【メガジーセッションレポート】メガフランチャイジー2社対談
公開日:2024.07.04
最終更新日:2024.07.04
※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
成功のためのブランド選定方法
去る2024年3月13日~15日、東京ビックサイト(東京都江東区)にて開催された第41回「フランチャイズ・ショー2024」。同イベント内でビジネスチャンスと日経FCショーがコラボし、パネルディスカッション「メガフランチャイジーが語る理想のFC本部とは」が開催された。パネリストとして登壇したのは、globの古市誉富社長とカワマートホールディングスの川間凡也社長。FC経営を成功させるために重要なのは、自社にとって最適なブランドに加盟し、本部と中長期に渡って事業を継続させていくことだ。そのため今回、両社にFCを運営していく上での自社の方針について語ってもらった。本ページではその時の様子をお伝えする。
「投資額が大きいほど敵は生まれにくい」
古市 誉富 社長
1961年、岡山県倉敷市生まれ。1984年に近畿大学を卒業後、小売り2社を経て1991年、青山商事株式会社に入社。洋服の青山を中心に店長・ブロック長を務め、本社複数部署を歴任。2011年7月に株式会社globを設立し、代表取締役社長(現任)。現在は青山商事株式会社の常務執行役員も兼務する。
「FCを始めたおかげで生き延びることができた」
川間 凡也 社長
1960年、高知県四万十市生まれ。83年に九州大学を卒業、8カ月間のサラリーマンを経て、84年1月に先代から養鶏業を引き継ぐ。2003年6月に多角化の一環として、初めてのFCであるはなまるうどん高知四万十店を開店。その後もお好み焼道とん堀や丸源ラーメン、コメダ珈琲店や大戸屋、シャトレーゼなどのブランドで店舗展開を進める。
事業の多角化にFCを採用 低リスクで新規事業に参入
――「焼肉きんぐ」をはじめとして79店舗(2024年3月時点)展開している globさんは、「洋服の青山」の青山商事が母体です。現在運営しているブランドに加盟したいきさつを教えてください。
古市 青山商事では10年ほど前から、少子高齢化やカジュアル化が事業に影響を与えるだろうという課題感を持っていました。そこで新たな事業を考えていたのですが、失敗しない事業をどう選ぶかということがまず第一優先。そこで、すでに成功している事業をなぞって低リスクで事業が始められるFCに目を付けたのです。そして、飲食事業に参入するために設立したのが当社です。当社が加盟する焼肉きんぐなどの本部である物語コーポレーション(愛知県豊橋市)に当時、青山商事は土地を2カ所ほど貸していました。その付き合いで事業内容をよく理解できていたことが、加盟の理由としては大きいです。
当社が加盟した際、焼肉きんぐ自体はまだ軌道に乗っていませんでしたが、必ず成功すると本部の創業者が自信を持って言っていたことを憶えています。実際、当時はまだ110億ほどだった同本部の年商は、今では1000億円に上ります。
――カワマートホールディングスさんは、最初のFC加盟ブランドはどのように決定されたのですか。
川間 当社は高知県四万十市という人口3万人の小さな町で、先代から引き継いだ養鶏業を長く続けています。しかし25年ほど前、狂牛病の世界的流行で、牛農家や焼肉屋が苦労されたのを目の当たりにし、当社も他人事ではないと強烈な不安に襲われました。資金や人、技術など、何もかも不足していた当社に何ができるかと考える中で、FCシステムを知り、人口3万人の街で可能性のあるFCを求めて多くの本部を訪ねました。そこで辿り着いたのが、日常食である「はなまるうどん」でした。しかし当初は、需要が見込めるとはいえ、3万人では無理だと本部に言われてしまいました。ですが偶然、運営会社であるはなまる(東京都中央区)の現社長である前田良博さんが四万十市の出身だったことで、無事に1号店を出店することができました。
――お二方とも、最初は「ご縁」という部分が大きいように感じます。
川間 この出会いが無ければ今の当社はありません。実際に、はなまるうどん出店の半年後、2004年1月に山口県で鳥インフルエンザが発生しました。当社は委託農場として鶏肉と卵だけを販売する事業をしていたのですが、鳥インフルエンザの影響で売上が40%落ちました。通常ならあっという間に倒産していたと思いますが、FCを始めたおかげで生き延びることができました。
地元客が求めるブランドを出店FCの良さは仕組化にある
――globさんは1年目7店舗、2年目2店舗と着実に出店を続けられたようですが、当時から出店の目標値はありましたか。
古市 青山商事の土地10カ所を活用することは決定していたため、どちらかというと目標値は店別の3年目黒字化の方でした。
FCには必ず、参考にする標準モデルがあります。しかし、あくまでも標準なので、どのように自社の土地や人、物に置き換えるかを決めずに事業拡大すると失敗します。焼肉きんぐの場合、モデルを当社に置き換えると、想定利益から5%以上減ってしまう非常に難しい計画でした。直営とは違う当社なりの形で、どう問題解消していくかという3年間の戦いでした。
――川間社長にとってFCを続けるか否かは結構重要な判断だったと感じますが、当時はいかがでしたか。
川間 鳥インフルエンザの件を経験し、今後は養鶏業に加えて、FCも自社の大きな柱として決めざるを得ない状況にありました。FC事業を育てるためにも、四万十市だけではなく高知県内でも展開することを決め、「お好み焼き道とん堀高知インター店」を、2店舗目として出店しました。
――加盟ブランドの具体的な選定基準を教えてください。
