【ブックオフコーポレーション】日本で売れ残った商品をマレーシアで販売
公開日:2024.01.10
最終更新日:2024.01.10
※以下はビジネスチャンス2024年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
年間販売点数700万点で売上は約20億円
ブックオフコーポレーションは、「BOOKOFF」を国内外に約800(直営 : 413、FC : 376)店舗展開。2000年のアメリカ出店で初の海外進出を果たし、2004年にはフランスにも進出。そして2016年に「Jalan Jalan Japan(ジャランジャランジャパン)」(以下、JJJ)というブランド名でマレーシアにも出店した。JJJは日本で売れ残った商品を販売する店舗で、現地で大きな人気を博し、現在マレーシアで11店舗まで増店。さらに2022年にカザフスタンにもFC出店し、今年9月には2店舗目がオープンした。JJJ立ち上げの発起人となった井上徹氏に好調ぶりを伺った。
1971年広島県生まれ、一橋大学社会学部卒業、1995年株式会社第一勧業銀行入行、 2000年ブックオフコーポレーション株式会社入社、2016年に新規事業として3次流通事業とマレーシア法人(代表取締役)を立上げ、2021年にブックオフグループホールデ ィングス株式会社執行役員に就任、現在に至る。
年2店舗ペースで出店 在庫回転率は日本の4倍
―御社が海外で展開するJJJとは、どのような店舗なのでしょうか。
井上 JJJを立ち上げたのは、ブックオフグループが抱えていた課題がきっかけでした。その課題とは、お客様から商品を買い取り過ぎてしまい、売り切れていなかったこと。私は2015年に経営企画部にいたのですが、その当時売れ残った商品など店舗から経常的に排出するロスが年間4万トンも発生していました。そのうち3万トンは、古本やCDなどリサイクルはできていたのですが、残りのおもちゃやスポーツ用品、雑貨などの多くはリサイクルできず廃棄していたのです。
この経営課題にメスを入れるため︑売れ残り商品の出口戦略として海外への出荷を提案しました。JJJは、日本で売れ残りリユースが難しいものを海外で販売する店舗です。
―その出店場所にマレーシアを選ばれた理由は。
井上 理由は大きく二つ。一つは、良いパートナーに出会えたこと。コイケ(東京都品川区)という国際物流会社があるのですが、輸出をサポートしてもらっています。また、コイケはマレーシアに現地法人があり、そちらでは店舗運営のサポートをしてもらっています。
そしてもう一つは、マレーシアにはまだ競合が参入していなかったことです。マレーシアは行政的にビジネスライセンスを取得することが難しい国です。またムスリムの方が多いため、宗教的な側面を見てもマネジメントが難しい。そういった点から他社が参入していません。競争優位性を考えた時にブルーオーシャンであることが、長期的な事業継続性、収益性に結びつくと考えました。
―1号店目から大きな盛況だったそうですね。
井上 質の良い日本の中古品が安価に買えるため大人気で、年2店舗ペースで出店し、現在マレーシアでは11店舗になっています。コロナ禍の時期に政府によるロックダウンで長期間の休業を余儀なくされた時期もありましたが、その後は順調に売上も右肩上がりです。2022年の実績でいうと、レジ通過ベースで全店舗合わせて120万人のお客様にご利用いただき、年間の販売点数は700万点。商品単価が約250円で、売上は約20億円に上ります。
JJJは国内店舗の回収から倉庫での仕分け、海上輸送などとにかくコストがかるビジネスであるため回転率が勝負です。安価で売りぬくビジネスなのでJJJの在庫回転率は、国内BOOKOFF店舗の倍の速さです。さらにマレーシアは人件費や家賃は日本に比べて安価なので事業としても収益性の高いビジネスになっています。
ムスリム文化の理解不足 豚革製品で営業停止の危機
―宗教的な面でマネジメントが難しいという話がありましたが、実際に運営されてみていかがですか。
井上 現地スタッフとの価値観や物差し合わせにいまだに苦労しています。オープン初日から、切り取られたプライスタグが店内に散乱し万引きが横行。従業員の中にも万引きをする人がいたのです。日本人からすると当たり前のことですが、「遅刻しない」「嘘をつかない」「喧嘩しない」など、会社のルール設定を行いました。また、万引きの抑制としてクリーニング担当の従業員を配置しています。プライスタグが一つでも落ちていると、それを見た人がつられて切り取って商品を持って行ってしまうため、常にプライスタグが落ちていない状況を作っているのです。
宗教について理解不足で痛い目をみたこともあります。ムスリムの方にとって豚はタブー。ずっと売れ残っている棚に気づいて見てみると、豚革のバッグや靴だったことがありました。ムスリムの方からすると、豚革製品を使うだけでも穢れたことになります。子どもは無邪気に商品を触りますが、それが豚革製品だった場合、親御さんが激怒します。行政から営業停止にするという警告書が届いたこともありました。
現在は日本、現地の倉庫、売り場とトリプルチェックを行っています。それでも徹底しきれていないため、AIを導入できないか検討をしています。さらに宗教的な話でいうと、ムスリムの方は毎日回礼拝をするため、スタッフルームに礼拝ができるスペースも作っています。
―御社はネイティブ従業員の育成に軸を置いています。
井上 今マレーシアには約500名の従業員がいますが、CEO、COO以外は全員ネイティブです。やはり現地の従業員、お客様を知るのはネイティブの方。そのためネイティブの育成に注力しています。ポジションを用意して、チームの食事費用を会社が負担し、スタッフの誕生日にはケーキを用意してお祝いするなど、コミュニケーションにお金や時間をかけています。そうしてモチベーションのアップを図っているのです。
―JJJは2022年10月にカザフスタンにも進出されています。
井上 店舗に訪れたカザフスタン人の方から出店希望の申し出を受け、加盟店を出店しました。カザフスタンは札幌と同じ緯度にある国のため、マレーシアでも売ることができなかった冬物が飛ぶように売れます。
ただし、カザフスタンは商品供給の物流が課題です。ウクライナ紛争の影響による混乱もあり、現地に商品を届けるのに半年ほど時間がかかったこともありますが、今は落ち着いてきてか月くらいで届くようになりました。
今年の9月に早くも2号店がオープンし、十分戦えることが見えているため、今後は中央アジアに多店舗展開していくことも可能だと感じています。世界中にJJJを展開し、リユース化をして捨てない社会を作ることに貢献したいですね。
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