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【連載 第5回】25兆円市場を支える立役者 法人フランチャイジーの可能性

公開日:2023.10.27

最終更新日:2023.10.27

※以下はビジネスチャンス2023年10月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

第5回 本部で抱える〝未知の機能〞がチェーン化阻む難しさ

 

関西学院大学商学部 川端基夫教授

 個人の独立開業手法としてイメージが強いフランチャイズだが、こと日本においては、加盟者の属性の半数以上が法人で占められている。その数は推計1~1万3000社とされており、彼らの多くは特に地方に根を張る老舗企業ばかりだ。今回からスタートする同連載では、そんな日本のフランチャイズ業界を支える立役者たちの存在に迫っていく。

 

 

 

オリジナルブランドを手掛ける理由

 法人フランチャイジーとして成長するうち、「独自にオリジナルブランドを立ち上げてみたい」という欲求が生まれることはよくあることです。
 その背景には、多店舗を展開する中で店舗運営のノウハウが蓄積されてきたことや、複数の業種や業態に加盟して多様なノウハウを入手できたことがあります。しかしフランチャイズの加盟者という立場では、自分で考え出したノウハウやアイデアを試したり、取り入れたりすることは困難です。また加盟金やロイヤリティの負担が重く、最終的な利益が小さいことへの不満も慢性的にあります。
 コロナ前の2019年に筆者が全国の法人フランチャイジー1310社について調べたところ、規模の大小にかかわらず331社がオリジナルの店舗を有していました。これは4社に1社の割合ですが、すでに失敗して撤退したところもあるので、実際の割合はもっと高くなります。
 そして、そのうちの33社に対して直営店を持ったきっかけを尋ねたところ、「習得したノウハウを基に、自分で考え出したビジネスを試したかった」「フランチャイズには自由度がないし利益率も低いから」といった回答が多く出ました。
 中には従業員のモチベーションを上げるために、従業員たちにオリジナル店を考案させていた法人もありました。
 オリジナル店を有する法人は、その多くが飲食業のフランチャイジーでした。「競合避止義務(※)」条項によって加盟業態と同じものはできませんが、飲食業は異業態であっても見よう見まねで始められる面もありますし、運営ノウハウは応用も利きやすいといえます。

「仕組みづくり」が最大の障壁

 しかしオリジナル店で成功している法人は、大変少なかったのが実態です。前述の店舗を展開する33法人についても、利益が出ていたのは10法人だけでした。さらに多くのオリジナル店は1〜2店舗にとどまり、いわば試行段階を出ておらず、直営店の展開が事業の柱の一つにまで成長しているケースは、わずか5法人にすぎませんでした。
 新しい事業の柱を立てるには、いうまでもなく多店舗展開ができるシステムを構築することが求められます。
 飲食業でいえば、利益が出るモデルの設計はもちろん、食材調達と加工の仕組みづくりや店舗への食材輸送体制の確立。またメニュー開発の体制や調理手順の設計、厨房設計や出店開発、教育マニュアル作り、さらにFCをやるならその仕組みづくりなどが挙げられます。そしてそれには幅広い業務に取り組むことが必要となり、相応のコストと時間がかかります。
 実際、「フランチャイズなら1〜2カ月で習得できる原価管理のノウハウを習得するのに、オリジナル店では2年を要した」という法人もありました。つまり店舗運営だけでなく、本部が担当している未知の機能を抱え込まねばならない点に、難しさの核心があるのです。
 システムを構築できる能力や資金、人材が必要になりますが、そのハードルは相当高いと言わざるを得ません。

(※)この場合、自身が加盟しているFC本部が行っている事業と競業する行為を行わない義務。

Profile  かわばた・もとお
1956年生まれ。大阪市立大学大学院修了、博士(経済学)。関西学院大学商学部教授。流通業の研究が専門であり、2021年に出版した『日本の法人フランチャイジー』(新評論)では、日本商業学会賞優秀賞および中小企業研究奨励賞を受賞。

 

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