【サンクゼール】企画から販売まで「食のSPA」ビジネスモデル確立(前編)
公開日:2024.01.06
最終更新日:2024.01.06
※以下はビジネスチャンス2024年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
和食加工品店「久世福商店」149店展開
サンクゼール(長野県上水内郡)は、ワインやジャムなど、長野県発の洋風食料品店「サンクゼール」16店舗、全国の和食品を扱う「久世福商店」149店舗などを展開する、自社ブランドを中心とした加工食品の製造・販売企業だ。コロナ禍での構造改革期を経て売上高・営業利益ともに急成長し、2022年には東証グロース市場に上場を果たした。2024年3月期は前年同期比10.3%増の売上高197億1100万円、営業利益は同5.1%増の16億8100万円と引き続き好調を見込む。
Profile くぜ・りょうた
1977年生まれ、長野県出身。2002年、セイコーエプソン入社。2005年に斑尾高原農場(現サンクゼール)に入社し、2008年に経営サポート部部長、 2017年に代表取締役社長に就任。その後、2018年にサンクゼール代表取締役(現任)、St.Cousair Oregon Orchards,Inc.(現St.Cousair.Inc.)非常勤取締役に就任(現任)。
同社は1975年、創業者の久世良三夫妻が長野県で始めたペンションからスタートした。宿泊者向けに提供していた手作りジャムが評判を呼び、外販する傍ら製造拠点を確立。ワイナリーやレストラン、農業生産法人などを作り、ワイン用のブドウの生産を進め、現在のビジネスモデルに繋げた。
4年間で営業利益率約4倍 コロナ契機にカスタマー対策強化
――今期も増収増益を見込んでいます。
久世 コロナ禍では、業績が悪化した都市部や観光地の店舗を戦略的に撤退し、高採算店舗のみに集約しました。また、2017年よりスタートしている米国事業ではコスト抑制を進めました。こうした施策の成果があらわれてきたのも要因でしょう。
――2018年3月期から2020年3月期にかけて進めてきた構造改革も起因している。
久世 一番大きいのは、とにかくリピーターを大切にしようという施策を進めてきたことだと思います。お客様が購入されるような看板商品、定番商品を磨き込んでいくというような地道な作業をずっとやってきたところが成果に繋がっている。今、お客様に聞いても、「久世福商店」のイメージは、「とにかく何食べても、おいしいですよね」と。根強いファンを作ることができたのではないでしょうか。実際この4年間でお客様の平均購入点数が0.5点上がっています。ブランドに対する信頼度、ロイヤリティが高まったことが業績にも反映されていると思います。
――この5年間での成長率は60パーセント以上です。
久世 やはり1人1人のお客様を大切にできるブランドが、結果的には成長に繋がっていく。商品の質的な部分を求める結果、量的な部分もちゃんと伴ってくるのが理想だと思います。
――リピーターを獲得する手段の一つとして2年ほど前よりコミュニティプログラムを進めています。
久世 アプリ会員を中心に当社の商品開発に協力をしていただける方約2500人に毎月、アンケートの調査や、面談などをさせていただいています。例えば、お客様の属性はもちろん、「どんなことを久世福商店に求められていて、今、食に対してどんなことで悩みを抱えていて、どんなことに喜びを感じているか」といった、ポスデータでは拾えないような心理的な側面や属性を集めて、リモート面談みたいなことをやらせていただいてます。
「開発ラボ」設立し新商品開発 年間約100アイテムを投入
――今扱っているアイテム数は。
久世 大体1300〜1400品目でしょうか。そのうち新商品の投入は年間で100アイテムぐらいです。
――新商品の開発に関しては、12月に「商品開発ラボ」といった専用部署も新設しました。
久世 今後、優れたアイデアで多様な製造技術を持つ他メーカーと連携して開発する「目利き開発」と、自社商品だからこそ生み出せる「食のSPAライン」の2つの軸で商品開発を加速させていく考えです。「商品開発ラボ」は、新商品の質と量を最大限に上げるため、新技術を導入した施設を社内に完成させました。お客様のニーズに対し、どう実現していくっていうのがすごく大事なので、制約条件がない中での開発体制を広げるためにもラボの重要性は高い。
ペンション経営からスタート 2013年より全国展開果たす
――創業者夫婦のペンション経営から始まって、2022年には「食のSPA」として上場を果たしました。
久世 当初はメーカーとしての位置づけでしたが販路がなかったため、なかなか軌道に乗らなかった。
――メーカーだけでは値下げ競争に巻き込まれやすい。
久世 そのため、長野県の軽井沢に直営店を作って、ジャム、ワインの他に、パスタソース、ドレッシング、紅茶、お菓子など、ワインと一緒にピクニックで召し上がれるような商品群を開発して、販売することとしました。これが今の原型になっています。
――店舗展開するメリットは、自分たちで売価とブランドをつけて、直接顧客に伝えることができる。
久世 試行錯誤しながらも、製造から販売まで一気通貫する今の「食のSPA」モデルが出来上がっていったのです。
――2013年にメインブランドとなる「久世福商店」を立ち上げます。久世それまではどちらかというと、長野県発の洋風食品を中心とする「サンクゼール」をメインに展開してきました。2013年になって他の地域にも、こだわりのメーカーがいるだろうと考えるとともに、そういったメーカーたちを束ねたブランドもできると考えたのです。そこで、「久世福商店」という和の食品販売店を立ち上げました。
――今では全国の商業施設に入ってます。
久世 「久世福商店」は直営店だけではなく100店舗以上がフランチャイズ(FC)店舗です。製造機能も、自社の工場だけではなくて、協力企業が社ぐらいあって、その他にも菓子、出汁、醤油といったサプライヤーが500社ぐらいです。
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