古市 近年、低投資で回収が早いビジネスモデルのFCが多いと耳にします。しかし当社が選ぶのはその逆で、できる限り投資額が大きいものを優先します。なぜなら、投資額が大きいほど敵が生まれにくくなるため、戦わずに済むようになるからです。FCの良さは仕組化ですが、いくらモデルが標準化されたブランドでも、近くによく似た業態が2、3店舗も出れば、正しいはずの損益モデルが一気に崩れてしまいます。つまり、最大手で投資額が高いブランドに加盟すれば、自社の努力次第できちんとした結果が残せるという考え方です。
――カワマートホールディングスさんは飲食を中心にさまざまなブランドに加盟していますが、1ブランドの増店を選ばなかったのはなぜでしょうか。
川間 当社の経営理念に、「老若男女、遍く、広く、リーズナブルに、お気軽に、末永く」という言葉があります。ですから、誰もがいつでも気軽に食べられる食を展開したいと考えています。
当初は1ブランドで四国や全国へ展開する方法も考えていたのですが、この理念に照らし合わせ、かつエリアを越えた事業拡大を狙うとなると、当社の力では確信が持てませんでした。そこで1ブランドでは出店に限りがあるため、自分自身も使いたいと思えるブランドで、かつ地元のお客様が求めているものを常に探すようにしました。地域や時代によって、お客様の要望は変わります。それを真剣に考えてくれる本部かどうかが重要です。
――コロナ禍で、それぞれの事業はどのような状況になりましたか。
古市 飲食業態は、アルコール提供ができず、強制的に時短になってしまいました。そのため赤字はしょうがないという雰囲気は間違いなくありました。私からはまず、「会社が潰れることはない」と社員に話したうえで、この状況で黒字にできたら自信がつくのではないかと伝えると、社員は計画作成をしてくれ、結果的に大きな影響を受けながらも黒字を維持しました。
一方で、リユース事業のセカンドストリートはコロナが追い風になりました。家にいる時間が伸びたことで、不要なものはお金に換えようと、多くの人が思ったようです。かなり好調に推移し、同事業に助けられました。
川間 特にセルフ業態は、店内商品の前にお客様が並ぶビジネスモデルなので、大きな打撃を受けました。感染対策で天ぷらへのカバーや個包装を実施したり、お客様に距離を置いて並んでもらうことなどは、すぐに本部から指示がもらえたため、当社はそれを実行していました。ただ、これらは対症療法的な対応だったため、事業としては苦しかったです。現在も、2019年比100%には戻っていないので、今後の発展の仕方を本部と考える必要があると思います。
非常時には意思決定の速さが鍵に 10年目途に再投資の必要性
――コロナ禍の本部の対応はいかがでしたか。
古市 当社の加盟先はいずれもコロナ流行直後で早い意思決定をされました。ロイヤリティは様子が分かるまで取らないという決定や、直営は休業するが加盟店は自由にしていいというものです。各々の事情に合わせて正しい判断をしてもらいました。
また、事業戦略の修正もしてくれました。損益モデルは必ず変化していきます。10年前に加盟したフードビジネスも、当時の原価や経費率のままで考えるととてつもなく悪化するわけです。経費が悪化する中で、モデルをアップデートできる本部が強いと思います。原価の修正には仕入れ先を変えたり、メニューを変更したり、もしくは採用や販促の手段など、事業戦略において修正せざるを得ません。そして、本部がその能力を持っているか、損益モデルをどう作り替えるかはすごく大きなテーマだと思います。
――損益モデルは、本部から提示されたものを自社内で再構築していくのでしょうか。
古市 そうです。多くのモデルは、事業に直接関わる経費しか見込んでいませんが、当社は売上が下がった時でも特定の利益が出るように、「本部費」という管理費で、あらかじめ経費を少し多めに見積もります。自社でどのようにモデルを運用するかを決定しておかないと、状況次第では見込みの利益が出ないことが起こり得ます。ですから本部のモデルに自分たちの想いを少し乗せた形を、ぜひ決めてほしいと思います。
――川間社長はコロナ禍で、本部とどのようなやりとりをしましたか。
川間 ロイヤリティや売上保証などの金銭面です。本部にも都合があるため、必ず求めるというわけではないですが、想定できない事態であることを踏まえたうえで、対応の仕方には各本部で大きく違いがありました。今回のような事態が今後起きるか分かりませんが、FCビジネスというのはパートナーシップを組んで加盟店と本部が一緒に展開するので、共同作業をより緊密に行いたいです。
――古市社長はどのような本部が理想的だと考えますか。
古市 事業開始から10年経ち、既存店の再投資が大きな課題の1つです。契約の時点から、リニューアルという言葉で再投資を契約条件としている会社も、加盟側に任せる方針の会社もありますが、実際はいずれも10年を目途に再投資をしなければ必ず売上が下がります。ですが、再投資をして必ず売上が伸びる保証はないので、再投資のタイミングや再投資による利益の増加見込みなどを本部に確認しておく必要があります。当社も10年が経った今、該当する店舗は全事業でリニューアルを行っていきます。
また、コロナ禍においてはグループ全体で一時的に出店を止め、既存事業を徹底的に伸ばすことを目標にしました。そして、全事業がコロナ前より10%以上売上が増加しています。コロナ禍で既存事業を大事に再投資してきたことが結果に出ていると思います。既存事業の再投資やその効果をどう考えているか、事業を始める時から抑えておくのは本部を見るポイントとして重要な項目です。
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