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【連載 第2限目】教えて!木村先生 フランチャイズ・ニュース講座

公開日:2024.08.28

最終更新日:2024.08.30

※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

カスハラ対策を企業に義務化 法改正の検討が始まる

 多くの人が関わることで成立するチェーンビジネス。中でもフランチャイズチェーンは、本部と加盟店の相互協力で発展を遂げてきた。しかしその一方で、双方の認識に齟齬が生じて係争に発展しているケースも少なくない。本連載では、こうしたFC業界ならではの問題点について、フランチャイズを研究テーマに活動する愛知大学法学部の木村義和教授に解説してもらう。

カスハラから従業員を守る義務があるのは本部なのか、加盟店なのか

 カスハラ(カスタマーハラスメント)対策が企業に必要とされ、法改正の話題が出ています。
 朝日新聞が2024年5月に報じたところによれば、厚生労働省は、「労働施策総合推進法」を改正し、カスハラから従業員を守る対策を企業に義務付けることを検討しているようです。カスハラ対策は、政府が6月に取りまとめた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にも盛り込まれました。
 すでに厚労省は、2022年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定し、企業が具体的に取り組むべきカスハラ対策を提示してきました。しかし、このマニュアルは、あくまで企業に自主的な取り組みを促すためのものに過ぎず、法的な強制力はありませんでした。そこで、労働施策総合推進法を改正し、企業のカスハラ対策を法的義務とする方向で検討されることになったようです。
 この労働施策総合推進法は、労働者が自身の能力を最大限発揮できるように、働きやすい環境を整えるための法律です。企業にパワハラ防止対策を義務付けているのもこの法律です。今回の改正では、その中にカスハラ対策が加わることになります。
 現在、カスハラは深刻な社会問題となっています。小売業やサービス業の労働組合「UAゼンセン」が2024年に行なった調査によれば、組合員の約47%がカスハラを受けた経験があると回答しています。
 カスハラ対策を始めた企業もあります。JR東日本や東京電力は、カスハラを行う客には顧客対応をしないとの方針を定めました。全日本空輸は、カスハラ行為をやめない場合、その行為を録音・録画するという方針を策定しています。
 フランチャイズ店舗の場合、そこで働く従業員をカスハラから守るのは本部と加盟店のどちらの責任となるのか、疑問が生じるかもしれません。フランチャイズの原則からすれば、カスハラ対策の義務を負うのは、加盟店ということになるでしょう。なぜなら、本部と加盟店は独立した事業者ですし、従業員の雇用主は加盟店だからです。
 従って、法改正によって、本部が「カスハラ対策の義務を負うことはない」と思われます。しかし、法律上の義務が無いからといって、本部がカスハラ対策を怠っても良いことにはならないでしょう。

本部と加盟店が共に従業員をカスハラから守ることが不可欠

 「加盟店が儲かるから本部が潤う」というのがフランチャイズの基本です。加盟店が儲かるためには、そこで働く従業員が良い仕事ができるようにサポートを続けることが欠かせません。ですが、従業員が有為な人材にまで成長するには、時間をかけて教育をし、経験を積んでもらうしか方法はないはずです。ましてや、現在は人手不足の時代です。優秀な従業員は店舗にとって大切な存在であることは間違いありません。
 それなのに、時間とコストをかけて育てた大事な従業員がカスハラによって傷つき、退職することになったら加盟店にとってだけでなく、本部にとっても大きな損失です。
 本部と加盟店が共存共栄していくのがフランチャイズの理念です。今後は、本部と加盟店が一緒になって、大切な従業員をカスハラから守るという姿勢が求められるでしょう。

 

Profile 木村義和
 愛知大学法学部教授。関西学院大学大学院法学研究科修了、博士(法)。コンビニ問題やフランチャイズ契約の研究をしている。官公庁から法令調査や職員研修講師の委嘱を受けた経験あり。代表著書は『コンビニの闇』(ワニブックス)。

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