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【Hot Topic】フランチャイズ法律相談

公開日:2024.08.15

最終更新日:2024.08.15

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

リサイクルやブランド品買取の広告を出す際は注意が必要
〜買取業への景品表示法の適用について〜

Q:フランチャイズ・ビジネスではリサイクル業やブランド品の買取ビジネスが人気ですが、最近、買取業にも景品表示法が適用されることになったと聞きました。景品表示法が適用されたことで、リサイクル業やブランド品の買取業者は、どのような点に注意すべきでしょうか?

1.買取業に対する景品表示法の適用

①商品の産地や効能が偽装され実際よりも良く見せかける広告がされたり、商品に過大な景品の提供が行われると、消費者がそうした広告や景品につられて質の良くない商品・サービスを買ってしまうおそれがあります。こうした不当な表示や過大な景品から一般消費者を保護するための法律が「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」です。
 景品表示法は、消費者を誤解させるような間違った広告や誇張された表示(優良誤認表示、有利誤認表示、誤認される恐れがある表示)を禁止するとともに、消費者が景品につられて粗悪な商品を購入することを防止するために、商品購入に際して提供される景品類の最高限度額等を定めています。↓参照1
②景品表示法に違反した場合、消費者庁や都道府県は当該事業者に対して措置命令を出します。例えば事業者が商品の産地を偽った広告を出した場合、「当該広告の禁止すること」「違反したことを消費者に周知すること」「違反行為を繰り返さないこと」などが命じられます。さらに違反行為に対しては課徴金の納付が命じられるので、事業者にとっては非常に重い負担となります。景品表示法違反を理由にメルセデスベンツ日本法人が12億円もの課徴金納付命令を受けたことは記憶に新しいところです(令和6年3月12日消費者庁)。

2.令和6年4月の運用基準の改正

①景品表示法第5条は「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」として禁止される表示方法等を列挙しています。このように景品表示法は「自己の供給する商品又は役務の取引」を対象としているので、従来は、自己の商品を提供しない買取業には適用されないと理解されていました。しかし、近年「どんな○○でも高額で買い取ります!」などと広告しておきながら実際の買取金額はそれよりも著しく低かったなどの消費者トラブルが増加しました。そこで、令和6年4月に景品類等の指定の告示の運用基準が改正され、買取業も景品表示法の対象とされることになりました。すなわち、自己が一般消費者から物品等を買い取る取引も、それが、当該物品等を「査定」する等して当該物品等を金銭と引き換えるという「役務」を提供している場合には、「自己の供給する役務の取引」に当たるので、景品表示法の対象となることが確認されました(改正運用基準3(4))。↓参照2
②今回の改正は2024年4月18日から施行されています(不当景品類及び不当表示防止法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)等に関する御意見の概要及び当該御意見に対する考え方No.64)。ですから、買取業FCでは、直ちに対策する必要があります。↓参照3

 

3.買取業における注意点

①今回の改正に先立ち、景品表示法検討会では「買取サービスにかかる消費者トラブル事例」として以下の事案が報告されています。そのため、これらの行為は景品表示法違反と認定される可能性があります(景品表示法検討会報告書26頁)。
◆折込広告に買取実績として着物が50万円などと記載してあったので、不要な着物を買い取ってもらおうと来てもらった。一枚一枚査定をしていたので1枚当たり1万円くらいにはなるのかと思っていたら、100円から高くても1000円ほどで、数十点あったのに全部で9000円ほどにしかならなかった。
◆ヒーターの処分をするため、インターネットで買取業者の広告を見て電話をかけ、家に来てもらった。広告には「家にあるものなんでも、壊れていても負担ゼロ」と書いてあったが、「古いので買取できない、逆に処分費が必要だ」と言われた。その後「何か貴金属を買取に出してくれたら処分費は無料で良い」と言われた。
②今回の改正では「査定等」という役務の提供が景品表示法の対象とされています。ですから、全ての古物の買取が景品表示法の対象となるわけではなく「査定等」をする場合が対象となります。例えば金券ショップで1万円の全国百貨店共通券を無条件に9500円で買い取る行為は、「査定等」を行っていないので景品表示法の対象ではありません(考え方No.52)。但し、「買取額のつかない物品を処分すること」は「査定等」に含まれるので(考え方No.60
)、「この御着物は値段が付けられないですね。こちらで処分しておきますよ」と言って引き取る行為は景品表示法の対象となります。
③その他、景品表示法の適用については消費者庁のHPにQ&Aが載っていますので、ブランド品買取やリサイクル業のFC本部は、消費者庁のHPを必ず確認するようにしてください。↓参照4

