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【メガフランチャイジーの経営哲学・メガエフシーシステムズ】現場上がりの3代目社長が実践する

公開日:2025.03.27

最終更新日:2025.04.01

※以下はビジネスチャンス2025年4月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

「人材育成の仕組み化ありき」のメガジー経営

 メガエフシーシステムズは、「吉野家」「牛角」をはじめ外食FCの多ブランド・多店舗展開で成長してきた企業だ。しかし、50年以上の歴史の中には、急速な多角化・多店舗化が裏目に出て事業撤退や閉店を余儀なくされた時期もあった。2024年7月に3代目社長に就任した久保公司氏は、そうした過去の教訓を生かし、「人材育成の仕組み化ありき」の出店戦略で第二創業的な再成長を目指している。

メガエフシーシステムズ[神奈川県相模原市] 久保 公司社長(47)

Profile くぼ・こうじ
1977年福岡県生まれ。駒澤大学中退。2000年メガエフシーシステムズ株式会社の吉野家店舗にアルバイト入社。 2003年社員となりFC吉野家店舗店長9店舗経てエリアマネジャー昇格。2020年ベーカリー事業立ち上げ後、かつ丼、焼肉、介護等の運営統括、人事採用、事業開発等の経験を経て2024年7月代表取締役に就任。

 

 

 

外食事業をメインに5業態21店舗を展開 BSE後吉野家の一本足打法からの脱却へ

歴史〜会社沿革〜

 同社は現在、神奈川県相模原市を中心に「吉野家」6店、「牛角」5店、「かつさと」2店、「HEART BREAD ANTIQUE(以下: アンティーク)」4店を展開。ほかにも介護ビジネスの「茶話本舗」4店を経営しており、計5業態店を展開している。正社員45人、パート・アルバイト500人が在籍しており、現在の年商は約17億円だ。
 久保公司氏は同社の3代目社長に2024年7月に就任した。久保氏は創業家とは姻戚関係はなく、同社にアルバイトとして入社し、現場から経営トップに就いた。
「私は2000年に吉野家でアルバイトを始め、1年半後に社員となり、色々な店舗を渡り歩きながら、吉野家の店長を17年間勤めました。吉野家の運営に人生を懸けており、年間店長表彰など、数々の賞をいただきました。その後エリアマネージャーとなり、採用の責任者や新業態のベーカリー『アンティーク』の立ち上げを経て2020年に営業部長に就任。役員として現場の経営を任されました。そして2024年に現職に就きました」
 同社は1968年に湯河原で創業。当初は旅館向けの鮮魚卸や和食店を経営していた。しかし、職人依存になってしまう飲食経営に疑問を感じていた創業者が、当時話題になっていた吉野家に注目。1973年に第1号FC店を出店した。調理からオペレーションまで全てマニュアル化されており、誰がやっても同じ味を提供できるFCチェーンの仕組みに強く魅かれた結果の決断だった。
「当社の創業者は、吉野家を見に行き、職人を必要としないマニュアル化されたシステムに魅力を感じたそうです。すぐに加盟を決断し、当社が第1号加盟企業になりました。創業者は非常に目利きで、良い物件を見つけては、次々に出店をしていったと聞いています」
 その後も本部がスタッフ派遣から店の運営まで全てサポートしてくれる体制を作ったため、同社は次々新店を出店していった。
 職人依存の和食店経営からの脱却に成功し、吉野家加盟第1号として多店舗展開を進め、2000年には年商40億円を突破。社名も「メガエフシーシステムズ」に変更し、外食産業の成長とともに業績も好調に推移していた。
 しかし、2001年のBSE問題による牛丼販売中止が経営に大打撃を与え、吉野家事業は大赤字に転落。外食一本のリスクを痛感し、多角化戦略を進めることとなった。
 同社はその後、吉野家一本足からの脱却を図り、多角化に踏み切りさまざまなFCに加盟していった。幸いBSEになるまで、吉野家事業が好調で資金も潤沢にあった。そのため、多角化への投資は急ピッチで、次から次へと新事業に取り組んでいったという。
 しかし、あまりに矢継ぎ早に多角化を推進しすぎてしまった。新たなFCに加入したはいいが、人材が追いつかなかったのだ。結局、モノになった事業は少なかったという。「サンマルク」「ドミノピザ」「高田屋」などの外食だけでなく、子供服、古着屋、便利屋、学習塾などのFCにも参画したが、今はいずれも残っていない。
「私は入社以来、17年間吉野家の店長を務めており、本社の多角化展開には関わっていませんでした。しかし、私が吉野家の店長をやっている傍らで、新業態が出店しては消え、出店しては消えを繰り返していました。とんでもない数のFCブランドに加盟し、何が始まりいつ辞めたのか記憶にも残らないぐらいです」

