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【連載 第2回】25兆円市場を支える立役者 法人フランチャイジーの可能性

公開日:2023.08.09

最終更新日:2023.08.09

※以下はビジネスチャンス2023 年4月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

第2回 個人ジーと法人ジーとでは何が違うのか

 

関西学院大学商学部 川端基夫教授

 個人の独立開業手法としてイメージが強いフランチャイズだが、こと日本においては、加盟者の属性の半数以上が法人で占められている。その数は推計1万~1万3000社とされており、彼らの多くは特に地方に根を張る老舗企業ばかりだ。今回からスタートする同連載では、そんな日本のフランチャイズ業界を支える立役者たちの存在に迫っていく。

 

 

 

本部と法人ジーは相互独立の共創関係であれ

法人フランチャイジーの優位性

 法人フランチャイジー(以下: 法人ジー)と個人フランチャイジー(以下: 個人ジー)とでは、どのような違いがあるのでしょうか。法人ジーは、少なくとも以下の4点で個人ジーよりも優位性があるといえます。それは、①資金調達力(投資力)②人材確保力③店舗物件確保力④リスク対応力の4つです。①〜③は、いうまでもなく法人ゆえの、社会的信用の高さに由来するものです。
 ④のリスク対応力とは、多店舗運営をすることで赤字店が出ても他店でカバーできたり、複数ブランドに加盟することで、特定ブランドの人気に左右されない経営ができることを意味します。対して1店舗運営の個人ジーは、店舗の近くに競合が現れたり、加盟ブランドの人気が低下したりすれば、事業に行き詰まるリスクが一気に高まります。

 

本部と法人ジーとの関係性

 しかし両者の決定的な違いは、これらとは別の点にあります。個人ジーは家族を養うため、生業としてフランチャイズを経営しています。一方、法人ジーは、企業として成長することが大きな目標となります。
 成長のためには、資金管理や人材育成、本部選択や店舗投資(出店)といった業務を、合理的に判断して進める「仕組み」(組織)作りが求められます。個人ジーはフランチャイズの仕組みの中に自身が存在するのですが、法人ジーは自社の成長の仕組みの中にフランチャイズ事業が組み込まれています。
 その結果、法人ジーは企業経営者としての目線で、加盟ブランドのビジネスモデルや本部の経営戦略を評価することになります。いわば、本部と法人ジーとが、それぞれ1つの企業として成長していくという関係が生まれるのです。
 本部と加盟者は、支配=従属の関係にあることがしばしば指摘されますが、これは個人ジーを前提とした見方です。本部と法人ジーとの間には、理論的にはより対等で互恵的な共創関係が成立しているといえるでしょう。現実にはまだそうはなっていない面がありますが、両者がブランド価値の向上に取り組む日は、すぐ近くまでやってきているのかもしれません。

法人ジーの成長戦略と本部選択

 法人ジーが企業経営の視点を持つことは、さまざまな意志決定にも現れます。そのひとつが、加盟する本部を選ぶ基準です。一般に個人ジーの場合は、オーナーの好みや第三者の助言が本部選択に大きく影響する傾向があります。
 しかし、筆者が全国の法人ジー78社を調べた結果によると、最初の本部選択の基準は個人ジーと大差はなかったものの、2番目以降の本部選択基準は異なりました。オペレーションの容易さや保有する不動産との適合性、競争優位性・ブランド力の高さや投資額の小ささ・回収までの期間、雇用の継続や本業とのシナジー効果といった、経営戦略的な視点から選ばれていました。
 中には「短期間に大きな収益が見込めるが長続きは期待できないFC」と、「大きな収益は生まないが長期的な安定が見込めるFC」を組み合わせたり、資金の回転期間が異なるFCを組み合わせたりといったケースもありました。それぞれの法人ジーの成長戦略が本部選択から見えてくる点も、興味深いといえます。

Profile  かわばた・もとお
1956年生まれ。大阪市立大学大学院修了、博士(経済学)。関西学院大学商学部教授。流通業の研究が専門であり、2021年に出版した『日本の法人フランチャイジー』(新評論)では、日本商業学会賞優秀賞および中小企業研究奨励賞を受賞。

 

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