【連載第2回】高論卓説〜業界のキープレイヤーが語る〜(前編)
公開日:2023.06.16
最終更新日:2023.06.16
※以下はビジネスチャンス2023年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
第2回 外食事業
同じ業界、近しい分野で事業を行うFC本部の経営者同士が、本音で語り合う対談企画の第2弾。今回は外食事業の「ゴンチャ」角田淳社長と「バーガーキング」の野村一裕社長がゲストだ。タピオカブームの終焉と同時にコロナに見舞われ、暗雲が漂う状況を打破すべく2021年10月に着任した角田社長は、ティーブランドとしての地位を確立することに注力。一方野村社長は、2019年に同社に入社してから自社のブランドを尖らせる方向性を示し、強い愛を持つファンの掘り起こしに注力。今年、社長に就任した。強い個性とパワーでブランドを牽引する両者に、思う存分語り合ってもらった。
PROFILE つのだ・じゅん
1971年3月25日生まれ。ペンシルベニア州立テンプル大学卒業後、大手自動車メーカーに勤務。その後独立し、スポーツや音楽イベントの企画やマネジメントに携わる。約10年間スポーツマネジメント・マーケティングに携わり、2010年に日本サブウェイに入社。マーケティング・経営企画などを経て、2016年に社長、2021年にゴンチャ ジャパン代表取締役社長兼CEO就任。
PROFILE のむら・かずひろ
上智大学卒業後、MBA、一橋大学大学院国際企業戦略専攻。2002年にキリンビール株式会社入社。2019年に株式会社ビーケージャパンホールディングスに入社。同年新体制となったバーガーキング®のマーケティング戦略、新商品開発、ブランドコミュニケーションを指揮。2022年にCOO就任。マーケティング部門に加え、店舗開発やフランチャイズビジネス部門を統括。 2023年1月より代表取締役社長に就任。
ブーム終焉とコロナで迷走する社内 まずは社員のブランド認識の統一から
角田 現職の着任前、私はもともと「サブウェイ」で社長をしていました。2021年2月にゴンチャでCEOをしていた原田さんが突然辞任することになり、そのタイミングでゴンチャからお声がけをいただきました。しかしすぐにサブウェイを辞められる状況ではなかったため、時間に猶予をいただくことを前提に2021年10月に着任しました。
移籍の話をいただいてから改めてゴンチャの店舗を何店舗か現地調査をしたのですが、ガスを使わず電気だけで運営でき、6〜30坪まで店舗のバラエティがあり、パッケージとしてとても秀逸だと思いました。またまだ日本にティーカフェという存在がなく、新しいカテゴリーを作るチャレンジができることにも面白さを感じました。そしてグローバルブランドでありながら、まだ新しいブランドのため、自分で創り上げる余地があることに魅力を感じ、引き受けることを決めたのです。
野村 私は大学卒業後、キリンビールに入社し、近畿統括本部に配属。量販営業を担当していました。その後、会社からの勧めもありMBAを取得しました。取得後に本社配属になり、そこからマーケ人生が始まったのです。約15年間勤め、育てていただいたキリンビールへの想いは今でも強く、大好きな会社です。
その後、いくつかの企業を経て、縁あって2019年にバーガーキングに入社しました。ちょうど大きな組織変更が行われるようなタイミングで。入ってみると社内の体制が整っておらず、ヤバいところに来てしまったなと(笑)。でも3年間という短いスパンの中ですでに何度も転職をしていたので、とりあえずこのバーガーキングで頑張ろうと思い、その結果今年社長に就任しました。
角田 私が着任した時も、タピオカブームのバブルが弾けて売上が下がっているところに、さらにコロナがヒットし、社員が迷走気味でした。まだ日本に上陸して5年ほどしか経っていないのに、社長が3人代わっていましたし、どうなるんだろうという空気が流れていましたね。フランチャイジーさんたちも1日70万円売れていたところから、一気に3分の1にまで下がり、全体的に大きな不安が募っていたのです。