同社は2030年までに「吉野家」10店舗体制を目指す

多角化失敗の原因は人材を育てなかったこと ミーティングを習慣化してマネジメントを強化

改革〜2020年以降〜

 久保氏は2020年に営業部長に就任し、出店戦略を見直した。新規事業は「自社理念と合致し、社内に本気で取り組む人材がいる」ことを条件に慎重に進め、過去の成功と失敗を分析し、撤退リスクを抑えるルールを確立。それに沿って実践するようにしており、以後は事業の撤退はないという。
「事業が次々と入れ替わっていく様子を会議に参加しながら見続けていましたが、自分が役員になった時に改めて振り返ってみました。当社がこれまで参入して撤退した業態の中には、現在伸びている業態もたくさんあります。良い業態を選んでいたのに、当社が失敗してきたのは、人を育てられなかったからです」

 たとえば、塾のFCに加盟した際には、校長先生の経験がある人を連れて来て、運営を任せた。ところが経営は素人だったためか、まったくうまくいかず、一瞬で潰してしまったという。ほかにも新たなFCに加盟するにあたって、その業界の経験者などを外部から連れて来ては任せたものの、立ち行かなくなって撤退した例は数多くあったという。

「結局、これらの失敗例を分析した結果、自社で人材を育てていないことに原因があると思い至りました。加盟すると決めたら、自社で人材育成をする覚悟を持たないといけない。その教訓を胸に、自身で人を育てると決め、現在は徹底して守っています」
 以来、久保氏は常に店長となる人材を育てることを意識して教育にあたっているという。それは社員だけに留まらずアルバイトにも及んでおり、各店舗のアルバイトのトップを本社に呼び、直接指導することもあるという。現在は、新規出店した際にすぐに配置できる店長候補の人材を2人待機させるまでになった。
 また、2018年に採用を担当するようになってから、外国人採用を積極的に行ってきた。20社もの仲介会社と取引し、現在は信頼できる会社2社に絞っている。ベトナム人、ネパール人、ブラジル人など、多国籍の人材が活躍しており、今後はミャンマーからの採用も予定しているという。
 人事・教育面の安定化の一方では、日常のマネジメントでも、ミーティングのルーティン化などの習慣化を図ってきた。というのも、同社が店舗展開する地域は、神奈川県全域と東京西部、さらに北関東の埼玉、群馬にも広がっている。広範囲になったが、店長会議は必ず月に1回、本社に店長を集めて行っている。また年2回は全社員会議も開催。さらに、日々の店舗売上を、久保氏が毎朝全店の数字を集計してメールで配信し、全社員が必ず見るように徹底しているという。
 現在、店舗経営のKPIとして重視しているのは「予算営利比」「人件費率」「QSC」。特に人件費は店舗ごとに細かく基準を設定し、QSCは配分を2倍にしてプロセス評価を強化している。
「全事業の売上を集計して、1時間ほどかけてメールにまとめて配信することは、私の朝一番の仕事です。今は最低賃金が上がっているため、人件費率が非常に重要です。また、近年は本社のある神奈川県のほかに、北関東を狙って出店をしています。それは人件費が東京や神奈川に比べて圧倒的に下がるからです。出店場所としては、そのエリアの年収層を重視します。商圏分析を行い、年収層が500万円ほどの地域に絞って出店するようにしています」

