【連載 第4回】FC弁護士が答えるランチャイズ法律相談
公開日:2023.12.27
最終更新日:2023.12.27
※以下はビジネスチャンス2023年12月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。
売上予測①
フランチャイズに加盟する、本部を構築または運営する。いずれの場合も法律の知識は欠かない。「知らなかった」では済まされない失敗を防ぐために、法に基づく考え方を知っておきたい。チェーンビジネスに詳しい現役弁護士が、実例を交えてわかりやすく解説する。
Q:立地診断と売上予測は違うものですか? 加盟説明会でフランチャイザーが配布するパンフレットに書かれたモデル損益計算書(収支モデル)は売上予測に当たりますか?
店舗候補物件(地域)に対してフランチャイザーが行う調査を「立地調査」といいます。その調査結果から、その立地が「出店に適した立地」であるか否かを判断することを「立地診断(立地評価)」といいます。
他方、「売上予測」(売上高予測)とは「新規出店に際して立地と商圏調査を行った結果に基づき売上高・収益を査定した計算根拠と予測値」をいいます。
このように、売上予測と立地診断とは異なる概念です。立地診断は売上予測の前提となることはあっても、売上予測そのものではありません。ただ、売上予測をするためには、当該物件の周辺人口や交通量などの立地条件の調査が不可欠になるので、売上予測と立地診断は「開業提案書」などで一体として記載されることが一般的です。
多くのフランチャイザーは加盟希望者に対して自社のフランチャイズを説明するためのパンフレットを配りますが、そこにそのチェーンの店舗の一般的・平均的な損益計算書例を記載することがあります。こうしたモデル損益計算書の例を「収益モデル」と呼びます。このように「収益モデル」は特定の店舗を対象とした予測値ではなく、そのチェーンの一般的・平均的な収益例に過ぎません。
これに対して、売上予測とは、特定の物件について周辺環境などの具体的条件を調査して将来の売上高を予測するものです。ですから、特定の物件の周辺環境の調査を前提としない「収支モデル」は売上予測ではありません。
ただし、単なる「収支モデル」でも、フランチャイザーが加盟希望者に対して提供する以上、客観的・合理的根拠に基づかなければなりません(消極的情報提供義務)。パンフレットを用いた説明も、その説明方法次第では説明義務違反になることがあります(東京地判平19.10.1)。
フランチャイザーは加盟希望者に対して様々な資料を提供しますが、加盟希望者としては、それが「収支モデル」なのか「立地診断」なのか「売上予測」なのかを見極めるようにしてください。
出店候補物件が具体的に決まっていない段階で交付される資料(パンフレットなど)に書かれたモデルは「収支モデル」に過ぎません。他方、出店候補物件の目星がついて、その物件やその地域(商圏)についてフランチャイザーが出店の可否を診断した結果は「立地診断」で、立地診断結果を参考にして、当該物件における売上高を予測したものが「売上(高)予測」です。このように、その資料がどの段階で配られたかによって、その資料の意味が変わってきます。
Profile かんだ・たかし
1963年大阪生まれ、早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。チェーンビジネス法務を専門とし、多くのFCチェーン、レギュラーチェーンの顧問を務める。現在、弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員。(社)日本フランチャイズチェーン協会研究会員・専任講師。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。経営法曹会議会員。(株)あさひ社外取締役。趣味は筋トレと格闘技。2023年度全日本マスターズレスリング選手権78㎏級3位。
「ケース別 法的交渉の実務」(共著・青林書院・2020年)「フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)」(三協法規・2018年)
「事例で分かる外食・小売業の労務戦略(増補版)」(第一法規・2018年)
「フードサービス店長法律ハンドブック」(商業界・2013年)「よくわかる!フランチャイズ入門」(共著・同友館・2011年)
次なる成長を目指す
すべての経営者を応援する
フランチャイズ業界の専門情報誌
フランチャイズ業界唯一の専門情報誌として、毎号さまざまな切り口をもとに新興本部から大手本部までをフォーカス。またFCを自社の新たな経営戦略として位置付け、中長期的な経営を目指す経営層に向け、メガフランチャイジーの情報も提供しています。
次号発売のお知らせ
2024年12月23日発売
記事アクセスランキング
次なる成長を担うすべての起業家を応援する
起業&新規事業の専門情報誌
“起業のヒント” が毎号充実! “ビジネスチャンス” の宝庫です。
すぐにでも役立つ独業・開業・転業・副業サポートの雑誌です。
資金をかけずに始められる新しいビジネスの紹介、FC、経営・会社運営のノウハウなど、多くの経営者からの“起業のヒント”が毎号充実。