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【連載 第11回】FC弁護士が答えるランチャイズ法律相談 

公開日:2025.03.26

最終更新日:2025.03.31

※以下はビジネスチャンス2025年4月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

店舗の営業日と営業時間

弁護士法人 心斎橋パートナーズ 神田 孝 弁護士(59)

 フランチャイズに加盟する、本部を構築または運営する。いずれの場合も法律の知識は欠かない。「知らなかった」では済まされない失敗を防ぐために、法に基づく考え方を知っておきたい。チェーンビジネスに詳しい現役弁護士が、実例を交えてわかりやすく解説する。

 

 

 

Q: 店舗の営業日と営業時間について、FC契約書ではどのように定められますか。多くのコンビニエンスストアは24時間営業ですが、これについて公正取引委員会はどのような考えを取っていますか。

1.営業日と営業時間について
 一定の時間帯に当該FCを営業していることが、そのFCの特色になっている場合、店舗の営業日や営業時間はFCの統一的イメージとなります。そのようなFCでは、店舗の営業日や営業時間を、FC契約に具体的に記載し、加盟者に対して特定の時間帯の営業継続を義務付ける必要があります。
 他方、店舗の営業日や営業時間はその店舗が入っている物件の契約条件や周辺環境の経済条件によって左右されることも事実です。そのため、店舗の営業日や営業時間は物件の賃貸借契約の条件等により個別に定めるとするFCもあります。

2.コンビニの24時間営業について
(1)多くのコンビニでは、24時間営業がとられています。しかし、24時間営業は人件費や防犯に関して加盟者に多くの負担を課すことから、これを加盟者に義務付けることが優越的地位の濫用にあたらないかが問題となりました。
 この点、24時間営業が実施されないとFCのイメージが損なわれることから、東京地裁は本部が加盟者に対して深夜営業を行うことを求めることは優越的地位の濫用に当たらないと判断しました(東京地裁平成23年12月22日判決)。

(2)しかしその後、人手不足・人件費の高騰がさらに進み、最近の調査では77.1%のコンビニ加盟者は深夜時間帯が赤字であると答えています(公正取引委員会令和2年9月「コンビニエンス・ストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」150~179頁)。
 そのため公正取引委員会は、令和3年4月の「FCシステムに関する独占禁止法上の考え方」の改正において、「加盟者募集に際して本部が営業時間や臨時休業に関する説明をするにあたり、募集する事業において特定の時間帯の人手不足・人件費高騰等が生じているような場合等その時点で明らかになっている経営に悪影響を与える情報については、加盟希望者に当該情報を提示することが望ましく、例えば、人手不足に関する情報を提示する場合には、類似した環境にある既存店舗における求人状況や加盟者オーナーの勤務状況を示すなど、実態に即した根拠ある事実を示す必要がある。」としました(同2(2)ウ)。
 また、「本部が加盟者に対し、契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにも関わらず、時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し、正当な理由なく協議を一方的に拒絶し、協議しないまま、従前の営業時間を受け入れさせること。」が優越的地位の濫用にあたる場合があるとしました(同3(1))。
(3)尚、コンビニ本部各社では加盟者の時短営業を許容する方針を取っていますが、22年時点では、大手コンビニ各社で時短営業を採用している店舗数は3~5%とのことです。

Profile かんだ・たかし

 1963年大阪生まれ、早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。チェーンビジネス法務を専門とし、多くのFCチェーン、レギュラーチェーンの顧問を務める。現在、弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員。(社)日本フランチャイズチェーン協会研究会員・専任講師。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。経営法曹会議会員。(株)あさひ社外取締役。趣味は筋トレと格闘技。2023年度全日本マスターズレスリング選手権78㎏級3位。
 「ケース別 法的交渉の実務」(共著・青林書院・2020年)「フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)」(三協法規・2018年)
「事例で分かる外食・小売業の労務戦略(増補版)」(第一法規・2018年)
「フードサービス店長法律ハンドブック」(商業界・2013年)「よくわかる!フランチャイズ入門」(共著・同友館・2011年)

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