
【ユーミーマンション】高品質・低家賃の鉄筋コンクリート造マンション
公開日:2025.02.26
最終更新日:2025.03.07
※以下はビジネスチャンス2025年4月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
「入居者第一主義」を貫き全国に7400棟を展開
ユーミーコーポレーションは、鹿児島県を拠点に全国でユーミーマンション事業をFC展開している。ユーミーマンションとは、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションブランドだ。先代の弓場静昭氏が同マンション事業を立ち上げ、展開をスタートしてから45年。昨年3月末時点で全国で7400棟・9万5000世帯を供給した。鉄筋コンクリート造の賃貸マンションをFC展開する企業で同社クラスの加盟店規模を持つチェーンはなく、唯一無二のブランドといえる。同社の弓場昭大社長に、ユーミーマンションの歴史を振り返ってもらった。

ユーミーマンション(ユーミーコーポレーション:鹿児島市伊敷) 弓場昭大社長(54)
Profile ゆみば・あきひろ
1971年2月10日生まれの54歳。鹿児島市出身、都城高専3年修了。91年4月に弓場建設(株)に入社し、主任、係長から専務に至るまで各役職を歴任。賃貸マンション事業のノウハウやFC加盟社への経営支援などの経験を生かし、2000年4月にユーミーマンショングループのシンクタンクである(株)ユーミー未来研究所(当時)を設立。以来、ブランド価値を高める活動にも注力する。12年4月、会社創立50周年を機に弓場建設(株)の社長に就任。17年11月にユーミーコーポレーション(株)に社名変更し、現任。趣味はゴルフとダーツ。
賃貸管理業も展開、入居率は98%を維持
ユーミーコーポレーションが掲げる「YOU&ME」の理念は、先代の弓場静昭氏が提唱したもので、「まずあなた、そしてわたし」に基づく。この理念の浸透と静昭氏の人柄があって、FCが成り立っているという。現在のFC加盟企業数は66社で、平均年間売上は3億円。同社は現在、加盟開発を積極的には行っておらず、既存FCの平均売上を上げることに注力しているという。
鹿児島で1960年に創業 マンション事業展開から45年
--御社が展開する「ユーミーマンション」は、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションブランドです。マンションのFC展開自体、あまり聞いたことがありません。
弓場 当社は、私の祖父である弓場静雄が1960年に鹿児島で創業した建設会社です。先代である私の父、弓場静昭が1980年にユーミーマンション事業を立ち上げ、1986年からFC展開を始めました。同マンションは、4戸×3階が主規格の鉄筋コンクリート造のマンションです。
徹底したコストダウンで、高品質なのにリーズナブルな家賃であることが特徴です。また、当社では不動産事業も展開しており、同マンションを中心とした賃貸物件の仲介・管理業務を行っています。入居が決まっている状態で引き渡すことにこだわっており、入居率は98%(24年3月末時点)を維持しています。ユーミーマンションの展開から45年が経ち、日本全国で7400棟・9万5000世帯に広がっています。
--現在のFC加盟企業数は。
弓場 20年以上前に最大85社の加盟企業がいましたが、現在は66社で都道府県に展開している状況です。近年は加盟募集を積極的には行っていません。加盟開発専属の部隊はおらず、紹介での加盟を一本釣りするような形で、この5年は毎年1社ずつ増えている程度です。
--なぜ加盟開発を積極的に行っていないのでしょうか。
弓場 当社の事業は、建築、不動産、FCの三本柱で、FCの売上は全体の16%。加盟企業の全国平均年間売上は3億円です。FCの伸びしろはまだまだあると考えています。なぜなら直営である鹿児島、熊本の年間売上は30億円、栃木でも20億円。また、加盟企業の中で一番売上を上げている宮崎の企業は50億円です。
既存加盟企業の平均売上を4億円、5億円と増やすことは、無理なことではまったくありません。直営売上や新規のFCを増やすよりは、既存FCを伸ばす方がずっと効率的です。そのため、既存加盟企業の売上を上げることに注力したいと考えています。
加盟企業数に大きな伸びはありませんが、減ることもなく安定しています。第1号加盟企業の丸山工務所(神奈川県藤沢市)は、加盟して間もなく39年。私の講話に関係会社の方たちを連れて、いまだに参加してくれています。これは父が構築した人間関係と理念のおかげでしょうね。

