【ドトールコーヒー】知名度活かした異業種連携・新業態開発に注力(後編)
公開日:2023.11.25
最終更新日:2023.11.26
※以下はビジネスチャンス2023年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
3万人のパートナーが将来の潜在顧客 スタッフにも喜んでもらえる店舗に
ドトールコーヒーショップのオープニングコストは、標準モデルが35坪タイプで約5100万円。内訳としては開業資金が600万円。一方、標準収益モデルとしては、平均月商が550万円で償却前利益が15%ほど。現在は水道光熱費などの諸経費が上昇しており一概には言えないが、同社では原則、3年を目安に投資回収をするキャッシュモデルにしている。
オーナーは新規事業や遊休地活用 原則3年の投資回収を推奨
――ドトールコーヒーショップの初期投資は5000万円強ということで、加盟対象も限られてくると思います。現在はどのような属性の加盟店で構成されていますか。
星野 基本は本業をお持ちで、もう一つの柱として飲食事業に参入していただくケースが多いです。また電鉄系や鉄道子会社さんが加盟するケースもあり、その場合は遊休地の活用であったり、従業員の方の働く先として選んでいただくケースがあります。現在加盟店は820店あり、オーナーさんの数は約360です。
――法人がメインの加盟対象ということで、あくまで長期経営を前提としている。
星野 もちろん結果的に長く続けていただきたいと思っていますが、投資については3年を目安に回収できるモデルにしています。なぜなら、今は定期借家がすごく増えてきている。ショッピングモールは以前から5年や7年というのはありましたが、最近では路面店でも5年、7年、10年という家主さんが増えてきている。こうした人たちは元々定期借家を設けていなかったのですが、コロナなどの将来の不確実なリスクを軽減しようと考えています。ですから当社でもオーナーさんには基本は3年での回収をお願いしている。結果的に2年になったり4年になったりもしますが、始めから8年や10年という考えの場合には、我々の方でも出店をお断りしています。
ドトールコーヒーショップの強みは、その圧倒的な知名度。同社の調査によると日本全国の成人98%で認知があるというが、その認知力を活かし、今後は様々な立地での出店を行っていくという。
今期は50店の出店設定 拡大見据えて業態を多様化
――御社の店舗の強みは、価格帯が安価で好立地。また季節商品のリリースが安定しているなど総合的で、男女問わず幅広い年代を囲い込めていることが要因かと思います。
星野 ドトールコーヒーショップは、便利で値段の割には安い、また店舗によっては喫煙もできるというような、機能的価値が非常に強い業態だと思っています。もちろん今後も積極的に出店していく予定で、今期はドトールコーヒーショップ単体で50店舗の出店を設定しています。これはコロナ前と同水準です。
――コロナ期間中も20年度に15店舗、21年度に16店舗、22年度に18店舗と、コンスタントにFCでの新規出店もしています。コロナ後も順調に出店できる目算は。
星野 様々な場所での出店トライアルを行っています。1つが他の企業さんとのコラボレーション。実は東京の城南信用金庫さんにはFCに加盟していただき、3店舗を運営してもらっています。信金さんは都市銀行と違い、地域の方々に特化したサービスを提供する特性があります。ですから都市銀行と違い、ATMの稼働率がすごく高いかというと、そうでもない。むしろ地元の商店や地主さんなど、古くからお付き合いのある方の相談に乗るケースが多く、その際にドトールコーヒーショップを利用していただく。またそこの城南信用金庫さんには来たことがなかった人が、ドトールコーヒーショップがあることを知っていただき、入ってきてもらうというようにです。
単に場所をセパレートするよりも、もうフュージョンにしてほしいなと。そういった新しいサービススタイルを一緒に作りませんかということで、始めさせてもらったのが城南信用金庫さん。ほかにもメガネスーパーさんにもFC加盟していただき、一緒になってやっています。
――これまで、視認性の高い立地に出店してきたことで得られた知名度の高さ。これを使わない手はない。
星野 今では他社さんも行われていますが、元々病院や高速道路のSA・PAなどは、私が店舗開発の責任者だった時に開拓した分野でもありますし、ガソリンスタンドについては今でも他社さんはやられていないと思います。私が開発に携わっていた当時は、路面店とショッピングセンターしかなく、店舗を伸ばしていくには限りがあった。しかし閉鎖商圏で障壁はあるにせよ、出店は可能ですし、どんどん広げてきた背景もあります。わたしたちの仕事は「立地開発」ではなく、「立地創造」なんだと。
――立地を創造し、マーケットを拡張していくと。
星野 並行して、立地ごとのオプションメニューも強化していきます。たとえばドトールコーヒーショップでは、現在、直営・FCで77店舗を病院内で出店しています。病院は患者さんがお使いになるケースはすごく少ない。食事制限もあるわけですから。ですからどちらかというとドクターや看護師さん、事務職員さんといったハードな勤務体系で働く方々に向け、病院ならではのプレートメニューも出していきたい。
またSAやPAであれば、ご当地メニューを積極的に取り入れていく。実際、飛騨牛のミラノサンドといった商品を販売しているのですが、これは1200円(税込)。少し割高ですが、高速道路のパーキングエリアに立ち寄られる方は、観光で動かれている方も多い。ですから「せっかく来たなら、ここでしか食べられないもの」というのも有りだと考えています。
――立地特性に応じてメニューを考案し、店舗自体を差別化していくということですね。
星野 トライアルという意味では、ほかにも派生型のモデルの店舗を運営しています。現在は3店舗ですが、ドッグカフェを運営しています。この「ドトールドッグカフェ」では、ペットの入店はもちろんのこと、販売している商品もペット用のごはんやおやつを揃えています。店舗の造作も獣医さんに監修いただいて段差をスロープにするなど、ペットにとって安全かどうかまで作り込んでいます。
今や15歳未満のお子さんの数より、犬や猫の方が多い。であるならば、しっかりとエビデンスを持った店舗にし、飼い主さんとペットの双方にとって快適なお店づくりをしようと考えています。
――他社と連携したインショップ型の出店、立地に応じた商品開発、新業態の開発など、従来とは異なったアプローチで出店をしていく。
星野 今後は我々の方から「こんな出店してみませんか」というアプローチも積極的に行っていきたい。立地開発ではなく、立地創造がカギになっていくと思っています。
圧倒的な知名度を活かしインショップ型の出店を加速
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