4.FC本部と加盟者との間での景品表示法上の問題

①景品表示法は、事業者内部において景品表示法に反するような表示を防止するための必要な措置を講じることを求めています(景品表示法第26条)。
 どのような措置を講じるかは事業者の規模等によって様々ですが、少なくともFC本部としては社内に表示等を管理する担当者を置くとともに、景品表示法の考え方を自社の役員や従業員に周知徹底させておく必要があります。
 また、事業者が表示等の作成を他の事業者に委ねる場合、当該他の事業者に対しても同様の対応を行うことが求められるので(「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」参照)、買取業のFC本部が加盟者に宣伝広告活動を委ねている場合は、マニュアルや研修を通じて加盟者に対しても景品表示法を周知徹底させておく必要があります。FC本部の指示で加盟者の店舗において不当な景品が提供された場合、FC本部自身の景品表示法違反となります(運用基準4(2)エ②)。
 なお、本部とは別に加盟者自身も景品表示法違反を防止するために措置を社内で講じる必要があります(消費者庁「指針に関するQ&A」Q30)。↓参照5、6
②では、加盟者が景品表示法違反をした場合、FC本部も景品表示法違反の責任を問われるでしょうか。
景品表示法違反は不当な表示をした事業者を基準とするので、加盟者が景品表示法違反をしたからと言って、直ちにFC本部が責任を問われるわけではありません。
 しかし、加盟者の広告が景品表示法に反することを知りながらそれを放置し本部もその広告の効果を利用していたような場合は、本部自身の広告行為と評価される場合もあり得るので、その場合は本部も景品表示法上の責任を問われる可能性があります。
③今回の改正は一般消費者が不当な表示等から不利益を被ることを防止することを目的としているので事業者間の取引は想定されていません(考え方No.58)。
 買取業FCでは、加盟者が消費者から買い取った商品をFC本部がさらに買い受けることがありますが、FC本部と加盟者の間の取引には景品表示法は適用されません。

→参照1
消費者庁「事例でわかる景品表示法」
→参照2
消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」
→参照3
消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法施行規則の一
部を改正する内閣府令(案)等に関する御意見の概要及び
当該御意見に対する考え方」
→参照4
消費者庁「よくある質問コーナー(景品表示法関係)」
→参照5
消費者庁「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管
理上の措置についての指針」
→参照6
消費者庁「指針に関するQ&A」

弁護士法人心斎橋パートナーズ  神田孝弁護士(61)

Profile
1963年大阪生まれ、早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。チェーンビジネス法務を専門とし、多くのFCチェーン、レギュラーチェーンの顧問を務める。現在、弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員。㈳日本フランチャイズチェーン協会研究会員・専任講師。㈳中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。経営法曹会議会員。㈱あさひ社外取締役。趣味は筋トレと格闘技。2023年度全日本マスターズレスリング選手権78㎏級3位。
「ケース別 法的交渉の実務」(共著・青林書院・2020年)
「フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)」(三協法規・2018年)「事例で分かる外食・小売業の労務戦略(増補版)」(第一法規・2018年)
「フードサービス店長法律ハンドブック」(商業界・2013年)
「よくわかる!フランチャイズ入門」(共著・同友館・2011年)
など著書多数

弁護士法人心斎橋パートナーズ 

 

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