【フレアスメディカルケアホーム】「ホスピス」主体に施設介護事業で急成長(前編)

公開日:2024.10.08

最終更新日:2024.10.08

※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

3年間で売上3倍、営業利益20倍へ

 訪問マッサージチェーンをFC展開して急成長を遂げてきたフレアスが、さらなる大成長に向けて大きな変革期を迎えている。終末期の専用緩和ケア施設の「ホスピス」を中心に施設系介護サービスの事業展開を本格強化していく。これにより、3年後に売上高3倍、営業利益は20倍に急成長する見通しだ。2019年にマッサージ業界から初の株式上場を果たした同社だが、上場5年目にして、まさに〝生まれ変わる〞ような大改革の時を迎えようとしている。

フレアスメディカルケアホーム フレアス (東京都品川区) 澤登拓社長

Profile さわのぼり・たく
ん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を取得。治療院勤務を経て、 2000年に株式会社フレアスを起業。

 

 

 

 

コロナを契機に新事業展開

 現在、同社の全売上高のうち8割近くをマッサージ事業が占めており、施設系介護サービスの割合は15%しかない。しかし、3年後には施設系が63%と、マッサージ事業の34%を大きく上回り逆転する計画だ。全体業績もここ数年で様変わりする見込み。2024年3月期の売上高57億円は、3年後の2027年3月期には、一気に3倍の166億円に。営業利益は、約1億円から20倍の20億円へと急拡大を計画している。この大改革を牽引するのが「ホスピス」事業だ。同社のホスピス事業は現在、5カ所で開設済みだ。2023年3月に開設した三重県四日市市の1号店を皮切りに、同年9月に静岡市駿河区、12月に神奈川県相模原市、そして今年5月に東京都板橋区、6月に神奈川県横浜市と続々オープンしている。
 同社は2019年に上場したが、上場のわずか1年後に新型コロナウイルスの流行に見舞われ、主力の訪問マッサージ事業はその影響を大きく受けた。コロナ禍中にも施術を求める高齢者からのニーズはあったものの、感染対策のために利用者の自宅や高齢者施設への出入りが難しくなってしまったという。
 結局、コロナ初年度の2021年3月期は赤字を計上せざるを得なかった。以後、その建て直しをしつつ代わりに何かできることを探していたところ、行くべき道がハッキリと見えてきたという。澤登拓社長は施設系介護事業に参入した経緯を次のように語る。
「マッサージはすごく喜ばれるやりがいのある仕事なんです。寝返りを打てなかった方がマッサージを受けたことでできるようになったとか、ポータブルトイレが使えるようになっておむつを使わずに済むようになったとか。でも、束の間、病院に入院して最期亡くなったらしいよと…。最後まで一緒にいたいなと思ったんです。最後の最後まで。そこで、施設介護をやろうと考えました」
 もともと、同社の祖業は医療系のマッサージ事業のため、医療依存度が高く人材確保がしやすいという強みがあった。さらに、ちょうどその頃、施設介護に強い上場会社セントケア・ホールディング(東京都中央区)の前社長関根竜哉氏を役員として迎え入れている。そこで、まずは看護小規模多機能型居宅介護(以下:看多機)事業を2022年3月に開始。2024年3月時点で、看多機は8拠点を運営中だ。看多機事業に好感触を感じた同社は、続いてホスピス事業に取り組むことにした。
 結果的に同社のホスピス事業はM&Aにより始まった。同社がホスピス事業に参入する旨をリリースしたところ、ホスピス運営の上場大手企業アンビス・ホールディングス(東京都中央区)のグループ会社アンビス(東京都中央区)が三重県四日市市の「医心館四日市」のM&Aを持ちかけて来た。同施設は2023年3月にフレアスがリニューアルオープンさせ、稼働率100%を達成。現在、グループ内では収益トップの施設となっている。

高齢者からのニーズが高い訪問マッサージ

〝看取り難民〞増加で30倍の市場ニーズ

 ホスピスは一般的に余命半年以内の人が入院入居の対象となり、積極的な治療はせず、代わりに痛みや苦痛を和らげるケアを受けながら人生の終末期を過ごすための施設だ。超高齢化社会の進展で、病院のベッド数は不足している。団塊の世代が後期高齢者の年齢に差し掛かっていることに加え、75歳以上のうち80%が病院で亡くなるという前提で考えると、2025年以降は終末期患者を看取るためのベッド数が大幅に不足する。2030年予想では、47万人の患者を病院で看取ることができなくなると言われている。
 今後は、終末期を過ごす場所の選択肢の一つとして、ホスピスのニーズが急速に高まっていくことが予想される。
「ほとんどの人が病院で亡くなるというのは味気ないと思いますし、国民も望んでいないのではないでしょうか。住み慣れた一番の家で、それが無理なら住み慣れた地域で、わがままに過ごして自由に亡くなっていくのが良いのではないかと思います。そこでホスピスに注目が集まっているのです」(澤登社長)
 国内にあるホスピスは、現状で200施設に満たないと言う。1施設当たりの入居可能数が50人と推計しても約1万人前後しか利用できない計算だ。こうしたことから、今後ホスピス市場には倍のニーズが見込めるという。
 同社は今後、ホスピスの開設を加速化し、全国展開を進めていく。
 すでに満床となっている静岡の施設では、入居待ちの患者がいることを鑑み、近くに2号店目をオープンさせる計画だ。そのほかにも、2024年中には埼玉県の草加、神奈川県の厚木、小田原などでもオープン予定。2025年には、三重県の四日市の2号店、静岡県では3号店の開設が予定されている。
 2025年3月時点でホスピスの運営拠点数10拠点を目指している。さらに、中期経営計画では、2027年3月末時点で全国拠点、居室数1006室を見込んでいるという。しかも現時点で運営されているホスピスの規模は、入居数30人を下回る規模だが、今後は入居可能数40人以上を前提に大型化していく予定だという。

【フレアスメディカルケアホーム】「ホスピス」主体に施設介護事業で急成長(後編)

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