【シャトレーゼ】コロナ禍で184%伸長した絶好調の菓子チェーン(後編)
公開日:2024.04.27
最終更新日:2024.04.27
※以下はビジネスチャンス2024年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
本部と加盟店の視線の先は消費者 安心安全を徹底し信頼されるブランドへ
今年1月24日、同社は国内外で1000店舗の出店を果たした。その中の国内店舗で見ると、9割が郊外ロードサイドに出店しており、今後もその路線は変わらない。ただ一方で、首都圏では路面店や商業施設にも出店。JR系の加盟をきっかけに、駅ナカにも進出できるようになった。
持ち前の集客力で近隣とシナジー駐車場共有で狭い敷地に出店
――ついに国内外合計1000店舗を突破しました。国内店舗数は830店ですが、今後はどのような立地に出店されますか。
古屋 首都圏以外のエリアでは、従来から成功事例が多い郊外型のフリースタンディングロードサイド店舗を推奨しています。投資額などの希望も考慮して居抜き出店にしたケースもありますが、やはりイチから建てた単独店で、20台ほどの駐車場が付いているような店舗が圧倒的に強いです。ロードサイドだと視認性がよく認知されやすいですし、広い駐車場があれば女性も入りやすいです。また単独店は、SCのようにデベロッパーの決定に左右されることもありません。現に単独店が多い当店は、コロナ禍でも営業継続できました。現状では9割がロードサイド店舗になります。
その一方で、首都圏は戦略を変え、路面店や商業施設、駅ナカなどの立地も探しています。昔は駅に入れませんでしたが、JR系列の企業さんが加盟いただき、我々の手の出なかった立地にも出店できるようになりました。
――ロードサイド店舗は駐車スペースを確保するため、ある程度の敷地面積が必要ですね。
古屋 ロードサイド店舗は200〜300坪が理想ですが、最近はホームセンターやドラッグストア、書店などが保有する駐車場を共有していただいています。当店が出店すると来店客数が増えるシナジーがあるようで、先方からお声掛けいただくケースもあります。
――現在の出店は、既存オーナーによる増店がメインなのですか。
古屋 そうですね。7割が既存オーナーによる増店で、3割が新規オーナーによる出店です。オーナー属性はさまざまですが、最近は本屋など他業種の方が多いです。少ないですが、大手企業を早期退職された方が加盟に来るケースもあります。
初期投資は約6000万円 投資回収期間は2〜3年
――初期投資の目安を教えてください。
古屋 FC契約終了時に無利息返還となる加盟預託金が500万円、本部研修と直営店での店舗研修にかかる研修費20万円、開業前オープン準備にかかる開業手数料20万円、建築設備費4000〜6000万円(店舗出店形態により異なる)、求人活動や開業告知、店内備品、商品在庫や開店運転資金にかかる開業準備費が300万円となっています。
――先ほど、店舗の平均年商が2億円とありましたが、営業利益はどれくらいになるのでしょうか。
古屋 10%くらいです。2〜3店舗展開している方はさらに高いでしょう。オペレーション人数は店舗によって異なりますが、日商50〜60万円のロードサイド店舗では5〜6人で営業しています。社員がいて、そのほかはパート・アルバイトです。
当店はお菓子業界の中では圧倒的に売上が高いため、投資回収の目安は3年です。早いところでは2年で回収できています。
同社はコロナ期間で年間約100店舗の増店を行っており、うち7割が既存オーナーの増店だった。同社は新規加盟の際に加え、既存オーナーが増店する際も厳しい審査を行うという。そこには、FCオーナーとともに〝お客様を見る〞という信念があった。
加盟時と増店時に厳しい審査 儲けよりお客を考える姿勢
――国内830店舗のうち、FCは775店。全体の93%を占めますが、多店舗展開されているオーナーが多いのでしょうか。
