【ワタミ】脱・居酒屋依存を図るワタミが日本サブウェイを買収(後編)
公開日:2025.01.06
最終更新日:2025.01.06
※以下はビジネスチャンス2025年2月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
Uber効果で48カ月連続売上増
米国発のサブウェイはチョイスオーダー式となっており、自分好みにアレンジできる強みがある一方で、日本人はそうした注文方法に慣れてなく戸惑う顧客もいた。そこで現在は、タッチパネルで簡単にオーダーできるキオスク端末の導入を推進している。一方、業績は好調。Uber需要を獲得したことにより、売上は対前月比48カ月連続で伸長している。さらにワタミでは、今後競合となるコンビニ商品などと差別化を図るため、独自メニューの開発に注力するという。
オーダースタイルの変更 セルフ化対応で新規客開拓
--サブウェイはオーダー方式が独特で、パンや野菜などを自分でチョイスしていきます。これは自分好みにアレンジできる楽しさがある一方で、初心者には分かりづらく、ハードルになっている部分もありました。
渡邉 お客様は「どうしますか?」と聞かれるのがちょっと威圧感みたいなのがあって、嫌なんだろうと思います。そのため、今後はタッチパネルで全てのチョイスができるキオスク端末の導入を進めていきます。機械と向き合って「パンどれ選びますか?」「野菜多めにしますか?」って、自分のペースでオーダーできる仕組みを確立します。
--そのキオスク端末の導入はどの程度進んでいるのですか。
渡邉 現状は2割です。このキオスク端末を全店に導入することが、今回最大のテーマですね。それと実は、全体の店の半分くらいが古いんです。これに関しては本国からもブランドの毀損を心配されていて、店を綺麗にしてくれと、年間一定数の店舗改装も条件として組み込まれました。
--現在のオーナーは個人が多いと聞きます。そうなると、店舗改装において資金的な問題があるのでは。
渡邉 現在、180店舗を展開していてオーナー数は90人。古い店舗のオーナーさんは20〜30年運営をしていますから、銀行融資の際の信用はあると思います。仮に、銀行からお金を借りられないなら、我々本部がお金をお貸ししましょうと。その代わり「店を綺麗にしてキオスク端末を入れてくださいね」という形に多分なってくると思います。
--20〜30年運営を続けていれば、年齢もそれなりに上がってきます。代替わりしている店舗もあるのでしょうか。
渡邉 それも大きな問題ですね。本部の方針としては、引退される方の店舗は引き取って直営にできます。買い取りますというメッセージを出しています。実際には、古い店舗は儲かるんですよ。家賃は昔からのままだし、減価償却も終わっていますからね。
作りたてがポリシー 小売との差別化
--コロナ以降、対前年比売上が上がっており、既存店売上が対前月比でカ月連続して伸びていると聞きました。その要因は。
渡邉 最近、古い店でも売れるんですよ。なぜかというと、デリバリー比率の高い店舗は売上の3〜4割がUberなんです。今、サブウェイが好調なのは、Uberがあるからなんです。これは大きいです。現在の平均月商は580万円となり、600万円に迫る勢いです。今、皆さん儲かり始めたところなので今後はオーナーさんを説得し、順次店舗改装を進めていきたいと思います。
--現在の販売チャネルは店頭とUberということですが、今後はスーパーなどへの卸も検討されているのでしょうか。
渡邉 それは考えていません。私たちが大切にしているのは、作りたてのサンドイッチです。そのため、作りたてが提供できないスーパーなどでの販売は考えておらず、あくまで店頭で、クオリティの高い商品の販売にこだわりたいと思います。
--サブウェイはアメリカ発のブランドですが、今後は本国と全く同じ商品とスタイルを貫くのか、日本人向けにローカライズをするのか、どういった方針を取るのでしょうか。本社との契約の問題もあるかと思いますが。
