【アパグループ】国内816ホテル12万771室、日本最大数ホテルチェーン(後編)
公開日:2024.06.25
最終更新日:2024.06.25
※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
2016年取得のカナダ「コーストホテル」北米展開の要として期待大
07.アパ直ネットワーク
オンラインネットワーク会員2000万人を突破
こうして全国各地で広がりを見せているアパホテルFCチェーンだが、実はその多くが、「アパ直」と呼ばれる同社のホテル予約サイトへの参画企業からの加入だという。
アパ直とは、もともと「アパホテル公式サイト」という名称で展開された、アパホテルがつくった会員制度だ。アパ直会員になり、アパ直から宿泊予約をするとポイントが貯まり、利用頻度によりステータスが用意されるなど、さまざまな特典がつくというサービスだ。
前述した初期のFC加盟店であるステノやアサノビルなども、ネットワーク参画ホテルだったという。
アパ直は、OTA(オンライン旅行代理店)として、「じゃらん」「楽天トラベル」「Booking.com」などと同じ機能を持っている。アパ直に参画したホテルに手数料をもらい、送客をしているのだ。つまり「アパ直」は各地の独立系のホテルが「アパ」の知名度を活かして相互に効率的な集客を可能にするオンライン上のネットワークだ。現在全国で468ホテル4万668室(6月現在)が参加している。
現在アパホテルの予約のうちアパ直からの予約は4割程度だが、旅行客、出張客が大幅に減っていたコロナ禍の当時は全予約の7割も占めるほどだったという。しかしだからといって、同社が「アパ直」ばかりに集客を集中させているかといえばそうではない。
確かにOTAの手数料は高額で、特に海外からの送客窓口となる海外OTAの手数料は、宿泊料金の15〜17%が相場。国内OTAの手数料は、 それより安いがそれでも宿泊料金の10%程度といわれている。手数料を考えると、当然アパ直からの予約が増えた方が売上は伸びやすい。しかし、元谷社長はむしろ他のOTAからの流入を重視しているという。
「アパ直のみの活用では、既存のお客様が循環して新しいお客様が入ってきません。リピーター戦略だけでは、お客様の年齢が上がることで、ビジネス需要が減ってしまうことになります。そのため、外部から当ホテルに転換してくる方を増やしていきたいのです。囲い込むことが良いことではなく、外部から新しい水を入れ続ける必要があります。そう考えると、今のOTAの予約比率はちょうど良いと考えています」(元谷社長)。
アパ直の会員は現在2000万人に到達しているという。
08.海外展開
訪日外国人客は全体の25% 将来は50%超を想定
昨年5月以降から訪日客が増加しており、現在アパホテルの利用客の約25%が訪日客だという。これは全国のアパホテルの平均数値で、東京の上野、浅草、新宿などの観光地のホテルに至っては、訪日客が8〜9割というデータが出ている。
中でも外国人に人気の新宿のホテルでは、北米22%、ヨーロッパ圏22%、アジア圏23%、オセアニアなど3%、中南米13%などの割合で、なんと92%を占めているという。ありとあらゆる地域から訪れていることがわかり、観光客だけではなく、世界中からビジネスでの利用の増加を感じているという。
「日本は人口減で、今後の国内需要は先細りしていきます。国内循環型でやっている業種は、かなり厳しい状況になるでしょう。それに対し、ホテル業界は外国人需要を取り込めるため、当社の先行きは比較的明るいと考えています。これから10年も掛からないうちに、訪日客の割合が50%を超えると考えています」(元谷社長)。
元谷社長は、今後ますます海外需要を高めていく方針だ。日本の市場だけで生き残っていくことは難しいため、北米に展開する「コーストホテル」を伸ばすことに注力する考えだという。コーストホテルは、2016年に同社が取得し、カナダのカルガリーを中心に拡大。現在、FCとMC(マネジメントコントラクト)と直営を合わせて、44ホテルに増加。少しずつ知名度が上がってきており、元谷社長は、将来コーストホテルがアパホテルを助ける時代が来ることを確信していると話す。
トヨタ自動車の「レクサス」が北米市場を席巻し、日本に逆輸入したことでトヨタが様変わりしたように、コーストホテルも北米で席巻するブランドに育て、逆輸入を狙う。
「日本人は西洋ブランドへの憧れやリスペクトを持っています。北米でトップブランドになると、結果として日本でのブランディングになるのです。コーストホテルの中期5カ年計画を立ち上げ、アパホテルの良いところを取り入れて、イノベーションをしながら広げています。西洋ブランドを形成するために、北米の中でも特に西海岸方面を重視して、まずは根付かせていくつもりです。ビジネス需要の活発化を考えて、アメリカであればシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの巨大都市への出店を目指しています」(元谷社長)。
50年ほど前、北陸の1エリアから起業し、今では日本全国ほぼ誰もが知る一大ホテルチェーンに成長を遂げたアパグループは、創業者から二代目への事業承継を経て、さらに世界への拡がりを目指している。
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