古屋 2〜3店舗展開するオーナーが約6割で、一番多い方が23店舗展開しています。普通であれば増店はウェルカムだと思いますが、我々は厳しい審査を行います。接客クレームや欠品がないなど、1店舗目を着実に運営できていなければ増店の希望をお受けしません。
新規加盟の際も、審査や面接などいくつかハードルを設けています。中には、お金儲け目的で来られる方もいます。しかし、原点はお菓子を売ることで、大切なのはお客様を見ることです。「あなたの儲けよりお客様にどれだけ儲けさせてくれますか?」「60円のチョコバッキーを1本買ってくれる人もお客様だと思えますか?」こうした気持ちがないと上手くいきません。60円の積み重ねが2億円になるのです。そこは加盟時にきちんとお話しします。
また、お客様からすると直営もFCも変わらず、どこへ行ってもシャトレーゼです。特に生ものは、その日に売れ残ったらロスになってしまいます。自分の懐を考えると、絶対にロスを出さないようにするでしょう。だからといって、仕入れをセーブして欠品ばかり出していては、お客様に迷惑を掛けますし、ブランドの信用も落としてしまいます。難しい話ですが、ある程度のロスは受け入れていただきたいと思います。
――現在の出店は、既存オーナーによる増店がメインなのですか。
古屋 そうですね。7割が既存オーナーによる増店で、3割が新規オーナーによる出店です。オーナー属性はさまざまですが、最近は本屋など他業種の方が多いです。少ないですが、大手企業を早期退職された方が加盟に来るケースもあります。
シャトレーゼのプレミアムブランドとして、2019年に誕生した「YATSUDOKI(以下:ヤツドキ)」。あえてスイーツ激戦区へ出店し、その中で数々のヒット商品を生み出している。ヤツドキでヒットした商品は、シャトレーゼに移植。高クオリティの商品をシャトレーゼ価格に落としていくことで、同社は高品質と低価格を兼ねそろえた菓子チェーンを体現する。
一等立地のヤツドキ 新商品のテストで活用
――シャトレーゼとヤツドキはどのように棲み分けされているのですか。
古屋 郊外ロードサイドがメインのシャトレーゼに対し、ヤツドキは銀座や恵比寿、自由が丘などの一等立地に出店しています。腕を磨いたパティシエがひしめく一流の場所で戦い、そこで支持を得た商品をシャトレーゼに移植するのです。たとえば、銀座にはアップルパイを売るお店がたくさんありますが、その中でヤツドキのアップルパイが大ヒットしました。ヤツドキで評価された商品をシャトレーゼ価格に落としていくことで、成功できると考えています。
――現在、ヤツドキは全国に23店舗(直営15店/FC8店)を展開しています。
古屋 一時期はヤツドキを増やそうと思っていましたが、実際の店舗年商が高いのはシャトレーゼです。そのため、ヤツドキの既存店舗で新商品をどんどん出し、売れる商品をジャッジする役割としても重要な存在です。我々が試食して判断することもできますが、やはりお客様が食べて美味しいと買ってもらうのが一番の評価ですね。
――今後最も注力していくことは何でしょう。
古屋 お客様の不都合、不便さの解消です。美味しいものを安く食べたいというのは、全国民が思っていることです。それを我々はお菓子で実現したいと考えています。そのためには、オーナーにもお客様の方を向いてもらわないといけません。現にオーナーには、FCよりもお客様の都合を優先すると最初から言い切っています。
たとえば、当店の食パンは無添加なので3日間しか持ちません。オーナーからすると、販売期限3日間は扱いづらいですし、ロスにも繫がります。長く保つ食パンの製造自体は可能ですが、お客様が求めるのは添加物ありとなし、どちらでしょうか。そういう考え方を理解していただかなければ運営はできません。実際、無添加の食パンは売れています。少子高齢化が進む今、一人っ子に安全なものを食べさせたい、年配の方は安全なものを食べて長生きしたいといった需要が生まれています。時代に沿って、安心安全なものをお手頃に提供していきたいと考えています。
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