【フレアス】在宅マッサージで全国展開、業界唯一の上場企業
公開日:2023.02.14
最終更新日:2023.02.26
※以下はビジネスチャンス2023 年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
2019年よりフランチャイズ開始し3年で281店舗
「日本の在宅事情を明るくする。」をビジョンに掲げ、在宅で鍼灸等のマッサージを提供するフレアス(東京都品川区)。2000年の創業から直営展開で全国にネットワークを拡大してきたが、2019年にはマッサージ業界で唯一上場を果たし、本格的にフランチャイズ展開を開始した。今後はビジョン実現のため、看護小規模多機能型居宅介護事業やホスピス事業にも参入し、総合的な介護領域をサポートしていきたいという。澤登拓会長に今後の展望について聞いた。
Profile さわのぼり・たく
山梨県生まれ。北陸大学外国語学部に入学。留学先の中国で東洋医学を学び、帰国後、東海医療学園専門学校を卒業。1999年あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を取得。治療院勤務を経て、2000年に株式会社フレアスを起業。
同社が提供する在宅マッサージは、自宅療養している高齢者を対象にした、医療保険が適用できる訪問マッサージだ。創業から19年目に満を持してフランチャイズに進出し、出店を加速。現在は、直営84店舗、FC281店舗を展開する。今後さらに全国ネットワークを拡大していく。
同業他社へのM&Aで成長「医療難民ゼロ」を目指す
――2019年にFC事業を本格的にスタートさせましたが、わずか3年間で200店舗以上出店しています。
澤登 もともと自社でFC開発をしていましたが、M&Aしたことが大きい。同業でフランチャイズ展開していた会社に我々のグループに入ってもらいました。
――2022年3月期の全体売上は41億7400万円。セグメント別の売上比率は、直営が76.5%に対し、FCは14.4%です。売上を高めていくためには、むしろ直営を増やしていく方がいいのでは。
澤登 なぜフランチャイズを始めたかというと、当社のビジョン実現のためです。当社は「2025年に医療難民ゼロ」を掲げています。高齢者が増え、2025年には団塊世代が介護対象者になりますが、国はただでさえ足りないベッド数を減らしていて、年間30万〜40万人の医療難民が出ると言われています。そのため当社は少しでもネットワークを作ってカバーするため、全国展開を進めてきました。ところが2015年頃になり、これまでの直営の出店ペースでは間に合わないと気づいたのです。
――出店を加速するためにFCに踏み切った。
澤登 医療保険を使っているので、FCは品質のコントロールが難しいと思い、これまで見合わせていました。しかし2019年に上場して、品質管理できる体制も整ったので、ゴーサインを出しました。
――御社の事業は、国家資格を持つマッサージ師による、高齢者に特化した訪問マッサージです。いわゆるマッサージ店や訪問介護との違いは。
澤登 当社のサービスは、医療保険が適用されるので、介護ではなく医療行為になります。病院の一部の機能を切り出しているという感じですね。よく「介護保険でしょ」と聞かれますが、医療保険だとわかると週2回とか3回とか使っていただけます。
――週2、3回とは多いですね。
澤登 料金が1回あたり300円、400円と安いですから。高齢の方だけではなく、障がい者の方や生活保護の方もいらっしゃいます。0割負担の方で毎日施術を受けられる人もいます。施術をすることで、「寝返り打てるようになった」とか、「ベッドサイドのポータブルトイレが使えるようになった」とか、ご家族の方にもすごく喜んで頂けます。些細なことですが、ありがとうって言って頂けて本当に良い仕事です。
――医療制度を使ったビジネスですが、安定性はありますか。
澤登 基本ストックビジネスですので安定性は高いです。当社は創業から22年ですが、新型コロナが蔓延した年以外は売上が落ちたことはありません。しかし翌年からもう回復しているので、基本的には安定して上がっていくモデルです。
保険制度や研修で高い参入障壁eラーニング導入し教育に注力
――御社はマッサージ業界唯一の上場企業です。もともと上場する意思はあったのでしょうか。
澤登 当初は上場は絶対しないと思っていました。医療保険を使うビジネスですから抵抗があったです。それより技術を上げることと、良い仕事を提供することを心掛けてやってきました。そうこうしていたらライバルに抜かれてしまい、自分の考えは違うかもしれないと思い至りました。そこでビジョンを達成するためにも上場を目指しました。おかげで信用力も上がり、大手老人ホームとも連携しやすくなりました。
――他社がなかなか追随できないのはなぜですか。
澤登 一つは品質のコントロール。あとは参入障壁が高いと思います。無資格のマッサージでは全国展開しているところはありますが、我々は国家資格者の仕事です。医療保険はレセプトの手続きが面倒ですし、スタッフ教育も、肩もみマッサージと違いますから、知らないとなかなか出来ないと思います。
――品質をコントロールするため、教育には非常に力を入れてきました。
澤登 上場前から少しずつ作っていた教育システムが確立できました。全社員にiPadを配り、eラーニングを行ってきました。今では600タイトルあり、誰が何を勉強したかを全部見える化しています。実技の方は、年1回指導者が実技チェックをしているほか、マッサージを細かく全部動作を分けて、150項目で点数付けします。技術と知識を見える化したというのは、鍼灸マッサージ業界で初めてでしょう。
――今社員のうち、有資格者は何人ですか。
澤登 全体で700人近くいて、そのうちマッサージ師の有資格者が270〜280人くらいです。それ以外に看護師と介護師を入れるともう少し増えます。FCも含めるとグループ全体では1000人を超えます。
