【特別対談】高論卓説 市場成長にともない優良企業が続々参入

公開日:2024.09.02

最終更新日:2024.09.03

※以下はビジネスチャンス2024年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

社会性貢献性の高さが魅力、Z世代中心に業界イメージが変化

 コロナ禍以降も年々市場規模が拡大し、2030年には4兆円規模になると言われているリユース市場。その伸びに期待を持ち、異業種からリユース業に参入するケースも増えてきている。今回の対談では、ブランドリユース店「BRAND OFF」を国内外で展開する K-ブランドオフの山内祐也社長とリユース経営のコンサルティング事業を手掛けるA-DOSの福本晃社長の両名に、リユース業界の可能性について語り合ってもらった。

BRAND OFF K-ブランドオフ (石川県金沢市) 山内 祐也社長(46)

PROFILE やまうち・ゆうや
1977年10月18日生まれ、岐阜県各務原市出身。2000年4月に株式会社コメ兵に入社。19年にK-ブランドオフの代表取締役に就任。21年、株式会社コメ兵ホールディングスの取締役に就任。23年、株式会社コメ兵の取締役副社長に就任。

 

 

 

 

A-DOS (京都市下京区) 福本 晃社長

PROFILE ふくもと・あきら
1975年3月1日生まれ。京都府京都市出身。1998年に株式会社船井総合研究所に入社。2000年にリユース業界コンサルティング部門を立ち上げる。2017年にリユース業界専門コンサルティングを行う株式会社A-DOSを設立。現在に至る。

 

 

 

企業のFC加盟が増加 AI進化で参入障壁が低下

山内 これまで BRAND OFFのような買取FC業に参入する方は、個人の方が多かったですが、昨今いくつもの事業を展開されている大きな企業の参入が増えてきています。
 また、祖業が上手くいかなくなり、事業転換のため参入する方も多かったのですが、事業の多角化を目的とした参入が増えているように思います。福本さんのもとにご相談に来る方はどういった目的で来られるのですか。
福本 私どものもとには、リユース業界が伸びていることを知り参入を検討され、実際の市場環境を確認したいという問い合わせをよくいただきます。コロナ明けから特に相談が増えてきています。
 実際、私どもがお手伝いした一つの事例として、ある地方の優良企業が事業の多角化を目的に参入したケースがありました。その企業は本業で中古車販売業をしており、地域で圧倒的なシェアを持っています。しかし県外に広げていくことも難しく、本業で今以上に伸ばすことは難しいと判断されました。そして当社にご相談をいただき、中古工具の専門店の開業のお手伝いをさせていただきました。
山内 右肩上がりの市場という期待感が参入を増やしているのでしょうね。私はこの年ほどで参入障壁が格段に下がったことも、参入が多い要因だと考えています。ブランド品など人気度やプレミアム感など、付加価値が高いものになればなるほど、値付けが難しくなります。売値が高いゆえに何かあった時のリスクも大きく、専門性が高く、以前は匠を作り、徒弟制度で教えていくような業界でした。
 しかし現在はテクノロジーの進化で、真贋の判断がAIでできるようになったり、またノウハウもかなり高いレベルで体系的にまとめられたり、教育もイーラーニングでできるようになったりしています。そんな時代の流れで参入障壁がほぼなくなり、FCも増えています。
 また、現在リユース業に対するイメージもだいぶ変わってきています。特にZ世代を境に、リユース業は社会貢献度の高いものと認識されているようです。
福本 Z世代への浸透は私も強く感じています。ある地域を拠点に、多角的な事業を展開されている会社があります。その会社では新卒採用者に、どの事業に携わりたいのか希望を聞くそうです。そしてその希望と適性を見て、配属先をマッチングさせています。
 実際にお話を聞いたところ、5年ほど前まではリユース業の人気がなかったことに対し、直近ではリユースを第一希望にする人が圧倒的に増えたそうです。資源に対する捉え方が若い人たちほど、変わってきていることを実感しました。
山内 私には中学1年生と小学5年生の息子がいるのですが、私がメディアに出た時に、「お父さんの会社ってすごいね」と言われたことがありました。
 私は最初ロレックスなどのブランド品を扱っていることについて、すごいと言われたのだと思いました。私自身、ロレックスやルイヴィトンなどハイブランドを売りたくて入社しているわけですから(笑)。
 しかし、息子からは「リユース業なんてカッコイイじゃん。3Rじゃん」と言われたのです。リユースについて教科書に載っており、授業で習ったそうです。それを聞いた時は泣けるくらいに嬉しかったですね。

買取FCの差別化は販路 ニューヨークへの進出を発表

福本 市場も伸びており、社会貢献度の高さも認められ、リユース業界は総じて先々も明るい業界といえそうですね。御社のような買取FCチェーンが続々と増えていますが、一方でなかなか差別化が難しい業態だと思っています。その点、御社が意識しているポイントはありますか。
山内 仰る通り、FCの仕組みで差別化することは非常に難しい業態です。差別化できるポイントとしては、商品を買い取った後の強い販路を持っているかどうかだと考えています。B to Bのオークションがかなり成熟してきており、各社それぞれがプラットフォームを構築しています。
 つい先日、当グループはニューヨークへの進出を発表しました。アメリカに拠点を作ることで、アメリカにも輸出ができるようになるのです。もしアメリカが一番高く売れるのであれば、その販路をグループ全体が使え、さらにFC店にも開放することができます。
 これまでに一緒に1〜2年やってきた加盟店の方たちには可能性を感じてもらい、モチベーションアップに繋がるものだと考えています。この件も含め、今後も本部で提供できるものがあればどんどん提供し、加盟店さんとの関係性をより強固なものにしていきたいと思っています。
福本 今回のニューヨーク進出を機に、加盟店さんが買い取った商品が「ニューヨークの5番街の誰かに売れた」ということが実現され、その情報を加盟店さんに共有できるようになれば、すごく面白いのではないのでしょうか。自分たちが買い取った商品がどこの誰に届いたかが分かると、バイヤーのモチベーションアップにつながるように思います。またお客様にしても、自分が使用していた商品の行き先が分かり、感謝されるのであれば、「せっかくであれば BRAND OFFに売ろう」と新しい売却動機になるかもしれません。
 以前から色々なリユース業の方たちに、このようなモノだけではなく、感謝や喜びが循環する仕組みができたら業界の可能性がもっと広がると伝えていたのですが、実現できる会社はなかなかありませんでした。ただ御社グループのようなリーディングカンパニーであれば、十分可能性があると思います。今回お話を聞いて、改めてリユース業は海外に打って出られるビジネスなのだと実感しましたし、その可能性も感じさせてもらいました。

 

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