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【連載 第1限目】教えて!木村先生 フランチャイズ・ニュース講座

公開日:2024.07.17

最終更新日:2024.07.17

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

 多くの人が関わることで成立するチェーンビジネス。中でもフランチャイズチェーンは、本部と加盟店の相互協力で発展を遂げてきた。しかしその一方で、双方の認識に齟齬が生じて係争に発展しているケースも少なくない。本連載では、こうしたFC業界ならではの問題点について、フランチャイズを研究テーマに活動する愛知大学法学部の木村義和教授に解説してもらう。

見切り販売推奨へ コンビニ最大手が方針転換

 2024年4月、新聞各紙は「コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンが方針を変更し、おにぎりや弁当などの見切り販売を推奨することになった」というニュースを報じました。このニュースには、FCビジネスの大切な教訓が詰まっています。それは、「加盟店が儲かることが、本部が成功する唯一の方法である」という教訓です。そのためにも、本部と加盟店の利害を一致させることが必要です。この点を中心にニュース解説をしていきます。

見切り販売とは

 見切り販売とは、売れ残りそうになった商品を値引きして早めに売り切る方法です。スーパーなどでは、日常的に行われており、目新しさを感じるものではありません。それでは、なぜこのニュースは注目されたのでしょうか。それは、コンビニ本部は見切り販売を禁止していたからです。

見切り販売禁止の理由

  この理由を本部は、「いつでも欲しい商品を手に入れられる便利さがコンビニの売りであり、安さを武器にしたディスカウント商法とは異なるため」と説明していました。しかし、本当の理由は「コンビニ会計」にあったのではないかと考えます。 コンビニ会計とは、加盟店が支払うロイヤルティの算出方法です。そして、このコンビニ会計は、売れ残った商品の損失(廃棄ロス)を加盟店が負担するという点が特徴です。 このコンビニ会計が原因で、本部と加盟店の間に利益相反が生じていました。本部は商品を定価で販売しようとし、加盟店は売れ残りによる損失を恐れて見切り販売を考えるようになっていました。一部の加盟店は2000年頃から見切り販売を始めましたが、本部はこれを禁じたため、加盟店と本部の間で対立が起きていたのでした。

公正取引委員会(公取委)による排除措置命令

 この問題の大きな転換点となったのが、2009年に公取委が出した「セブン‐イレブン・ジャパンに対する排除措置命令」です。公取委は本部に見切り販売の妨害を止めるように命令を出しました。しかし、実際には見切り販売を行う店舗は増えませんでした。会計システムへの登録作業が複雑で、人手不足のコンビニでは対応できなかったためです。 しかしその後、公取委による「コンビニストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書(2020年)」で衝撃の事実が明らかになりました。それは、コンビニ1店舗における年間の廃棄ロス額は、日本のサラリーマンの平均所得441万円(2018年)を上回る468万円(中央値)という事実です。
 具体的に見ると、コンビニ1店舗あたり、おにぎりは18.9個、弁当は5.2個も捨てられていることが報告書から分かりました。弁当についていえば、売価ベースで3200円にもなります。それに対して、日本の男性会社員の1週間の平均昼食代が2925円(新生銀行調べ・2020年)ですから、これを上回る額の弁当をコンビニ各店舗は、たった1日で捨てていたのです。
 この結果を受け、公取委は本部に対して、廃棄ロスの増加に繋がる見切り販売の制限が生じないように留意することを求めました。そしてついに2024年、本部は方針を転換し、見切り販売を推奨することになったのです。

Profile 木村義和
 愛知大学法学部教授。関西学院大学大学院法学研究科修了、博士(法)。コンビニ問題やフランチャイズ契約の研究をしている。官公庁から法令調査や職員研修講師の委嘱を受けた経験あり。代表著書は『コンビニの闇』(ワニブックス)。

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