――会長が起業されたきっかけの一つが、マッサージ師の待遇改善です。人件費率は高いと思いますが、どうバランスをとっていますか。
澤登 一般的な治療院の事業モデルは、人件費率約70%ですが、当社も大きくは外れていません。その他の経費が大体10%とそんなにかからないので、20%は残ってしっかりと収益が出せるモデルになっています。
同社のFCモデルは、408万円と468万5000円の2種類のパッケージ。ロイヤリティが売上に対して13.5%と、システム利用料が月3万円。社会性が高いビジネスのため、地域社会に貢献する事業を展開したい企業の加盟も増えているという。また同社はFCによる拠点数拡大とともに、新たに看護小規模多機能型事業にも参入。さらにホスピス事業も開始し、在宅領域を拡大しようとしている。
初期投資回収は2年から3年程企業の社会貢献として加盟も
――FCの場合、1拠点あたりの売上モデルは。
澤登 マッサージ師はトップクラスの方で140万円くらい売上が立つ方もいますし、平均70万〜80万円です。日当4万円で、月22、23日稼働すると約80万円です。このクラスが3、4人いれば、売上が240万〜300万になりますから、そこから大体30%は店に残ります。
――FCのモデルは、初期投資で408万円と468万5000円の2種類のパッケージがあります。
澤登 当初は408万円のパッケージでやっていましたが、直営店と距離が近くてサポートが受けやすいところに関しては、少し値段を上げさせていただいています。サポートは開業からその後の継続的な営業、マネージメント、採用のお手伝いなど全部含みます。そのほかに、月のロイヤリティが売上に対して13.5%と、レセプトを保険請求するためのシステム利用料が月3万円かかります。
――初期投資を回収できる期間は。
澤登 平均で2〜3年です。お客さんが集まって、施術者が雇えれば、それだけ売上に繋がります。今はお客さんがいなくて困るということはありません。地方に行けば行くほど、利用したいという方が多く、FCも直営も地方の方が収益性が良かったりするところもあります。
――マッサージ師1人あたりの1日の施術人数が平均10人といいます。
澤登 マッサージの施術が入室から退出までで約30分。次への移動で30分だとすると、8時間労働の1時間休憩でも最低7人はできます。近場や施設などに入るともっと回転率が上がります。
――お客さんが付くまでの集客も本部がサポートしますか。
澤登 直営の立ち上げ時と同じ集客方法を教えていきます。ポスティングや新聞広告など、不特定多数に広告を打つということができないので、ケアマネージャーさんのところへ行き紹介してもらいます。あとは、施設で無料体験会や体操教室をボランティアでやったりします。
在宅領域の総合支援会社へ端境期ホスピス事業も本格的にスタート
――今後は直営を各拠点にして、その周辺でFCを増やしていく戦略です。
澤登 直営店がFCの支援拠点になります。近くにあるので品質のコントロールもしやすいですし、勉強会も一緒にできます。スーパーバイザーが東京から来るのではなくて、何かあったら30分で来れる安心感があります。
――理想としては1拠点あたりFCは何店舗ですか。
澤登 人口によって違いますが、目安は1つの区や市ごとに1店舗は欲しい。地方はどうしても採用が難しいですが、まだブルーオーシャンですので勝算はあります。
――FCオーナーは個人と法人どちらが多いのでしょう。
澤登 今は半々です。社会貢献性が高く、長くやって頂けるビジネスモデルですので、地場に根ざした法人さんがもう一つ柱を作りたいとか、地域社会に貢献して事業展開するような企業さんにマッチすると思います。
――売上のFC比率を高めるためには、加盟金をもう少し上げてもいいのかなと思います。
澤登 FCをスタートした当初から、せっかくご縁を頂いて地場で我々が届かなかったところをやっていただくのであれば、脱退させたくないという思いがありました。できる限りスクラップ&ビルドせずに、サポートをしっかりしていくというのが当社のフランチャイズの考え方です。加盟金を高くとって終わりではなく、成長したことによって当社もリターンがあるという運営をしていきたい。
初期投資は408万円と468万5000円の2タイプ600店舗体制目指し全国ネットワークを拡大
――今は拠点数を増やしていくと同時に、投資フェーズでもあります。看護小規模多機能型施設(看多機)とホスピス事業を新たに始めました。
澤登 店舗は期末には約400店舗になり、これが500、600店舗になると、ほぼ全国にネットワークが完成します。これは営業ネットワークでもありますから、そこに新たにサービスを提供することでクロスセルができます。当社の全国に張り巡らしているネットワークの上に、今後は次のサービスの看多機、ホスピスを加えて、総合的に看取りまで支援する会社になるというのが今の目標です。
――ホスピスは、終末期の方が緩和ケアを受けながら最期まで過すための施設です。来年から本格的にスタートしますが、目算は。
澤登 国は在宅シフトをしていて、看取りの場所が全然足りていません。今日本では80%の方が病院で亡くなっていますが、先進諸国は50%かそれ以下です。高齢者も住み慣れた場所で最後は亡くなりたいという方が多いですから、ニーズは今後増えていくはずです。
――在宅マッサージのネットワークを作っていることが大きな土台になりますね。マッサージ事業会社から、在宅領域を総合的に支援する会社へと端境期にきています。
澤登 我々はマッサージで現場にずっといますが、結局最後は病院でお亡くなりになります。当社が看多機やホスピスをやることで、在宅領域を一気通貫することができるようになるでしょう。
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