建築FC本部として最多の66社の加盟店を有する
「YOU&ME」理念を提唱 理念と人間関係で繋がるFC
--御社の理念とは。
弓場 当社が掲げる理念は「まずあなた、そしてわたし」という「YOU&ME」の理念。ユーミーマンションの「ユーミー」は「YOU&ME」が由来です。
「あなたが利益を得て幸せになり、その後に私たちがおすそ分けをもらって幸せになる」という考え方です。当社にとってのあなたとは、施主であるオーナー。そしてそのオーナーのあなたとは、入居者のこと。つまり入居者が住みたいと思うマンションでなければ、オーナーの幸せにならないのです。
ですから父は、「入居者第一主義」「低家賃宣言」を掲げました。それが入居率を100%にする近道だと考え、「YOU&ME」の理念を提唱し続けました。
一方で、年前に父が突然亡くなった時は、「今後どうなってしまうんだろう」という不安が募りました。しかしその時も、加盟企業の皆さんが「静昭さんにもらった恩を返すぞ」と支えてくれたのです。泣きそうになるくらいにありがたいことでした。商品より、理念や人間関係で繋がっていることを実感しました。
--先代のお人柄がうかがえます。
弓場 正直、父に経営者として数字を管理する能力はまったくありませんでした(笑)。何度も倒産危機に遭ってきました。それでも人間力があり、周りから助けてもらえたため、奇跡的に何度も救われてきました。多額の借金がありましたが、それも返済できて、30年ほど前から安定しています。おかげさまで私が経営者になってから、大きな危機を経験していません。
日々経営者として、会社が成り立っているのは地域のおかげでしかないと感じています。その地域に返せるものがあるなら返したいと思い、地域スポーツの支援をするようになりました。鹿児島のプロスポーツは大なり小なりすべてスポンサードしていますし、地域の野球クラブチームでは社員が指導者をするなど、サポートをしています。
「請け負け」から「請け勝ち」を目指して
ユーミーマンションは、静昭氏が招いた倒産危機を打破するために立ち上がった事業だ。静昭氏は「請負」のことを「請け負け」だと言い、請負からの脱却を目指したという。自分たちの力量で施主を生み出せる魅力的なマンションをつくるため、徹底したコストダウンを実行。業者間の兄弟思想を根付かせ、規格化を進め、同マンションの着工を実現したという。弓場社長は静昭氏が立ち上げたこの事業の継続に重きを置いており、10年後の世代交代を見据え、4代目の育成に取り掛かるという。
3000万円の大赤字で倒産危機 木造アパートと請負からの脱却
--たくさんの危機を乗り越えてこられたのですね。
弓場 父は、倒産危機を打破するためユーミーマンションを立ち上げました。1977年9月、鹿児島県の沖永良部島に巨大台風が直撃し、住家損壊5119棟、住家浸水3207棟という甚大な被害を及ぼしました。当時、古家の再生ばかりを行っていた父は、そのニュースを見て「出番がきた」と島に向かい、やみくもに棟を受注。しかし、島独特の慣習や文化を無視した営業が反感を買い、現地の職人に依頼を断られ、現地で資材の調達もできなくなってしまったのです。
結果、資材費や人件費がかさみ、1棟あたり100万円の赤字。30棟分で3000万円の大赤字は、会社の根本を揺るがしました。そのため一度は倒産を決意したそうです。しかし、その渦中でも毎年恒例行事である社員と取引先の家族総出で行われる運動会をやむを得ず開催したのですが、その時に「ここにいる人たちを路頭に迷わせてはいけない」と気持ちが奮い立ったそうです。そして、取り組んだものが鉄筋コンクリート造のユーミーマンションでした。
--なぜ鉄筋コンクリート造のマンションにされたのでしょうか。
弓場 当時、当社に回ってくる仕事は木造のおんぼろアパートばかりでした。選択肢がなかったため、それでなんとか食いつないでいる状況でしたが、オーナーや入居者からは雨漏りや騒音で苦情の嵐。協力会社も仕事の内容に不満を爆発させていました。
そのため、クレームを無くし、職人がプライドを持って仕事に臨めるように︑鉄筋コンクリート造のマンションをつくろうと考えたのです。
また父は、現状を打開するため「請負」の立場からの脱却を目指しました。父はよく「請負」のことを「請け負け」と読むと言っていました。受け身でいる以上、相手に命を握られているのと同じ。そのため、マンションをまったく建てる気がない人を建てる気にさせるという、逆転の発想に至りました。それができれば、施主を自分たちの力量で増やすことが可能です。自分たちで主導権を持って仕事を進めて「請け勝ち」になることを目標にしたのです。
協力会社を集めて勉強会 兄弟思想を根付かせる
--多額の費用が掛かる鉄筋コンクリート造のマンションを建てる気にさせるというのは、なかなか難しかったのではないでしょうか。
弓場 そこで父は、コストに対する考え方を大きく転換しました。受注型の案件のコストは、基本的に積み上げ方式で決まっていきます。材料費、人件費がいくらで、利益がこれだけ欲しいから工事金額が決まるという具合です。これではこちらの金額を提示するだけで、建てる気がない人の気持ちを動かすことはできません。
そこで、その地域の家賃相場を鑑み、施主に利益がいくら残るか考え、建築単価を決める。そしてそれに合わせて建物をつくる。父は先に建設費を決めて、その予算内で建物をつくろうと考えたのです。
そのためにはあらゆる無駄を省くことが必要でした。それから父の徹底的なコストダウンへの挑戦が始まります。寝ても覚めてもコストダウンの方法を考える執念は、凄まじいものがありました。
--どのようにコストダウンを実践してきたのですか。
弓場 まずは協力会社を集めて勉強会を始めました。そして、「みんなが兄弟だったら」という思想を伝えていきました。業者同士が兄弟であれば、お互いの作業を手伝うようになり、待機時間をなくすことで大きなコストダウンに繋がります。また父は、風呂場や建物の外側の寸法などを規格化することを思いつきました。規格化することで、タイルやベニヤ板などの資材の無駄がなくなり、作業も楽にすることができます。「請勝」「兄弟思想」「規格化」。この3つを連動させれば、唯一無二のマンションがつくれると父は信念を貫き、一棟目の着工になんとか漕ぎ着けたのです。
しかしその後も苦労は続きます。着工をすると、周辺地域のほかの地主が「入居者が入るわけがない」と噂を始めたのです。父はすぐに入居者を集めようと募集を開始。すると瞬く間に満室になりました。父は、それはそれは大きな「満室御礼」の垂れ幕を建設現場に張り出しました。
それを見た周りの地主たちから「自分たちも建てたい」と、声が上がったのです。そして父はこの事業を力の限り推し進め、地域にユーミーマンションが立ち並び、街づくりにまで発展していきました。