渡邉 あまりそれは縛られてないんですよ。TGIフライデーズの場合は、新商品を作った際に本部の人が試食をするなど、ローカライズする際には一定の審査がありました。しかし、サブウェイの場合は報告こそしますが、そこまではやりません。当然、衛生基準など根本的なルールはありますが、もっと柔軟です。私たちもそれを知って契約しており、これからは新しい商品をどんどん作ろうと思っています。
--サンドイッチ業態はファストフードでは競合ブランドが少ないですが、コンビニでは定番商品として販売されています。
渡邉 サブウェイも利用動機はコンビニと同じようなものだと思います。だけど、そこでコンビニと違う、パンも焼きたてで作りたての本当に美味しいものを提供できるかが勝負だと思います。コンビニと同じような商品を出しても意味がない。サブウェイしか出せないものしか出してはダメだということで、恐らく半年後にはメニュー構成が様変わりすると思います。
グループ売上は1兆円目指す
サブウェイ事業の開始によって、ワタミの事業ポートフォリオは大きく変わる。外食事業における店舗数は、以前は居酒屋が89%と大半を占めていたのに対し、サブウェイが加わったことで44%まで下がる。一方、同社は中長期で1兆円企業を目指し、国内・海外それぞれで5000億円規模を目標としている。そして今後、国内事業の要となってくるのがサブウェイだ。〝居酒屋のワタミ〞から〝サブウェイのワタミ〞へと舵を切る。
2048年に1兆円企業へTO業態やFF業態に注力
--会社全体のお話を伺いますが、サブウェイ事業を始めたことで、店舗単位でのポートフォリオがコロナ以前と現在で大きく変化しています。今後は居酒屋中心の経営から、ファストフードのサブウェイに、さらには他の外食事業にも注力されていくわけですか。
渡邉 地域で一番店のワタミの居酒屋は守りつつ、他の外食事業を積極展開していきます。サブウェイもそうですが、今チャレンジしている業態としてテイクアウト寿司店があります。現在3店舗を展開しており、10月にオープンした銀政矢口渡店(23坪)も非常に好調です。オープン景気が落ち着いても月商600万円ほどで定着する見立てです。これはサブウェイに匹敵するROIですから、我々にとって大きな武器を見つけたと思います。
そのため今後は居酒屋を守りつつも、サブウェイとテイクアウト寿司店の2業態により、グループ店舗数を一気に伸ばしていく構想です。
--御社は中長期に1兆円企業とすることを掲げていますが、いつ頃から構想されていたのですか。
渡邉 私が国会議員から戻ってきてすぐですから5年くらい前ですね。ワタミモデルを世界中に届けることが、当初からの夢ですから。
--1兆円の内訳は。
渡邉 まず、国内外食事業が3000億円で、そのうち2000億円がサブウェイ、残りの1000億円が居酒屋やテイクアウト寿司店など他の外食業態です。そして、宅食事業が2000億円。これら5000億円が国内売上です。
一方、海外売上は国内同様の5000億円を見込んでいます。アジアで2000億円、アメリカで3000億円としています。現在、マカオに出店しているワタミは年商6億円となっており、今後のアジアの成長可能性を考えると、2000億円は十分に実現できると思います。また、アメリカも今度出店するヒューストンの和牛店は想定年商が7〜8億円。そうなると、400店舗を展開すれば3000億円に到達できます。このように、海外売上は現実的なものとなってきました。
そうなると、一番の問題となるのが国内売上です。これを解決するために、サブウェイの展開を決めたのです。
--目標としているサブウェイ3000店舗達成は20年後としたら、会長もそのときは85歳。
渡邉 そうですね(笑)。そこを目指していきます。そのためには、まず10年で1000店舗をやる。これが達成できれば、3000店舗は行けると思います。
【ワタミ】脱・居酒屋依存を図るワタミが日本サブウェイを買収(前編)
【ワタミ】脱・居酒屋依存を図るワタミが日本サブウェイを買収(中編)
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