ゴンチャはタピオカ店として認知が広がってしまったのですが、当時の社内は目指す方向性もバラバラ。スイーツベースのブランド、お茶版のスタバ、特に意志を持っていないという層に分かれており、「改めてティーブランドを目指すんだ」と、社内の意識を統一することにまずは注力しました。
またどのビジネスでも前年をベースに経営計画を立てると思いますが、ゴンチャは日本に上陸してすぐにタピオカブームの恩恵を受け、その後コロナ下になったため、ベースになるものがなかった。ですから着任1年目は、ベースを作ることにフォーカスをしました。
一強ブランドへの対抗意識を前面に打ち出す ブランドを尖らせファンの好き度を高める施策
商品単価を上げ、熱烈なファンを育成 客単価が40%増、年9回の期間限定メニュー
野村 現在バーガーキングは、ブランドの性格を強めに出していく方向にどんどん進んでいます。もともとバーガーキングが日本に来たのは30年前。しかし一度クローズして、また再度日本に来て、運営がコロコロ変わるという複雑な経緯があったので、今はバーガーキングを愛していただいている人たちの掘り起こしをしているところです。高単価ではあるが本格的でおいしさにこだわった期間限定商品を打ち出すことで、ブランドを尖らせ、もっとファンになっていただくことを狙っています。
私はTwitterを常にチェックしているのですが、ありがたいことに「やっぱりバーガーキングだよね」と言ってくれる人たちが増えてきています。ファンであることに、段々プライドを持ってもらえるようになってきたのです。
ブランドを尖らせると、逆に嫌いだという人もどうしても増えてしまいますが、その意見に私が流されるとすべて崩れてしまうので、ファンの言葉を信じて突き進んでいる状況です。私が入社した2019年頃からお客様の購入単価は約30〜40%増加しています。また、2019年に比べると一店舗当たりの平均月商も大きく伸長しています。
角田 私もTwitterは毎日チェックしていますが、最近「スタバとゴンチャ」というワードが増え始めています。片や1700店舗以上のジャイアントブランドと、まだ100店舗程度しかないゴンチャが同じ土俵で語ってもらえるようになっているのです。それもスタバを意識して、期間限定メニューを展開してきた結果だと思います。
実は、現在半分以上の既存店舗の目の前にスタバが立地しています。現場スタッフからは、「スタバは年に12回も期間限定の新メニューを出しているのに、うちは1か月以上同じ新メニューを出していて、お客さまが全部取られている」と。そこで私たちは年に9回、大事な季節に絞って魅力を高めた期間限定メニューを作り、スタバのタイミングに合わせて展開するようにしたのです。施策としてはすごく当たったなと感じていますね。
野村 私たちもマクドナルドのことは、すごく意識していますしリスペクトしています。我々のようなハンバーガーチェーン業態にとって、マクドナルドが商売のバイブルであり、物差しになっているでしょうね。
ハンバーガーチェーンは数多くありますが、今後はよりファンを持っているブランドに、お客さまが集中していくことになるはず。マクドナルド一強は変わらず、これから完全淘汰が始まると予想しています。
私たちは、常に対マクドナルトという考えが頭の中にありますし、それを前面に押し出してきました。そうすることで、お客さまの選択肢をマクドナルドかバーガーキングの2つに絞ることができるのです。
一時期グルメバーガーと呼ばれる高級ハンバーガーが、次々に出てきましたが、私はどんどん頑張ってほしいと考えています。マクドナルドの一強が続くと、みんなハンバーガーのイメージが固定化され、安価な商品しか購入していただけなくなってしまう。でも600円出せばもっと美味しいものを作れますし、2000円出せば、もっと本格的で美味しさにこだわったものが作れます。グルメバーガーの方々が新たな市場を作ってくれたお陰で、我々の2000円のバーガーも受け入れてもらえるようになったと思っています。
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