20年に新規事業としてベーカリー業態をスタート 女性人材を積極的に採用、美容事業の加盟を予定

今後〜事業展開〜

 久保氏が営業部長に就任以降、新規事業展開として、力を入れて来たのはベーカリー業態の「アンティーク」だ。アンティークは久保氏が発起人となり、強い情熱を持って2020年に加盟した業態だ。
「アンティークとの出会いは2012年頃、まだ私が吉野家の店長をしている時のことです。たまたま近くにアンティークができ、入店してみると作り込まれた世界観に圧倒されました。見たことがないパンが並び、来店客の多くは誰かにプレゼントをすることを目的に訪れていたのです。誰かにプレゼントしたいと思わせる、『行く意味のあるパン屋』という価値を感じました」
 だが、当時は一店長に過ぎなかった久保氏が「是非とも加盟したい」と進言したものの、大反対を受けあえなく断念せざるを得なかった。まだ発言権がなかったためだ。そこで久保氏はガムシャラに働き、役員になるなど社内での立場を上げ、2020年に再定案。今度も反対の声は強かったが、中島康博社長(当時)に直談判。ほかの役員の反対を押し切って、加盟にこぎつけたという。だが、タイミングが悪いことに、1店舗目オープンと同時にコロナ禍が始まったのだ。
「8年越しの念願が叶ったのですが、コロナ禍となり、出店していた大型商業施設がクローズして営業ができず、当時は生きた心地がしませんでした。それでも営業を再開すると収益を上げ、当社のここ数年の中で一番の月商を出し、月間営業利益も過去最高を達成。この結果で全ての苦労が報われました」
 現在では売上・利益の柱事業に成長した。
 さらにこのベーカリー事業を始めたことによって、予想外の好影響があった。それが、女性人材が増えたことだったという。
「アンティークを立ち上げた際、女性の応募が多く予期せず女性人材が増えました。女性と働き驚いたことは、成果創出力の高さです。業態への愛が強いということも影響していると思いますが、販促物を考え作るなど、売上を生み出す力を持っていることを感じました。今後さらに女性の力を使うことは必須になるでしょう」
 ベーカリー事業の開始により、女性社員が増え、多様な視点を持つ人材が加わった。社員自ら販促活動を行い、売上向上に貢献するなど、主体的な姿勢が育ち、人材の成長も進んでいる。結果として、次の出店に向けた準備が整い、まさに「人材ありき」の経営が実現されている。
 現在、久保氏は客としてもスタッフとしても、女性にフォーカスした業態への加盟を検討しているという。昨今は健康を意識する人や、美を追求する人が増加し、心の豊かさを求めていることを感じているからだという。美意識の高さに目を向けて、ピラティス、脱毛、ホワイトニングなどの健康、美容関連事業への加盟を考えている。
 その上、久保氏は既存業態の増店を狙いながら、これまで取り組んでこなかったラーメン事業への参入も前向きに検討している。しかし、ラーメンは人気トレンドが年々変わりやすくなっているため、メニューの切り替えがしやすいブランドを狙って模索中だ。
「吉野家はどうしても営業時間が長く、スタッフへの負荷が掛かります。そのため似たような業態であるラーメンはずっと避けてきました。とはいえ、やはり当社が一番得意とするところは飲食業のため、ラーメン業態の加盟も検討しています。ただ、豚骨専門、醤油専門など味を限定してしまうと、飽きられてしまう危険性があります。そのため、豚骨に飽きられてきたら味噌に切り替えるといった、トレンドに合わせて変えられるような業態に加盟したいと模索してきました」
「昨今は新興FC本部が増えすぎて、かえって新しい業態を探すのに非常に時間が掛かります」と苦笑する久保氏だが、月に何社も面談しながら、ようやくブランドを絞れてきたという。
「2025年中に6業態目を出店することが目標です」

会社概要

メガエフシーシステムズ
代表者 久保公司
所在地 神奈川県相模原市
設 立 1968年7月
資本金 3000万円
店舗運営
吉野家 246愛甲石田店/八王子大和田店/相模原二本松店/青梅新町店/相模原緑が丘店(業務受託)/相模原富士見店(業務受託)
牛角 小田原店/白楽店/鴨宮店/茅ヶ崎高田店/相模原淵野辺店
かつさと 八王子平岡町店/城山店
HEART BREAD ANTIQUE イーアス高尾店/スマーク伊勢崎店/アリオ深谷店/湘南モールフィル店
茶話本舗 大雄山亭/海老名かしわ台/小田原ほたるだ/材木座6丁目

 

 

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