【特別対談】高論卓説 地方を拠点に地域活性化を後押しするFCビジネス(前編)

公開日:2024.07.04

最終更新日:2024.07.04

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

時代の変化に合わせるチェレンジ精神で企業を拡大

 地方創生や地域の活性化を理念に掲げる企業は多い。過疎化が進む地方では、長年地元を拠点に事業を行ってきた有力企業が、雇用創出やインフラ整備など、人口の流出を防ぐ取り組みを行っている。FC本部とFC加盟店という立場の違いがあっても、自社の事業で地域の活性化に貢献したいという思いは同じだ。今回は、東北を中心に多店舗運営するメガフランチャイジーであるホットマン(宮城県仙台市)の伊藤信幸社長と、買取店「ブランドオフ」を国内外に展開するK-ブランドオフ(石川県金沢市)の山内祐也社長に、地方創生について語ってもらった。

BRAND OFF K-ブランドオフ(石川県金沢市) 山内 祐也社長(46)

PROFILE やまうち・ゆうや
1977年10月18日生まれ、岐阜県各務原市出身。2000年4月に株式会社コメ兵に入社。19年にK-ブランドオフの代表取締役に就任。21年、株式会社コメ兵ホールディングスの取締役に就任。23年、株式会社コメ兵の取締役副社長に就任。

 

 

 

 

ホットマン ホットマン(宮城県仙台市) 伊藤 信幸社長(74)

PROFILE いとう・のぶゆき
1950年1月生まれ、宮城県出身。1975年に株式会社ホットマンを設立し、1984年にイエローハットグループに加盟。現在はイエローハットグループ最大の加盟店であると同時に、TSUTAYAやダイソー、コメダ珈琲店やシャトレーゼなどのブランドも展開。一代で全国有数のメガフランチャイジーまでに成長させた。

 

 

 

大手と手を組み地域に根差す グローバル×ローカルの視点

ーーお二方はそれぞれFC本部と加盟店という異なる立場にありますが、それぞれ仙台、金沢と、地方を拠点にしているという共通点があります。地方を拠点にしている企業には、地域の活性化という役割を求められることがありますよね。
伊藤 私が商売を始めたのは51年前ですが、もちろん最初は大それた考えで商売を始めたわけではないです。どの経営者もやはり初めは、人に使われずに食べていきたいという気持ちで始めるわけです。
 ただ転機となったのが、「イエローハット」の創業者である鍵山秀三郎氏との出会いです。実は鍵山氏とはそれ以前から取引がありましたが、この人と手を組めば私の人間性も良くなるし、社員の人間性も良くなるんじゃないかなと感じて、加盟を決めました。これが社会性や公益性を意識したきっかけでもあります。そのような経緯で今から40年前にイエローハットに加盟して、現在は「TSUTAYA」や「アップガレージ」、「コメダ珈琲店」などの店舗を運営しています。
山内 御社のHPを拝見しましたが、社名の「ホットマン」とその由来が、まさしくその通りだと感じています。実は当社のブランドオフは、承継前の6年間赤字でしたが、M&Aによりコメ兵グループに参画した初月から黒字にできました。ですが、私は何も変えていないんです。もともとスキルのある人材はそろっているのに、良くない状態が続いていることで気持ちが落ちていたんですね。
 私自身、やっぱり気持ちがある人と働きたいと思います。以前より、スキルも大事ですが、良い上司の条件として「チームを明るくしてくれるか」「気持ちよく働けるか」が大事だと思っていました。そしてブランドオフに来て、全店舗で初月に黒字を達成して、気持ちだけでも結構変わるなということを実感しました。
ーー地方の現状を、伊藤社長はどのようにお考えですか。
伊藤 現在、地方はどこも老舗店が次々と潰れているように、ローカルだけでは難しい時代になっていると思います。今の時代の流れで大事なのは、大手と手を組むことではないかと思います。つまり、ナンバーワンと手を組むことが、私の基本的な考え方です。たとえば東北には、ヨークベニマルというスーパーマーケットがありますが、イトーヨーカ堂と手を組むことで大きく成長しました。そして今では、そこからさらに一歩進んでいるのではないかと感じています。たとえて言うなら、ブランドオフさんがネットを活用して事業をされているように、ネット商売に移れる会社であれば、一つの商売として強いと思います。
ーーブランドオフはグローバル展開に力を入れているイメージがありますが、ローカルでの戦いについてどのようにお考えですか。
山内 実のところ、コメ兵グループがグローバル展開していたこともあり、ビジネスマンであればグローバルを考えるのは当たり前だと私は思っていました。しかし、ブランドオフをM&Aした後に金沢を訪れた時に、金沢の皆さんは地元で働きたいと考えていることに気付かされたのです。どちらかといえばその方が多数で、私のような考え方をする人は少数派でした。
 ブランドオフをグループ化した時、日本のトップシェアをとって海外に行くことを目指していましたが、グローバルにしか目を向けていなかったんです。実際の戦いはお客様がいる場所で決まるということを分かっていませんでした。
ーー企業が成長するためには、グローバルな視点だけではなく、地域に根差した考え方も必要ということですね。
山内 私たちがグローバルな事業をしたい気持ちと、地元の人たちのローカル志向を合わせた言葉が「グローカル」という造語です。たとえば、そのエリアで採用した社員に、全国転勤のような働き方をしてもらうのは不可能です。しかしFC店であれば、そのまま地元の人に働いてもらうことができますし、結果地域の一番店を作ることができます。なぜなら、地元の人たちは、誠実に長く働ける商売を求めている方が多いからです。
 販路という意味ではグローバルも重要ですが、お客様に一番近いところはローカルで決まります。グローバルとローカルを繋ぐことで、非常に強いビジネスになると思っています。当社のFC展開も、それに応えられるパッケージを作ろうと考えたのが始まりです。
伊藤 企業成長という点で当社のお話をすると、私が日頃社員に言っているのは、時代に見合った変化に対応すること。そして、いかに社員を採用して育てるかということです。特に、近年は若者人口が減っているので、社員採用にとても力を入れています。
ーー地方の場合、若者人口の減少は非常に深刻な課題ですね。
伊藤 年々その傾向は強くなっており、人材の確保が難しい時代です。そこで当社が運営するイエローハット90店舗では、海外の技能実習生を76人採用して、働いてもらっています。
山内 御社は人材や組織構築の部分に注力されているので、技能実習生の取り組みにも大変興味があります。

高論卓説 地方を拠点に地域活性化を後押しするFCビジネス(後編はこちら)

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