【アパグループ】国内816ホテル12万771室、日本最大数ホテルチェーン(前編)

公開日:2024.06.25

最終更新日:2024.06.25

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

コロナ明けの訪日客の増加で過去最高売上・利益を達成

 アパグループは2023年月期連結決算で、グループ連結売上高1912億円、経常利益553億円と発表。売上高、経常利益ともに過去最高を更新した。2年前に創業者である元谷外志雄会長から、元谷一志社長兼CEOに代替わりし、大きな変革期を迎えたアパグループ。経営の舵取りやマネジメント体制が一変した後も、業績を順調に伸ばし日本最大数のホテルチェーンの座を維持し続けている。2011年から始めたFC展開も好調で、毎年加盟ホテルを増やし、加盟法人は法人。複数運営する法人が多く、現在国内でFCホテルを展開中だ。

アパグループ (東京都港区) 元谷 一志 社長兼CEO(53)

Profile もとや・いっし
1971年4月20日福井県生まれ。石川県出身。1990年石川県立金沢二水高等学校卒業。1995年学習院大学経済学部経営学科卒業。住友銀行にて5年間勤務した後、1999年11月アパホテル株式会社常務取締役として入社。2004年に専務取締役に就任した後、2012年5月にアパグループ株式会社代表取締役社長に就任し、グループ専務取締役最高財務責任者、グローバル事業本部長を歴任。2022年4月アパグループ社長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、現在に至る。

 

 

01.独自スタイルと特徴

 

「二度売りで稼働率100%超」常識に捉われないホテル運営

 アパホテルは、「新都市型ホテル」と銘打ち、「高品質」「高機能」「環境対応型」の3つを提唱。その特徴とは、まず駅近の好立地であることだ。都内に所在するアパホテルは、平均して駅から2分秒以内に位置しているという。
 また、自動チェックイン機を導入し、チェックイン時の待ち時間を無くし、利用客の時間を奪わないことを徹底。客室はあえてコンパクトに設計しているが、オリジナルベッドを導入し、質感にこだわったアメニティを置くことで利用客の満足感を高めている。
 そのほかにも、キャッシュバック制度など、これまで業界になかったシステムを採り入れ、常識に捉われないホテル運営で伸びてきた。近年では、日帰り・デイユースプランを積極的に展開しホテルの二度売りを実施。これも業界ではほかに見ない取り組みだ。
 元谷一志社長は「24時間を帯で考えている」と話す。通常、ホテルは「15時チェックイン、翌日11時チェックアウトと設定されている。しかし、人によっては11時ギリギリまで滞在する人もいれば、早朝にチェックアウトし、早々とホテルを後にする人もいる。早朝にチェックアウトされた部屋は、24時間を帯で考えると二度売りが可能になる。
 そのため同ホテルは、リモートワーク需要に合わせて、デイユースプランの提供を始め、二度売りを展開。日中に仕事をするためにデイユースプランを活用する利用者が増加。デイユースプランで大浴場を使用できることなどが付加価値となり好評だったという。ホテルの二度売りは売上向上に大きな効果があるが、実施しているホテルは少ない。
「他のホテルが二度売りを積極的にしないのは、清掃業務をアウトソーシングしているケースが多いからです。アウトソーシングの場合、決められた時間帯で清掃スタッフが帰ってしまい、決まった時間にしか清掃ができません。しかし、当ホテルではリメイク研修を実施し、社員みんなが清掃をできるようにしています。そのため、アーリーチェックインやレイトチェックアウトなど、さまざまなニーズに対応することができます。お客様がチェックアウトされしだい清掃できるため、二度売りができるのです。二度売りを取り入れた結果、稼働率108%という数字を達成したホテルもあります」(元谷社長)。

フラッグシップ店舗の1つ「アパホテル&リゾート横浜ベイタワー」

自動チェックイン機を備えたフロント

02.沿革と業績推移

創業以来52期連続黒字 売上高経常利益率25%超

 同グループのスタートは、元谷外志雄会長が1971年に注文住宅販売会社を設立したことに始まる。その後、建売住宅事業、マンションの建築・販売事業を展開。そしてマンション事業で発生する売却益の税金対策として、1984年にホテル事業に参入した。
 参入当初から平日の集客を狙い、ターゲットをビジネス客に絞り全国へ拡大し続けてきた。現在、「アパホテル」のブランドをメインに816ホテル12万771室(計画含む)が国内で展開されており、日本最大数のホテルチェーンに成長を遂げた。
同グループは、創業から52期連続黒字を達成している。しかも、収益力はホテル業界においてズバ抜けた高水準をマークしており、売上高営業利益率は25%以上にも及ぶ。大多数のホテルが大幅赤字を余儀なくされていたコロナ禍においても、同社は黒字決算をキープしてきた。2020年11月期は、対前年比で売上高がマイナス34%、経常利益はマイナス97%と大幅な減収減益となった。しかし、売上高904億円に対して経常利益は10億円と黒字で、翌2021年11月期も売上高916億円、経常利益75億円をキープした。
 その後は順調に売上・利益を伸ばし、直近の決算2023年11月期は、冒頭で紹介した通り、過去最高の経常利益を叩き出している。
「この業績の結果は、昨年5月8日にコロナが指定感染症2類から5類に変わったことが大きな要因だと考えています。昨年の5月8日以降一気に販路が拡大。さらに円安基調も手伝って、訪日客の利用が増加しています。私が現職に就任した2022年に5カ年計画を立て、2026年11月期で過去最高売上高と過去最高益を目標にしていました。しかし、コロナ明けの販路拡大と訪日客の増大で、それも3年前倒しで達成することができました」(元谷社長)。

デラックスツインも完備

03.経営指標

客室の「稼働率」だけでなく販売可能売上高の比率を重視

 ホテル業界における同社の経営独自性を示すものとしては、RevPAR(レヴパー)と呼ばれる経営指標が挙げられる。一般にホテル市場では客室がどのぐらい埋まっているか、つまり〝稼働率〞を重要指標としているケースがほとんどだ。これは通称「OCC」と呼ばれ、これと客室平均単価を表す「ADR」とセットで使われることが多い。多くのホテルではこのOCC(客室稼働率)とADR(客室平均単価)を指標として使用している。
 一方で RevPARとは、販売可能客室1室あたりの売上を表す値だ。「RevPAR=客室稼働率(OCC)×客室平均単価(ADR)」の数式で求められる。仮に1室1万円の単価で稼働率が90%であれば、RevPARは9000円という計算だ。
 同社では、この RevPARを重要な経営指標に位置づけている。ちなみに2023年度の実績では、年間客室稼働率(OCC)は86.9%、年間客室平均単価(ADR)は8115円に対し、年間 RevPARは7051円だったという。
「満室にするのは単価を下げれば比較的容易にできます。そのため、業界内では RevPARが高ければ高いほど評価されます。当社は、各ホテルで毎日 RevPARを算出し、RevPARをどう高めていくかを考えているのです。ドーミーインさんやヴィラフォンテーヌさんといったホテルは、当社より高めの単価に設定されています。そのため当然 RevPARも高くなりやすい。しかし、当社が二度売りしていることもあり、RevPAR指標では、変わらない数値を上げているという自信があります」(元谷社長)。

客室にはオリジナルのベッドを導入

【アパグループ】国内816ホテル12万771室、日本最大数ホテルチェーン(中編)

【アパグループ】国内816ホテル12万771室、日本最大数ホテルチェーン(後編)

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