイギリス人が開業した WAGAMAMAだ。現在、ラーメンや餃子などを提供するアジアン・ジャパニーズレストランを英国内だけで153店舗を展開。さらに、オーストリアやベルギー、中東のバーレーン、そして米国にも進出している。日本の和食チェーンにとっては、脅威ともいえる存在になりつつある。

フランス

　フランスはイギリスに次いで和食人気が高い国だ。寿司は和食の中でも断トツ人気で、その市場は非常に高い成長率を示している。しかし、飽和の兆候もあり、多くのケータリングチェーンやデリバリーチェーンの活動が減速傾向だ。また、マグロやサーモン、エビといった寿司ネタの供給が需要に追い付いていないため、近年は値上がりの問題も生じている。
　一方、スーパーで販売されるパック寿司は、少数プレーヤーかつ普及率も上昇しており、かなり好調のようだ。フランス人の好みが巻き寿司に集中していることもあり、仏国内で寿司はスーパーマーケットとハイパーマーケット（GMS）で消費されるケースが多い。米国と同様に「コーナ型寿司バー」または「販売キオスク」のモデルで拡大している。この消費モデルの先駆者であり、現在のマーケットリーダーでもある Sushi Dailyは、弁当なども積極展開している。現在はフランスからヨーロッパ全土に拠点を拡大しており、すでに約200店舗を直営とFCで展開している。フランスでは同店のほか、Planet Sushiが急激に市場を伸ばしている。フランスの寿司チャネルには、日本食レストランや独立系テイクアウト店、寿司チェーン店やスーパーマーケットがある。中でも、テイクアウト寿司チェーンの拡大は、家庭消費にも繋がってくる。

フランスの寿司は巻き寿司がメイン

まとめ

　イギリス・フランス企業によって、寿司やラーメンを中心とした和食レストランがヨーロッパ全土に拡大しつつあります。その中に、日本の和食チェーンが丸亀製麺など数社に留まっている事実は残念に思います。和食市場は北米のみならず全世界で拡大しています。この需要に日本の和食チェーンが早く追いつくよう、グローバル市場で働ける人材の育成とサプライチェーンの整備が急務といえるでしょう。

Profile　藤田一郎
　上智大学国際学部および南カリフォルニア大学国際学部出身。1980年にI. Fujita International, Inc.を設立。1986年から米国フランチャイズ案件の日本導入事業に着手。2000年以降から日本フランチャイズ案件の米国導入事業及び加盟店開発を行う。米国のアントプレナー誌からExcellent Entrepreneur Awardも受賞。最も米国フランチャイズ事情に精通している人物として認められ、近年は、フランチャイズのグローバル化に貢献し、多方面で講演を実施。日本フランチャイズ及び小売企業の北米進出サポートやコンサルテイングを行っている。