【京都北白川 ラーメン魁力屋】豊富な商品と多様な店舗タイプを持つ万能型ラーメン店(中編)
公開日:2024.08.29
最終更新日:2024.08.30
※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
魁力屋がこれまでFC展開をしてこなかったのは、ブランドの質を維持するためだという。そのため昨年までは、直営店とのれん分けの独立店で出店拡大を進めてきた。しかし、上場企業となった今、さらなる企業成長のためにFC展開に踏み切った。現時点で4社が加盟しており、FC11店舗を展開している。
独立支援を使った「社内FC」 外部企業による「社外FC」
--関西を中心に直営で出店拡大される一方で、2009年には社員独立支援制度を開始されました
藤田 やはり飲食店で働くスタッフは独立志向があります。当時の求人でのれん分けを謳う飲食店はありましたが、実例が1件も出ていないケースがほとんどでした。スタッフのキャリアプランを考えてものれん分けは必要だと思い、社員独立支援制度を始めました。当時、来来亭の社長と知り合ったのも大きいです。来来亭さんものれん分けをやっていたので、色々と教えていただきました。ただ、WEB上では私が来来亭さんで修業したことになっているのですが、実際にはしていません(笑)。ですが、今でも仲良くさせていただいています。
--社員独立支援制度を使うための条件は。
藤田 条件は3年以上の勤務で、うち2年以上は店長経験が必要です。また、商売するのに貯金がなくては話になりませんから、自己資金200万円を持っていることを条件としています。これらの条件をクリアし、本部がOKを出したら晴れて独立となり、その方が店長をしていたお店をそのまま譲渡します。現時点で、5人の社員が当制度を使って独立しました。彼らが運営する独立店のことを今期から「社内FC」と呼んでいます。現在、社内FCだけで24店舗になっています。
--そして昨年、いよいよ一般公募によるFC展開をスタートしました。
藤田 上場を機に、思いっきり舵を切りました。これまでFCは「ブランドを守り切れないからやらない!」と言い切ってきましたが、上場した今、加速度的に成長しようと思ったらジーの力も必要だと思いFC展開を開始しました。のれん分けの「社内FC」に対し、外部のFCは「社外FC」と呼んでいます。
基本的には外食経験のある企業さんと組みたいと考えています。もちろん簡単に再現できるよう仕組み化もしているのですが、それ以上にブランドを維持するのは難しいことだと思っています。そのため申し訳ないですけれども、脱サラ開業希望の方はお断りしています。
--現時点でのFC加盟社数と属性、店舗数を教えてください。
藤田 FC加盟店は4社11店舗で、メガフランチャイジーさんに加盟いただいています。多店舗展開力や人材育成力をお持ちのメガジーさんに加盟いただいているのは、とても心強いです。FC展開により、直営だけでは出てこなかった意見も貰えるようになりました。これを踏まえて会社の成長に繋げていきたいです。
客層の広さを強みとする魁力屋は、さらに店舗オペレーションを効率化させることで、出店可能エリアを拡張してきた。出店形態は3タイプで、現在はロードサイドが103店舗、商業施設が31店舗、ビルイン他が8店舗となっている。
絶妙な茹で時間の中細麺 スープ工場も不要
--出店場所は、ロードサイドが圧倒的多数である一方で、意外にも商業施設への出店が多いです。
藤田 私たちの強みは、ロードサイド・商業施設・ビルインと、店舗タイプを3つ持っていることです。この3つを成立させているチェーンはほとんどないと思います。たとえば、一風堂さんはフードコートに多数展開されていますが、ロードサイドは少ないです。逆に、ラーメン山岡家さんはロードサイドをやっておられるけれども、フードコートではあまり見かけません。このように、3タイプを成り立たせているチェーンは意外と少ないのです。
--魁力屋が3タイプで出店できている理由は。
藤田 客層の広さとオペレーションが関係しています。まず、背脂醬油ラーメンは商品自体、客層の幅が広いです。マルハニチロさんの調査によると、ラーメンの好みで断トツ人気なのが醤油で次に味噌、豚骨という順番になっています。醤油ラーメン自体が万人受けする商品なので、小さなお子様からお年寄りの方まで、親子三世代で来ていただけます。また、当店のラーメンに極端なインパクトはありませんが、毎日食べても飽きないラーメンといって、週2〜3回来ていただける味を目指しています。
--先ほどおっしゃっていたお子様用セットのおもちゃを用意するなど、ファミリーで来店できるような取り組みも客層の広さに繋がっているのですね。オペレーション面ではどのような工夫をされているのですか。
藤田 まずは、麺の太さがポイントです。ラーメンは、麺が太くなればなるほど茹で時間が長くなります。当店の中細麺は50秒で茹で上がるのですが、これがラーメンを作るスピードとぴったり合います。そうするとテンポよく杯数を出せるため、売上が上がるのです。これが、つけ麺ほどの太さになると茹で上がるのに3〜5分掛かるため、待ち時間が発生します。逆に、豚骨ラーメンによく使われる細麺は5〜10秒で茹で上がるので、ラーメンを作る作業が間に合わないんですよ。その点、当店は中細麺により迅速な提供ができるため、行列のできるフードコートにも最適です。
--自社工場を持たないのも特徴の一つです。
藤田 当店の背脂醤油ラーメンは、透き通った清湯スープです。スープの旨味はかえしに含まれる醤油と背脂に凝縮しており、店で簡単に炊けるようにしています。そのため、店で長時間煮込む必要もないですし、スープ工場も不要となります。
--麺やスープなどの調理オペレーションはかなり効率化されていますね。基本的に何人で営業しているのですか。
藤田 厨房3人、ホール2人の5人からプラス1人程度で回します。ホールスタッフが配膳と接客に集中できるよう、客席にタブレットオーダーを導入しました。しかし、すべてのオペレーションを効率化するわけではありません。たとえば、人気のセットメニューに焼きめしがありますが、これは店で炒めています。手間は掛かりますが、炒めている音やにおいでライブ感を演出できます。お客さんにライブ感を味わってもらえるよう、厨房はオープンキッチンにしています。
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