【連載 第6回】FC研究会会長 山岡雄己の業界未来予測

第6回　FCによる循環型インテグレーションは成立するのか

　同連載は、FCビジネス支援のプロであり、フランチャイズ研究会の会長を務める山岡雄己氏による「今後のFC業界の課題と対策」における洞察を全6回にわたってお送りする。経営コンサルタントの立場から見る今後のFC業界の進むべき方向性の鍵を探る。
　連載最後となる今回は、FCの地域経済における循環型インテグレーションの可能性を考察する。

　Ａ・チャンドラーは、「組織は戦略に従う」として、企業組織の段階的な発展プロセスを①量的拡大②地理的拡散③垂直統合④製品多角化としました。（※1）これと同じようなプロセスが複数企業にまたがるバリューチェーン上でも、「拡散＝チェーン化」、あるいは「統合＝インテグレーション」として起こります。チェーン化によるドミナントの拡大はまさしく地理的拡散であり、FC本部が加盟者を垂直的にコントロールするFCモデルは、垂直統合の一類型として捉えることができます。
　そして、システムや商品・サービスを共通化するボランタリー・チェーン（独立系スーパーマーケットのCGCグループなど）は、別の形の「インテグレーション＝水平統合」と考えることができます。地理的拡散や水平統合は、基本的には「規模の経済＝スケールメリット」を享受するためのものでした。しかしながら現代は、少子高齢化という市場縮小局面にあり、スケールメリットを活かして需要のパイを奪い合うというビジネスモデルは成り立たなくなっています。つまり企業は、新たな価値創造によって市場と需要を開発しなければ、収益を確保することができなくなっているのです。
　しかし、このような状況下だからこそ、地域経済における循環的インテグレーションに一条の光を見出せるのではないでしょうか。この考えは消費者・生活者の視点に基づいて、次の3つの特徴から導き出されました。そしてその中では、地域のメガFCジー（以下メガジー）の役割が大きいと考えられます。
　1つ目は、地域の消費者の購買行動が把握され、「CRM＝顧客関係性マネジメント」が成立している状態です。現在、全国規模では主要ポイントの統廃合により顧客購買情報の陣取り合戦が行われています。その流れの中で、地方のメガジーはそれに乗るのか、あるいは独自のCRMシステムを構築するのか選択を迫られています。いずれにせよCRMによる需要の深堀りが鍵となるでしょう。
　2つ目は、オープン・システムとして外部に開かれた窓があるということです。メガジーが加盟ブランドの展開または他の地域業者との連携により、魅力的な商業集積を形成し、域外から顧客を誘引することが考えられます。あるいは自社商品やサービスを開発して、日本の他地域、もしくは海外に販売することも考えられます。ここで重要なのは、外貨を得る手段を持つことです。
　3つ目は、前述の内需および外需の獲得により、地域経済が循環的に発展することです。地域内の需要と地域外の需要が活性化することで、地域産業が活性化します。すると地域雇用が促進され、経済の乗数効果を得て、地方の循環的インテグレーションが成立することになります。
　以上はあくまでの理想論であり、実務面と学術面でさらに研究が必要です。最後に地域再創生が声高に叫ばれる中、メガジーが地域経済のハブとして大きな役割を果たす未来を希求しつつ、6回の連載を終えたいと思います。

地域経済における循環的インテグレーションのイメージ

※1　Alfred D. Chandler, Alfred D. (1962) Strategy and Structure: Chapters in the History of the American Industrial Enterprise.

Profile　 山岡雄己
1965年松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て、2002年に経営コンサルタントとして独立。専門はチェーン・ビジネス、サービス・マーケティング、HRM（人的資源管理）。中小企業診断士。一社）東京都中小企業診断士協会認定フランチャイズ研究会会長。公財）川崎市民活動センターかわさき市民公益活動助成金審査委員長。法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科（MBA特別コース）兼任講師。