苦労の末に生まれたユーミーマンション(写真は1984年竣工の物件)
全国展開目指し、ブランドの永続を模索

本社周辺は同社のマンションで埋め尽くされている
発展より継続に重き 4代目育成を目指す
--今後のユーミーマンションの展開は。
弓場 やはりFC事業を伸ばすことが、当社の成長に繋がりやすいと考えています。しかし先ほども話した通り、FCを増やすことにあまり注力していません。
ただ、47都道府県同時展開を目指したいとは考えています。現在都道府県への展開で、過去を振り返っても都道府県への展開が最大。まだ本当の意味での全国制覇を成し遂げていないのです。FCの創始者である父の夢でもあったので、もう一度全国制覇を目指そうと働きかけているところです。
その一方で、最近は会社を大きく発展させようというよりも、継続させることに重きを置くようになりました。
--何か心境の変化があったのでしょうか。
弓場 やはりコロナが大きく影響しました。あまり身動きが取れない状態になった時に、発展よりもいかに会社を長く継続させるかに思考を巡らせるようになったのです。自分がいない状況でどうしたら仕事を回していけるか、今はそちらにモチベーションが向かっています。
私は現在歳で、息子がいます。ただまだ幼く、経営者になるには長い時間が掛かります。そもそも後継者として育てるつもりもありません。ですから4代目に繋げることさえ、難しいと感じています。
--4代目はどうやって決めるつもりなのですか。
弓場 ちょうど先日、幹部全員を全国から鹿児島に集めました。その時の講話で、会社の発展ではなく、継続にモチベーションがあることをはっきりと伝えました。そして10年後には現職を退くことを宣言。自分と同世代より上の幹部たちには、後継者を育てるために協力してほしいと助力を求めました。
私よりも一回り以上下のメンバーには、この中に後継者がいるかもしれない。自分が後継者になるのか、後継者を支えるのか、10年後にどうあるべきか、イメージしながら仕事をしてほしいと伝えました。
今後は当社が永続していくためにも、まずは後継者を育てることに注力していきたいと思っています。

加盟店とともにチェーンの次世代を考える。写真は「第36回ユーミーマンションFC全国大会in埼玉」
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